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ゲームで少女は夢を見る  作者: ねぎとろ
序章 『終わりの始まり』

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二十八話 「予知夢?」

ふぉっふぉっふぉっ。

 杖を相手の胸元に当て、溜めた魔力を解き放つ。が、その前に、私は飛ばされていた。いや、ほんの数秒、宙を舞っていた。

「あれ、私……今魔法を撃ったは……」

 飛ばされながら、相手の姿を見るが、私の魔法が当たった気配はない。そして、私は壁へと思いっ切り叩きつけられた。

「グハッ……」

 身体を思いっ切り打たれ、足がふらつく。立っているのすらやっとの状態だ。

 だが、まだやれる事はある。アイテムバックからブリザードウォリアーから入手した、氷剣を装備し、その特殊能力を発動させる。

「私の全魔力と、体力を込めて……お願い!」

 剣を思いっきり、振りかぶり、氷剣の能力は発動した。刺々しい氷の数々が、地面を走り、標的に向かって行く。

 だが、それも無駄だった。剣を一振り。相手はそれだけしかしていない。なのに、私の氷はすべて消え去り、辺りが少し肌寒くなっただけ。

「はぁ。やっぱ、無理だったなぁ……」

 一言呟き、私は地面に倒れる。最後に、身体を切られた感触があり、そこで私の意識は途絶えた。



「ふぅ。死に戻りってこんな感じなのか……」

 次に目を覚ました時は、ギルドの前だった。これが初の死に戻りだ。

「デスペナルティってどんな感じなんだろ……」

 自身のステータス画面を見て、確認する。私のステータスは、三割ほど減少していた。そして、私が最もショックを受けたのが、所持金減少だ。元々の半分に所持金が減り、私は1番ショックを受けた。

「一回ログアウトしよーっと」

 少し、ゲームのやる気が無くなり、ログアウトすることにした。

「あ、エミリちゃんにメッセージだけ送っとこっと」

 フレンドリストから、エミリちゃんを探し、メッセージを送る。が、その前に、私に対して、メッセージが来てることを知った。

 そのメッセージを開き、宛名を見る。


「雪見ちゃん。さっきは、先に殺られちゃってごめんね!まだログアウトしないなら、ギルドの中に来て欲しいなぁ。多分、今日の夜くらいまでなら、ギルド内に居るから、このメッセージ見たら、返事ちょうだいね!」


 ふむふむ。私は今、ギルド前。エミリちゃんは、ギルドの中。これを読み、普通の人なら、中に入るだろう。だが、私は否だ。とりあえず、ログアウトする。もちろん、返信だけしておくが。


「エミリちゃん、私も死んじゃった!ちょっと、眠いから、ログアウトして寝てくるね!また、夜ログインするから、その時よろしく!」


 ま、これでいいだろう。間違ってはいない。とりあえず寝る予定だし。うん。ログアウトしよっと。



 私は、ログアウトして、機械を頭から外す。

「はぁ。なんか悔しいなぁ」

 未だ、私は負けたことが悔しかった。あれは、私の全力だ。それを、軽々超えられ、ボロ負けした。

「次会ったら勝つしかないよね!」

 負けた悔しさよりも、もう一度戦いたいという気持ちがあった。そのためには、強くならなきゃいけない。だが、いまは、睡魔が……

「まだ、15時だし、少し寝よーっと」

 目を閉じ、すぐさま、眠ってしまった。


 眠って少し経ったくらいだろう。私は夢を見た。

 それは、花奈と私の夢だった。多分、未だに花奈の夢を見るということは、何処かで、花奈をまだ親友だと思っている証拠だろう。そのまま、夢の続きを見る。

 まず、私が眠っていたのか? 分からないが、目を覚まし、徐ろに机の上を見る。そこには、一通の手紙が置いてあった。もちろん、相手は花奈だ。


「雪へ

  話したい事がある。今のイベント中に、一番大きな山の頂上に来て

  花奈より」


 遠くから、その手紙を読んでいる、私を眺めている私。手紙の内容自体は、私にも見えた。ただ、その手紙に対しての、私の言葉が聞こえない。いや、正確には、聴き取れない。

「……な……きゃ」

 所々、モザイクが掛かったように、聴こえず、ほとんど聞き取ることは出来ない。ただ、私が花奈に会いに行くということは分かった。


 そして、場面が唐突に切り変わり、そこは、花奈と私が話しているシーンへと移り変わった。

「…………き。……ら」

 花奈の声も聴き取れない。夢だからだろうか。それとも、これから本当にこんな事が起こるからなのか、何やら、そんな気がしてならない。

「……!!」

 私は、花奈の言葉に怒り、何処かへと走って行ってしまった。取り残された、花奈の顔は、酷く悲しそうな顔をしていた。ただ、それを夢の中の私が見ることは出来ない。そして、最後に、花奈の姿が消え、私の前の光景がブラックアウトした。



「はぁはぁ。何今の夢。嫌だ。花奈が居なくなる? ダメ。そんなの嫌だ。まだ話し合ってないのに」

 夢を見て、私は泣いていた。涙を流す目の先に、私の携帯がある。それは、とても光っていて、メールが来たことを証明しているようだ。

 携帯を手に取り、誰からなのか確認する。そして、それは、驚くべき人からだった。


「花奈からだ……」

 まるで、私の夢と重なるかのように、花奈からのメールが届いた。

「嘘っ……」

 メールの内容までもが、夢とそっくり。まるで、私が未来を見ていたかのような感覚にさえ陥った。

「行かなきゃ……!」

 そうか。夢の中で、わたしは、やっぱり行かなきゃと思ったんだ。なんとなく、自分の事だからわかる。きっと、これは、夢の通りに進んじゃダメなのだろう。私の夢がそれを教えてくれた気がする。


「一番大きな山……どこだ!?」

 分からない。私にとって、このイベントは初めて。マップなんて分からない。早く行かなきゃ行けないのに……

「雪見ちゃん!こんばんは!」

 突然、後ろから、声が聞こえてきた。声の主は、エミリちゃんだろう。

「エミリちゃん!このマップで一番大きな山って分かる?」

 肩をつかみ、詳しそうなエミリちゃんに聞く。いまは、話しづらいとか気にしている場合じゃない。時間は少ない。そんな気が私はしている。

「ご、ごめん。分かんないや。で、でも!ユリナさんとかなら、分かるかも!あと1時間くらいで、またログインするはずだから……」

 1時間? そんなダメだ。遅すぎる。このままだと、花奈と話せず終わる。夢の光景から察するに、花奈は消える。多分、ゲームを辞めてしまうのだろう。そんな事になったら……一生話せず終わる気がする。

「エミリちゃん!とりあえず、私は探さなきゃいけないから!また後でね!!」

 エミリちゃんを一人取り残し、私は走り出す。こうなったら、自力で探すしかない。私は無我夢中で走っていた。

「なんだったんだろ?」

 首を傾げ、去っていく雪見を見つめるエミリは、少し経ち、ギルドの中へと、姿を消した。


「痛っ!」

 前を見ないで、走っていた私は、誰かとぶつかってしまった。

「ご、ごめんなさい!」

 瞬時に謝り、また走り出そうする。が、その時、1度だけ聴いた声が聞こえてきた。

「あれ? あの時の、女の子じゃん!急いでどうしたの? 俺で良ければ手伝うぞ?」

 それは、さっき、パーティーの誘いをしてきた、男の1人だった。

「あ、別に、何かを貰おうとか、やましい事は無いからね? あ、俺が言っても信用ないか……」

 自分で言って、自分で悲しむって……ただ、今は、誰の手でも借りたい。願いを込め、聞いてみることにした。

「あ、あの、このマップで一番大きな山って知ってますか?」

 少し、ぎこちなく、それでも、しっかりと聞く。

「あー、もしかして、『グランドパレス山』のこと? それなら、ここだよ」

 まさかの奇跡が起きた。男は、私のマップに、場所を書き込んでくれた。

「あ、ありがとうございます!」

 深々とお礼をし、最短ルートを模索する。

「いいってことよ!それより、俺の名前まだ言ってなかったよね!俺の名前は、『レギス』。また、何処かで会うかもしれないから、その時はよろしくな!」

 自分の名前だけ言い、レギスは去っていった。ちょっとだけ、カッコイイと思ったのは内緒だ。

「それよりも、行かなきゃ……!!」

 最短ルートを見つけ、私は走り出した。


 そして、グランドパレス山をモンスターを無視して、登っていき、ようやく、頂上が見えてきた。

 頂上付近にて、私は一人の少女が立っているのを見た。その少女は、誰かを待っているかのように、そして、少し悲しそうな顔をしながら頂上の木に、もたれかかっている。


 その光景は、私の夢と完全に重なっていた。そして、その先の光景すらも、私は予測できる。最悪の事態を避けるため。私は、息を呑み、決意を固めて、待っている少女の元へと歩きだした。

あー。次回は、気が向いたら、ホワイトデーの話になります。

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