二十五話 「2人だけの冒険」
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私たちがフィールドに出た時、そこは、ちょうど、吹雪が舞ったのか分からないが、昨日よりも、雪が降り積もっていた。
「ふぅー。寒さは感じないけど、寒い気がするなぁ」
隣でエミリが肩を震わせている。それにつられて、私も寒くないはずなのに、何故か震えてしまう。何故だろうか。
「で、とりあえずさ、寒さを防ぐために、とりあえず風を防げるところに行きたいな。雪見はどっか行きたいとこある?」
そんな事言われても、このマップをほとんど探索したことがないし、場所がわからない。
「あ、そんな事言われても分からないか!ごめんごめん。とりあえず、歩こっ!それで、洞窟か、建物見つけたら入ろうね!」
私が困惑している顔を察して、エミリが話し掛けてくれている。
「な、なにも、話せなくてごめんね……」
妹と話している時のように、話したい気持ちはもちろん、私にもある。だが、ことばにできないのだ。話そうとすると、喉が詰まったようになって、話せない。
「ううん。別に、話しづらいなら大丈夫だよ!私から積極的に話し掛けてくから!」
積極的に話すのは、多分、私の人見知り、コミュ障を治すためだろう。満面の笑みで、こちらに顔を向けてくるエミリがとても可愛く眩しく見えた。と、同時に、私も早くエミリと話したいと思うようになってきている。
「う、うん。よろしく……ね」
いつかは、声がちゃんと出るようになるだろう。でも、エミリが途中で私のことが嫌になったらどうしよう……それが不安。多分、花奈の時のように、話さなくなるのが嫌な自分がいる。だから、人と仲良く接するのは怖い。今のところは、まだエミリとはそんなに仲良くはないはず。やはり、この程度が良いのだろうか。悲しみを背負わないためには、仲良くしない方が良いのだろうか……
ずっと、悩んでしまう自分が嫌いだ。
「うーん。前は上手く見えないし、建物は無いしなぁ。まぁ、モンスターと出くわさないだけ良いんだけど……」
それからというもの、何度かエミリは、たわいも無い話をしてくれている。まぁ、私はほとんど話せてないんだけどさ。そろそろ、やっぱり私も喋れるようにならないとダメかな。
「あ、あの、エミリ、ちゃんは、どうやって、その、話せるように、なった……の?」
ようやく、私の一番聞きたいことが聞ける……エミリの言葉の返答としては、全く合ってないけど……
「あー。うん。それはね、内緒!」
むむむ。まさか、内緒とは……私も同じ手で治そうと思ったのに!
「え。お、教えてくれないの!?」
とりあえず、悲しんでいる顔で言わせようと頑張る私。
「うっ。そんな顔しても……教えな……はぁ。しょうがないなぁ」
よっし!エミリに勝った!これで、私もコミュ障治るかも!!!
「っと、その前に、雪見ちゃん!戦闘準備して!モンスターが現れるよ!」
エミリの声を聞き、杖を構える。だが、周りにモンスターの気配はない。一体何処にいるのだろうか。
「雪見ちゃん!後ろ!!」
間一髪だった。咄嗟のエミリの声が聞こえなかったら、私は喉を掻っ切られていただろう。少し掠って血が出ている首がそう告げている気がする。
「グルルルルルッ!!」
ようやく、モンスターの姿がハッキリした。それは、純白の毛を持つ、狼。すなわち、ホワイトウルフだった。
「良かった。雪見ちゃんが生きてて……」
私がギリギリのところ躱すことが出来て、安心したようだ。でも、なぜ、エミリは完全に雪と同化していた、ホワイトウルフを見抜いたのだろうか。
「って、危ない!!」
私の次は、エミリが後ろから狙われていた。が、それもうまく躱している。きっと、何かのスキルを持っているのだろう。だが、それよりも、今はこいつを倒すのが最も優先だ。
「雪見ちゃんは、多分、魔法が使えると思うから、援護お願い!」
まさかまさかの驚き。エミリちゃんは、近接系の職でした。しかも、自分の身の丈くらいの斧を振り回している。
「はっ!見ている場合じゃないや!」
ついつい、見てしまっていたが、私は私で攻撃しなければならない。だが、私の魔法は、大体範囲系だ。援護するにしても、雪に弱点であろう、炎は使えない。闇魔法も、ダークバインドくらい。うーん。どうしたものか。
「もう、とりあえず 【ダークバインド】!」
とりあえず、動きさえ止めとけば、援護としては充分だろう。
「きゃあ!」
何故だろう。私の手元が狂ったのか、それとも、エミリがわざと当たったのか、分からないが、エミリとホワイトウルフ両方に私のダークバインドが巻き付いている。
「これは、どうすれば……」
このまま攻撃すれば、エミリを巻き込むこと間違いないだろう。だが、これを逃したら、また雪に同化して危険に晒されるかもしれない。くっ……
「雪見ちゃん!私ごと攻撃して!!ハァハァ……」
んんん? なんか、変だぞ。息遣いが荒いし、ちょっと顔が赤い気が。気のせいかなぁ……
「早く!雪見ちゃんの使える、一番強い魔法を!!」
うーん。今のこの状況だと、フレイムが一番適切かな? でも、ほんとにいいのかなぁ……いや、エミリちゃんが自分の身を犠牲にして、頼んできているんだ。これは、やるしかない。
「そ、それじゃ、魔法打つからね!【フレイム】!」
私の前は、一瞬で業火とかし、全てを燃やさんばかりに炎が吹き荒れている。そんな中、もちろん、エミリの姿は見えない。
「エ、エミリちゃーん!い、生きてるー?」
まだあまり大きい声で呼べないが、今出せる全力の声でたずねてみる。が、返答はない。
「ダメか……」
少し時間は経ち、それでもエミリちゃんからの言葉は聴こえない。段々と、炎は止み、今はただ、煙が辺りを隠している。私が、エミリちゃんの無事を知るのは、この煙が晴れてからだろう。それまでの時間、私はただ一人、煙を自力で晴らすことすら出来ず、待っている事しか出来なかった。
頑張りまっす!