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ゲームで少女は夢を見る  作者: ねぎとろ
1章 『再会できない姉妹』
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四十七話 「変化した首都」

 私はいつ寝たのだろうか。睡眠してから数時間は経ったであろう時に、私は目が覚めた。いや、正確には意識だけ覚めた。周りは未だ真っ暗。でも、そんな中一つハッキリしていることがある。それは、これが私の夢の中だということ。不思議な感覚だが、これが夢ということがハッキリと分かる。


「………………………」

 何かを喋ろうとしてもやはり声は出ない。これは、夢の中。もしくは、意識だけだと喋れないということだろうか。


「レイディス!どこに行ったの!?ねぇ!」

 それは突然だった。真っ暗だった場面が切り替わり、火の海の中心にいる私の映像になった。そして、私は叫んでいる。言葉から察するに、レイディスが居なくなったんだろう。


「あ、レイディス!やっと見つけた!」


 でもどうしてだろう。ゲームの中で今まで夢を見たことはない。しかも、ここまで現実と重なる夢を見るのは、花奈の時以来だ。現に今レイディスは居ない。花奈の時は、予知夢だったが、今はどうだろうか。火の海なんてものは今の私の周りにはないはず。ならば、これはただの夢?


「どうしてそう思うの?」


 突然だった。今までレイディスを捜していた私が急に立ち止まり、一言だけ発した。それは、明確に私に対して言ったわけではないのかもしれないし、私からは見えないだけで、誰かに言っていたのかもしれない。でも、この言葉はどうにも私に言っているように思えてしまう。


 そして、その言葉の後、私は火の海に飛び込み、走ってどこかに行ってしまった。それと同時に、私の夢は覚め、私という意識も本格的に目が覚めた。


 ┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈


「ふぁ〜……なんか、今回も意味分からない夢だったなぁ……」

 まだ空は暗い。時間的には、深夜三時頃だろう。起きるには、早すぎる時間だ。


「でもなんで、レイディスが出てきたんだろ」

 夢というのは、普通忘れてしまうものだが、やはり、私は鮮明に覚えている。

 その後、夢について考えつつも、あくびをしながら周りを見渡すと、もちろん、レイディスは居ない。そして、一つの明るい光だけが私の目に入った。


「何あれ……」

 目を凝らし、良く見ると、それは、首都だった。既に、私達は首都の近くに居たのだ。だが、様子がおかしい。普通ならば、首都はあんなに光らないはずだ。


「とりあえず、近づいてみようかな……」

 好奇心が上回り、私は近づいてみることにした。少しずつ近づき、徐々に明らかになっていく謎の光。


「嘘でしょ?」

 光の正体、それは、炎だった。激しい炎に包まれた、首都。それを今、近くで見ている。炎の海と化している首都の近くには、死体が沢山あった。かろうじで残っている身体の形から、それは、竜族種と分かり、その他にも、エルフらしき者と、普通の人間、それに加え、魔物の死体まである。その中でも、多いのは竜族種だ。


「やっぱり、あの数値の減り方。竜族種だったんだ……」

 炎に包まれ、ほぼ見えないこともあってか、不思議と恐怖や気持ち悪さは感じなかった。


「とりあえず、中に入ろう、かな?」

 私の第一目標は、桜たちに会うということだ。それならば、首都に入るべきだろう。ただ、この炎の海に入るのは少しばかり怖い。っと、そんな時、私を一匹の魔物が襲った。


「ガルルルルルッ」

 今にも死にかけの魔物。あちこちが炎に焼け、少し叩けば軽く死んでしまうだろう。


「ごめんね。私も死ぬ訳にはいかないの……」

 謝りながら、覚えたての魔法。ファイヤーボールを放ち、魔物を消し去る。幸いにも、炎によって灰と化したので、死ぬ時の声が聞こえなかったことだ。


「さて、夢の通りだと、レイディスはこの中に居る。やっぱり、行くしかないよね!」

 私が覚悟を決めた時、何処からか、レベルアップの音がした。今までも魔物を倒してきたが、上がらなかったレベルだ。


「うーん。やっぱり、レベルアップはあるんだなぁ……って、そんなことより早く行かなきゃ!」

 レベルアップはさておき、完全に炎に包まれる前に首都に入らなければならない。正直、私も死にたくはないし。


 ┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈


 炎に包まれる前は、厳重だった、門を潜り、首都へと入る。辺りを見渡したが、そこは言うなれば、地獄絵図だった。外よりも酷い、死体の数々。家は木組みのせいか、炎がどんどん燃え移り、風に乗って、熱風が私を包む。


「熱いなぁ……」

 死体に免疫はないはずなのに、先程から平気だ。これは、プレイヤーとしての能力なのだろうか。ただ、今は有難い。これのお陰で、平静を保っていられるし、首都を探索できる。感謝でしかなかった。


「あれは、人?」

 炎の中、走っている何かが居た。そして、近くに寄れば、それが人だということも分かる。


「待って、なんであの人、兵士さんを殺してるの?」

 遠目からだと少し分かりづらいが、明らかに兵士を殺しているのがわかる。それも、普通の人間が、いや、あれは私と同じプレイヤーだ。


「まさか、アイテムバッグを使うなんて……」

 私がプレイヤーと思った理由。それは、アイテムバッグだ。兵士を殺す時、一瞬だが、アイテムバッグから武器を取り出していた。そして、私は反射的に生存プレイヤーの人数を見た。見なきゃいけない気がしたのだ。


 生存人数:13000


 明らかな数字の減りだった。そして、この減り方に関連するのは、首都だということだ。私が見てきた死体の数々。あれは、きっとプレイヤーなのだろう。そして、あのプレイヤーが兵士を殺しているということは、反乱だろう。


「ちょっ、なんであの人こっち見てるの……」

 私がもう一度視線をプレイヤーに移した時、そのプレイヤーは立ち止まって、私を見ていた。そして、武器を持ちながら、ジリジリと近付いてきている。

「やばい、逃げなきゃ」


 プレイヤーとはまだ距離がある。逃げるには充分だ。私は逃げた。ひたすらに走り、相当遠くへと行っただろう。既に、プレイヤーは追ってきていなかった。

「助かったぁ……」


「お前、何故ここに居るんだ?」


 後ろから声がした。それも、聞き覚えのある声。私が探していた人の一人。今まで、居なくなっていた、レイディスだ。

「えっ、レイディスもなんでここに居るの?」


 この瞬間、私は夢と違うことに気付いてしまった。夢では、レイディスを探すために叫んだりしているが、私は叫んでいないし、普通にレイディスと出会えている。


「俺は……探し物だ」


「えっ、どうゆうこと?」


「そうだ、お前にはこれを渡しておこう。もう二度と会えないだろうしな」


「ちょっと待ってよ!ねぇ、レイディス!」


 明らかに以前とは態度が違うレイディスは、自分の指から一つの指輪を外し、私にくれた。何の為に指輪をくれたのか分からないが、今居なくなられたら、夢と同じになる気がしたのだ。そう、夢の中の私はきっと、一回レイディスと会っている。そして、ここでレイディスと別れ、捜していたのだろう。


「お前は、もう帰れ。ここにはもう居られない。何処か安全な所に行くんだ」


 私が付いてきているのを知り、振り向きもせずに、言葉を投げかけてきた。もちろん、私は帰らない。帰るなら、レイディスも連れていく。

「そうか。お前はやはり付いてくるか。今帰れば、まだ間に合う。早く帰るんだ。俺と居たら、死ぬかもしれないんだぞ?」


「ならレイディスも帰るの!!」


「俺はダメだ。まだ目的を果たしていない」


「じゃあ、私も手伝う!!」


「勝手にしろ……」


 再び歩き出したレイディスは首都の真ん中にある、城へと向かっていた。そんな中、私は、夢と同じ結末にしないように、レイディスの後ろを歩くことしか出来なかった。

次回は多分、三日後です!まだ分かりませんが……

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