四十話 「現実の終わり」
「ふぅ。そろそろ寝るかなぁ」
話しながらご飯食べ終わり、すっかり私の中で昼間に見た怖い話は消えていた。そして、時刻は日を跨いで1時。
「うん!寝よ寝よ!」
花奈も賛成してくれたので、二人で歯磨きをしに行く。桜はもちろんのことながら、既に寝てしまっているので今この場には二人しか居ない。
「ねぇ、どっちが布団で寝る? それとも、二人でベットで寝る?」
歯磨きも終わり、花奈に訊ねる。私としては、二人でベッドで寝たい。正直、後は寝ることしかやることは無いけど、近くに花奈が居た方がなんか安心出来る。
「うーん。私としては、いつもベットだから、布団で寝たい気もするなぁ」
ふむ。こうなってくると、選択肢は一つだけだな。うん。私はどうしても二人で寝たいし。
「よし!じゃあ二人で布団で寝よう!」
私の部屋は割と広めで、使えさえどかせば布団を二つ用意出来る。これで、二人一緒に布団で寝ることが出来るわけだ。
「ねぇ、もしもさ、ゲームの世界に閉じ込められたらどうする?」
布団に入り、花奈に話し掛けようと思った所、花奈から話しかけられた。しかも、結構考えさせられる話題を。
少し考えた後、思いついたことを言うことにした。
「うーん。そうだね。もし、ゲームの世界に閉じ込められたら、私は楽しむかなぁ。例え、その世界での死が現実の死だとしても、私はゲームが好きだから、ゲームの世界で死ぬなら本望だしね!」
後は、花奈や、桜。エミリや、ユリナさん。ライカさんも居れば完璧だね。
「そう。なら良かった。それじゃ、私寝るね。おやすみ」
なんだったのだろう。なぜ、花奈は今この時にその話題を振ったのだろうか。そして、今は話す気もなく、普通に寝息が聞こえるくらいの距離で寝てしまったなので、しょうがなく、私も寝ることにした。明日は、年越しの日。三十一日だ。もちろん、三人でゲームをする。新しいイベントの為に……そして、考えている最中に私の意識派落ちた。
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「ねぇ、雪。起きてよ。やだよ!雪と離れるなんて嫌だ!!早く起きて!動いて!お願いだよ!」
これは、夢なのか? 私は私が倒れているのを見ている。それも、何かに引き裂かれたのか、腹の辺りから血が噴出している。さらには、私の血を必死に止めようとしているエミリと泣き喚いている花奈と桜が見える。これは、どうやらゲームの世界みたいだ。
だが、私の夢は非情にもどんどん酷くなっていく。場面が切り替わる度に誰か一人が殺されて、叫んでいる。それも、私を守って死んでいるんだ。
「もうやめて!私なんかのために死なないで!」
夢の中で私が叫んだところで、倒れている私には変化もなく、やはり聞こえないのか、今にも死にそうな花奈からの返答は無かった。
そして、最後には皆死んでしまった。そんな中、まだ息のある私はギリギリで立ち上がり死屍累々としている周辺を見て膝から崩れ落ちる。
「早く!こんな夢覚めて!嫌だ!!嫌だ!!」
私の声に反応したのか、夢は終わった。だが、最後に見えたのは、私に近付く黒い影だった。
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「雪!おきて!!」
今度は本当に耳に聴こえる花奈の声。
「花奈……」
私は目覚め、顔を拭う。やっぱりと言うべきだろう。涙が頬を伝っていたのだ。
「雪、どうしたの? 急に寝たと思ったら、叫び出すし、いつの間にか泣いてるし、怖い夢でも見たの?」
花奈の言う通りだ。あれはたたの夢。そう。ただの夢だ。怖くなんてない。なのになんでだろう。花奈を見ると、さっきの夢が夢じゃないみたいに思えてしまう。
「雪。おいで。私が抱きしめてあげる」
言われるがままに花奈の胸に体を預けた。花奈に抱きしめられるのは凄く安心出来た。そのお陰か、いつの間にか夢を忘れて、違う夢を見ていた。
「雪の事、今度こそ私が守るからね」
花奈の言葉は雪の耳には届かなかった。そのまま、花奈は雪のことを撫でながら眠りにつく。しっかりと抱きしめ、母が子を守るかのように。
その頃雪は既に夢の中だった。
今度の夢はみんなで仲良くし遊んでいる夢だ。だが、やはりと言うべきか、私の夢は大体ゲームの夢なのだ。しかも、今私がやっているゲーム。これは、何かの暗示なのだろうか。いや、気のせいだろ。ただの夢だ。私はそう思いながら、夢を満喫することにした。
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「二人共!早く起きる!もうお昼だよ!?」
聞き覚えのある妹の声で私は目が覚めた。そして、既に私の中で最初の夢は思い出せず、二回目に見た楽しい夢だけがかろうじて思い出せる程度だった。
「ん、桜。おはよう。ほら、花奈も起きて」
いつの間にか寝転んでいたのだろう。隣で寝ていた花奈をつつき、無理やり起こす。
「ん? お姉ちゃん、泣いたの? なんか目が腫れてない?」
あ、そうか。私、昨日泣いたんだっけ。でも、なんで夢で泣いたんだ?
「うーん。思い出せない……」
私が唸っていると、桜は、興味が失せたのか、それ以上は聞いてこなかった。
「ま、いいや。ご飯食べるから、早く降りてきてね!」
そして、この言葉を言い残しリビングへと降りていった。
「おはよう。雪。」
この様子を見るに、花奈も昨日の夜の出来事は覚えていないだろう。とゆうか、覚えてたら恥ずかしい。私が泣きながら花奈に抱きしめられるとか、まじで恥ずかしすぎる。
「よし!起きた!下行ってご飯食べよ!!」
寝起きの花奈を引っ張り、下に連れていく。なんか言ってた気がするが、無しだ無視。それよりも、ご飯!
「やっと降りてきた……」
体感としてはそんなに遅くなかった気がするが、どうやら、さくらの態度を見るに、割と時間が掛かっていたらしい。
「んじゃ、いっただきまーす!」
先程も食べようと思ったら、桜に顔を洗ってこいと怒られてしまったので、これが二回目のいただきますだ。
普通に皆でご飯を食べ、これから何をするか話し合った。その結果、とりあえず年越しイベントの為にゲームをログインするという事になった。
「うーん。ゲームするの久々な気がしなくもないなぁ……」
花奈も家から持ってきた機械を頭にはめ、妹も含め、私の部屋でログインする。
そして、ログインが完了した時、私たちは、いや、世界中の今日このゲームにログインした人は、この地球上から消えてしまった。もちろんのことながら、この事実をまだ私達は知らないままだ。
次回から一応1章になります!




