三十七話 「ラストバトル!」
「雪! 少しの間でも拘束頼む!!」
相手に喧嘩売っときながら、私の攻撃魔法は効かない。やはり、これはレベル差なのだろう。だが、一つだけ。私のダークバインドは何故か効く。それも、効果時間はほんとに一秒とかだが、それでも一瞬動きを止めれるだけマシだ。
「じゃあ、私は本気の魔法を撃つかな!」
私の魔法に合わせ、ユリナさんも準備する。そして、いつの間にか居ない妹とエミリの二人。多分、何かを企んでいると思うのだが、今は自分の魔法に集中しよう。
「じゃあ、私の方は準備万端だし、いくよ!」
リビングアーマーは、先ほどのユリナさんの【フレイムインパクト】が効いたのか、まだ悶えている。これはチャンスだ。今なら、相手は実体化している。霧の状態でないならば、拘束の力も少しだけ強くなるだろう。
「少しでも長く効いて!【ダークバインド!】」
相手の周囲に鎖が現れ、見事に一瞬相手に絡みつく。それは、私が想像していた時より長く、何十秒とまではいかないが、五秒くらい抑えてくれただろう。
「おっけー!じゃ、私も!【エレメンタルバースト!】」
ユリナさんの魔法は見た事すらない魔法だった。まるで、オーロラのように輝いていた。それは、私の鎖が解けると同時に相手の体に直撃し、爆発した。私とは威力の差が目に見えるように分かってしまい、少しショックだったのは内緒だ。
「よし。私も今の間に近付いて殺すかな!」
リビングアーマーは壁にぶつかり、倒れている。そして、ユリナさんも全魔力を使った影響からか、今にも倒れそうだった。だが、ユリナさんの攻撃は見事の一言。リビングアーマーは、一向に起き上がる気配がない。
「エミリ!サクラ!今だ!抑えろ!」
何処に潜んでいた、突如現れた二人がリビングアーマーを動けないように拘束する。やはり、この二人もダメージ自体は与えれなかったのだろう。拘束するのも辛そうだ。
「うんうん。いい感じ。じゃ、私がとどめやるからね!攻撃の瞬間に二人は離れるんだよ? じゃないと、巻き込んで一緒に殺しちゃうかもだから。」
サラッと、怖いことを言っている気がする。まぁ、現在ユリナさんを支えている私には関係ない事だが、見てるこっちもヒヤヒヤしてくるセリフだ。
「『は、はい!』」
二人はビビりながらも返事をし、必死に力を込め、抑え込む。そして、ライカさんは近付きながら、アイテムバックをいじる。どこに隠してあったのか、禍々しい大剣を取り出し、指先を自ら斬った。
「あれ? ライカさん……何してるんだ?」
遠くから見てる私から見ても、自分を傷つけてるようにしか見えない。これじゃあ、リビングアーマーの拘束が解けて動き出してしまう。
「ふぅ。やっぱりこれは疲れるなぁ」
私はライカさんの剣を見て、なぜ自分の指を斬っていたの分かった。それは、剣の能力だろう。禍々しい大剣は明らかに血を吸っている。そして、その武器がどんどん真紅に染まっていき、まるで、生きているかのように脈打ち始めた。
「うわぁ。ライカ、あれ使ったんだ。ってか、こんな時だけどさ、雪ちゃんも思うだろうけど、あれはキモいよね?」
倒れそうになりつつも、しっかりとユリナさんは見ていた。私たちの死闘の結末を。
「はい。正直、あれはキモイです……」
こんなバトル中に言うことではないが、少しキモイ。なんか、人間の腕みたいなんだもん。
私たちが話してる中、遂にリビングアーマーを抑えていた二人は吹き飛ばされ、拘束は解けてしまった。
「んじゃ、あとは、私が殺せば終わりか。ふぅ。長かったなぁ……さて!これで、終わりだ!!」
一瞬の深呼吸の後、ライカさんは大剣を投げた。振り下ろすのかと思いきや、投げた。相手も予想していなかったのか、見事に大剣は突き刺さり、あっけなく霧となり、消えてしまった。
そして、私たちの前に、勝利の文字が現れ、ドロップアイテム一覧などが表示された。
「はぁぁぁぁぁあ。なんか、疲れたぁぁぁぁぁ」
私は勝てたことに安堵したのか、すっごい長い溜め息をついてしまった。
「って、雪。溜め息長すぎでしょ」
何故か、みんなに笑われてしまい、途端に恥ずかしくなってしまった。
「全く。なんか、緊張感とかが全部抜けちゃったじゃないか。ま、勝ったからいいか。さて、お前達はこれからどうする? 私は、用事があって、年末までログインしない予定だが。」
「そんな急に現実に戻さないで下さいよ。もっと勝利の余韻とかをですね……」
「うるせえな。勝利の余韻は数秒で充分なんだよ」
「『それはないです』」
ユリナさんは声を揃えて言う私たちを見て、笑っていた。やっぱり、仲間っていいな。まさか、自分がこんなに楽しくゲームが出来るなんて二度と思わなかったけどね……
「ま、勝手に余韻でもなんでも味わってろよ。私は帰るからな」
「待ってくださいよ〜」
最後まで味わっていた私は皆より一足遅れて脱出した。まぁ、結局転移ワープは三人ずつなのだから変わらないんだが。
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転移も無事終わり、私達は帰りながら話をしていた。いつの間にか、宿屋に辿り着き、皆で宿屋にてログアウトした。どうやら、皆年末まではログインしないらしい。ただ、嬉しいのは、皆しっかりとログインしてくれる。という事だ。
「私はどうしようかなぁ……」
年末。それは、新しいイベントが開催される日。それまで、あと二日。いつの間にか、時間が結構過ぎていたらしく、冬休みも中盤に入ったところだ。まだ一度も冬休み中に遊んでいない。ここいらで、友達と遊ぼう……
「あ、友達居ないんだった……どうしよう……」
そんな時、私の携帯が密かに光った。もちろん、私は見逃さない。
「うーん。花奈からのメールかぁ……そういえば、花奈ってどこに住んでるんだろ?」
それは、僅かな疑問だったためか、すぐに私の頭から消え去ってしまった。それよりも問題は、花奈からのメールだ。花奈はどうやら、私の家で遊びたいらしい。だが、私はあれ以来全然花奈と話していないため、少し家で遊ぶのにも抵抗がある。
「あれ? 追加のメール?」
先程の続きとして、もう一通私にメールが届いた。内容を要約すると、どうやら私の家にお昼頃行くから、家で待っててという事だった。
「まぁ、桜も居るし、なんとかなるかなぁ……」
花奈が家に来る事に、内心ドキドキしつつ、夜も遅かったため、今日は寝る事にした。ただ、ドキドキしていたためか、全然寝付けなかったのは言うまでもない。
むぅー。次回更新遅れたらごめんなさい……




