十六話 「初めての逃走」
遅くなって申し訳ない……今の時間まで寝てました(笑)
「キシャァァァァァ」
甲高い叫び声と共に、先ほど戦った敵とは明らかに違うモンスターが現れた。違うというのは、主に大きさだ。
「お姉ちゃん……あれは、デカすぎじゃない?」
妹も同じ感想を抱いているようだ。うん、きっと誰が見ても同じ感想を持つと思う。それくらいでかいのだ。
「完全に、恐竜じゃん……こんなの勝てる気がしないんだけど……」
あれは、人間が倒すモンスターじゃない気がする。ましてや、私達じゃ絶対無理。レベル的に攻撃が効かないだろうし。
「よし。お姉ちゃん!」
んんん? もしかして、このバカ妹は戦うとか言い出すのかな?
「逃げよう!あれはさすがに無理!」
ほっ。良かった。それよりも、こいつがちゃんとした判断が出来たことが何よりも嬉しい。
「あんたでも、さすがに分かるのね……」
「どんだけお姉ちゃんは私を馬鹿だと思ってるの!?」
やばいモンスターを前にしても、何故か私達は口論を繰り広げてしまっていた。
「って、こんなことで争ってる場合じゃないって!早く逃げなきゃ!」
私たちが口論しているうちに、モンスターは刻一刻と私達に近付いてくる。
「お姉ちゃん!ちょっと足止めとか出来ないの!?魔法とかでさ!」
妹の遠距離手段は少ない。故に、足止め出来るのは私しか居ないわけだ。
「わ、分かったよ!頑張ってみるから、先に走ってなさい!!」
私は立ち止まり、最大の力で魔法を練る。
「これで少しは……ダークバインド!!」
モンスターに向かい、鎖のようなものが纒わり付く。が、しかし、
「嘘っ!全く効いてないし!!これは、無理ーーーー!!」
私の最大の力で効かなかったのだ。こんなの勝ち目がない。
「お姉ちゃん!はやくこっちに!ここなら逃げれるから!!」
妹が手招きしている。そこは、モンスターが入り込めなさそうな小さい通路だった。
「ちょっ、桜!はやく手を!」
既に、モンスターはわたしに追いつきそうだった。私は懸命に手を伸ばし、桜の元へと走る。
「お姉ちゃん!握って!!」
妹の手にようやく届き、私は勢いよく引っ張られた。
その後、モンスターは獲物を探しに、そこらを歩き回っていたが、私たちが見つかることはなかった。
「ふぅー。危機一髪だったね!」
何故だろう。妹が笑顔で言っている。
「なんでちょっと喜んでるの!?死にかけたんだよ!?」
私としては、全く喜べない出来事だ。
「でもー。あんなデカイモンスター居るなんて知らなかったし、ちょっと楽しかったし……」
なんかボソボソ言ってるがもうほっとこう。それよりもだ、私にとっても、あんなの居るなんて知らなかった。あいつがこの火山に沢山居るとしたらどうしよう……
「ね、ねぇ。はやく火山から出ない?」
一刻も早く出たい。もう襲われたくないのだ。いくら、死んでもデスペナルティが掛かるだけと言われても、死ぬのは嫌だ。
「あー。でもねぇ……さっきの道が唯一私の知ってる道だから、こっちの道は分からないんだよねぇ」
桜が言うには、戻り方も分からないし、進み方も分からないらしい。このままだと、目的の場所に辿り着けない。
「それって……非常にまずくない? かと言って、あっちの道に戻るとモンスターがいるし……うーん」
絶対にもう会いたくないのだ。せめて、強くなって戦えるようになってからが良い。
「しかも、まだ絶対あいつ居るもんねぇ」
この短時間でモンスターが消えるとは思わない。そして、消えるまで待つと長すぎる。
「これって、もう進むしかないじゃん……」
私達は長居することを辞め、とりあえず道なりに進むことにした。最悪、転移石を使えばいい。確か、洞窟やら、火山内でも使えた……はずだから。
「それにしても、この火山よく分からないねぇ」
実は、結構進んでいると思うのだが、幾ら経っても景色が変わらない。
「段々と進んでるのか、戻ってるのか、わからなくなってくるよーーー!」
妹の歩くスピードが段々と遅くなってきている。確かに、私達が先程居た場所よりも、熱くなっていて、疲れるのは分かるのだが、ここを抜けなければどうしようもない。
「ほら、行くよ!」
手を引き、一緒に歩く。私も疲れているのだ、既にもう転移石を使おうか迷っている所だし。
「あとどれくらい歩けば出れるのかなぁ……」
私の勘だと、そろそろな気がする。というか、そろそろ出れると信じたい。
「そうだ、桜。あんたが倍速化で見てきてくれれば良いんじゃない?」
私は走るスピードが遅い。きっと、私が言っても意味は無いだろう。ここは、桜が適任だ。
「えー。でも、出るためだからしょうがないかぁ……」
渋々、桜は倍速化を使い走ってくれた。これには、感謝せねば。
「あ、これで私一人じゃん。まぁ、関係ないけど……」
一人でノロノロと歩き、桜のあとを追う。いつか、桜は帰ってくるだろう。そう信じて。
「うーん。桜遅いなぁ」
あれから結構経ったと思うのだが、戻ってこない。こうなると少し心配になる。途中で倒れたのかとか、死んだかもしれないとか。
「とりあえず、メールでも送るか」
メニュー画面を開き、桜にメールを送る。これが帰ってこなければ、死んでるか、倒れてるで正解。いや、もしくはモンスターと戦っている可能性もある。
「お、メールの返事来た。結構早いな」
送って、1分ほどでメールが届いたので、内容を確認する。
あ、お姉ちゃんごめん。私死んじゃったわ。途中でさ、さっき出会ったモンスターに遭遇しちゃって、応戦しようにも、攻撃が効かないし、普通に殺されちゃったよ。ってな訳で、私は今噴水広場に居るからね!
「死んだのか。待てよ? ってことは、もしかして……」
私がこの先に進むと、あのモンスターに出会う。それは、嫌だ。なので、私は、アイテムバッグから一つのアイテムを出し、使用する事にした。
「転移!」
転移石を掲げ、アイテム消費する。
次の瞬間、私は一時の浮遊感に襲われ、気が付いたら始まりの街の入り口に立っていた。
「へぇー。なんか不思議だなぁ」
使い切った転移石を見ながら呟く。
「あ、早く噴水広場行かなきゃ!」
こんなことしている暇はない。私は転移石を仕舞い、噴水広場へと駆け抜けて行った。
「あ、お姉ちゃーーーん!!」
遠くから妹の声がする。そして、私には視線が集まる。
「ちょっ、はやく黙って!!」
急いで、妹の手を引っ張り、歩いて行く。視線から逃れるためだ。
「あ、お姉ちゃん。誠に残念なんだけどさ、そろそろ夜ご飯の時間だから、落ちないと」
私に手を引かれながら桜が言っている。
「あ、ほんとじゃん。じゃあ、ログアウトできる場所行くしかないか」
時刻を確認し、確かめる。その後、いつもの場所へと出向き、私達は一斉にログアウトした。
「おねえちゃーーん!夜ご飯何食べるーー?」
ログアウトして、ベットから身体を起こすと、すぐに妹の声が聞こえてきた。
「夜ご飯かぁ。また一緒に作る?」
階段を降りながら、妹に話し掛ける。正直言って、出掛けるのがめんどくさいのだ。
「分かったよ!んじゃ、適当に作ろっか!」
こうして、私達の一時のゲームが終わり、一緒に夜ご飯を作る。そんな中、私は夜ご飯の後のゲームを楽しみにしながら、ジャガイモの皮を剥くのだった。
明日はいつも通り更新出来ないです。ごめんなさい。




