四十五話 『嗤う悪魔』
すみやかに、全てを捨てて逃げねばならなかった。
シュトロはヴァイスの顔を十分に殴り潰すと、フードとマントを剥ぎ取り、身元証明につながる物をすべて奪い取った。意識のないヴァイスの喉をヴァイス自身の剣でかっ切り、死体を道ばたの、海に続く側溝に放り込む。
周囲を見回し、目撃者がいないことを確かめてから白装束に身を包むと、そのまま足早に細路地を出た。
倒したヴァイスが、たった一人でシュトロを追って来たとは考えられなかった。残った仲間が未だ町をうろついているはずだ。
彼らはシュトロが村を滅ぼしたことを知っている。確たる証拠があるのか、それとも残された死体の中にシュトロがいなかったことから、当て推量で犯人を決め付けたのかは分からないが、いずれにせよ国境の外まで追って来るからには、彼らの活動は連邦が正規に認めた公務であるはずだった。
連邦政府がシュトロの殺害を図っているのだ。つまりはシュトロは、ルイン連邦にとっての『国敵』に指定されたことになる。
最悪、この国の――モーゼ侯国の官憲が、ヴァイス達に協力している可能性があった。だとすれば宿や荷積場や、施療院に近づくのは危険だ。見張りがいるかもしれないし、実際にその場で確保されてしまえば施設の関係者に累が及びかねない。
気のいい労働者達や尼僧達が、自分のせいでいわれのない危害を加えられることを思えば、シュトロは彼らに別れの言葉を言えぬ悲しみなどは、いくらでも噛み潰して呑み込めた。
自分は彼らの町では捕まらない。彼らの国では死なない。
追っ手を皆殺しにして海に流してでも、この場を切り抜ける。
シュトロはヴァイスの格好で、ヴァイスの剣を提げたまま、町の南端へと向かった。幼き日に夢見た白装束は思ったよりも生地が粗く、縫い目が肌をちくちくと刺して着心地が悪い。剣も立派なのは鞘だけで、剣身自体の作りはかなり粗悪だった。煉鉄を叩いて刃の形にしてはいるが、削りが足りず切れ味が悪い。刃物というよりは鈍器に近かった。
シュトロは自分が元々携帯していた、屠殺用の血抜き剣をそっとマントの下で握りしめた。同じ煉鉄製でも、こちらの方がはるかに刃物としての完成度が高く、実用性に優れている。それはヴァイス達の剣が、所詮は権力を象徴するための飾りに過ぎないことを示していた。
連邦は国民に対し、各々の労働に必要なものしか支給しない。ヴァイス達の本来の仕事は戦闘ではない。権力を示し、国民を監視することなのだ。
連邦政府が最初に戦闘者ではなく、監視者を差し向けてきたことは不幸中の幸いだった。殺人の経験と手並みにおいて、シュトロは大多数のヴァイス達より勝っているはずだ。痩せて飢えていたとはいえ、武器を手に襲ってくる数十人の村人を己が手で始末したことのある者が、ヴァイスの中にいるとは思えなかった。
一対一なら負けはしない。剣の性能でも、使い手の技量でも、シュトロは優位に立っている。派手に暴れて大勢に囲み込まれることや、モーゼ侯国側の官憲と戦う事態さえ避けられれば、町を脱出できるはずだ。
シュトロは白装束が目立たないよう、様々な服装の人々が行き来する盛り場や、船乗り達の遊び場を選んで町を南下する。途中何人か顔見知りとすれ違ったが、フードのおかげで気づかれることはなかった。
かつてシュトロに檸檬をおごってくれた労働者仲間が、恋人と肩を組みながらすぐとなりを通り過ぎた。すさまじい愛惜がシュトロを振り向かせようとしたが、唇を噛み破って耐える。
肉親を殺した時でさえ、涙は出なかった。三人目のレヒトを失った時でさえ、ここまで胸が苦しくはならなかった。
憎悪。
シュトロの魂に、不快な懐かしい感情が、毒気を伴いながら満たされていく。
――結局、シュトロは誰に阻まれることもなく、港町ブゼニエを後にした。
街道を行き、人気がなくなると白装束を脱ぎ、粗悪な剣とともに崖下の海に投げ捨てる。その後道ばたの木陰に潜み、ヴァイスから奪った腰袋や身分証を物色した。
ヴァイスの持ち物はつつましく、必要最低限の品物しかなかった。国外で活動するのに必要な書類や、金銭、それに非常食料に、飲用水……。ヴァイス達個人の人格をうかがわせるようなものは何一つない。
シュトロはやがて折りたたまれた羊皮紙の束の中に、シュトロ自身の似顔絵の入った書類を見つけた。行頭には『命令書』とあり、おそらくは連邦政府が指定したシュトロの罪状と、処分方法が記されていた。
罪状は内乱罪。処分は裁判なしの臨地死刑。ただし遺体は塩漬けにして、本国に移送することとある。
死刑はともかく、内乱罪とはどういうことだとシュトロは眉根を寄せた。
内乱罪とはたとえば国家転覆をはかり、国のあり方や秩序を破壊する目的で暴動等を起こした者が問われる罪だ。たかが村人数十人を殺した程度の単独犯罪者にあてる罪状としては、あまりに大げさだった。
連邦政府はシュトロに自分達の国家秩序を破壊されたと考えているのか。そんな馬鹿なとつぶやいた瞬間、シュトロの耳に不意に何かが鋭く風を切る音が届いた。
反射的に地を蹴り飛び退くと、肩を預けていた木の幹に錬鉄の剣が突き刺さった。木の葉を踏み散らす音が、四方から迫って来る。
シュトロの右手から、空の剣鞘を帯びたヴァイスが奇声を上げて蹴りかかってきた。とっさに血抜きの剣を抜き、迫り来る靴底をかいくぐり、ヴァイスの腿裏に刃を突き立てる。
激痛に叫ぶヴァイスの足をそのまますくい上げて地に倒すや、すぐに別のヴァイスが駆け寄って来て、剣を振り下ろしてきた。
シュトロは迫る刃を、人肉から引き抜かれたばかりの湯気の立つ血抜き剣で受け止める。衝撃は腕を伝わり肩を痛めたが、その後のつばぜり合いでは圧倒的な膂力の差で瞬間的にシュトロが押し勝った。
剣をはじかれ、がら空きになったヴァイスの胸に、深々と刃が突き刺さる。声もなくひざをつく相手の顔面を、シュトロは力任せに蹴り倒した。
刃が肉から抜け、どす黒い血液があたりに飛び散る。荒い息をしながら首をめぐらせると、残る二人のヴァイスが剣を構えたまま動きを止めた。
「……わざと町から出したってわけか? 後をつけて、人気のない場所でこっそり始末しようってか! 陰険なてめえららしい計画だがよ! 四人ってのはちっとばかし数が足りなかったんじゃねえか!?」
吼えるシュトロに、ヴァイス達はわずかに後ずさりながらも刃を向け続ける。
シュトロは倒した敵の血に濡れた靴を大きく振り上げると、そのまま潜り込むように体勢低く間合いを詰め、ヴァイスの一人の懐を素早く突いた。
肋骨のすきまに刃が入り込み、ヴァイスの口から奇妙な音が漏れる。すぐさまもう一人のヴァイスが反撃に動いたが、その刃はシュトロに胸ぐらをつかまれ引き倒された仲間の頭部に埋まった。
ほとばしる血液と脳漿の暗色のカーテンを裂き、シュトロの剣が最後の敵の右目に突き刺さる。
全てのヴァイスが剣を取り落とし、地に倒れ伏した。シュトロは息を詰め、敵の顔から刃を抜く。
肺が、空気を求めて胸肉にへばりついているかのようだった。息苦しく、胸全体に異常な圧迫感を感じる。
ゆっくりと詰めていた息を吐き出し、慎重に吸った。肺が少しずつほぐれていき、戦闘後の心臓の高鳴りも、少しずつ収まってゆく。
「逃れられるものか」
聞こえた声に、シュトロは反射的に切っ先をひるがえした。剣に付着した血のりや肉片が飛び散り、最初に腿をつらぬかれて倒されたヴァイスの顔にかかる。
どす黒い血をたっぷりと地面に吸わせたヴァイスは、すでに死人のように真っ青になったフードの目元を引きつらせ、それでも笑っているようだった。シュトロを震える指で指すと、濁った声を重ねてくる。
「連邦政府は貴様の死体を欲している。我々を退けたところで、じきに第二第三の討伐隊が貴様の元にやって来るだろう」
「……討伐隊だと?」
「逃れられるものか。世界中、どこに逃げようと、貴様は……」
シュトロは死にかけのヴァイスに近づき、そのフードを剥ぎ取った。現れたのはどこにでもいる純朴そうな男の顔で、その髪はシュトロと同じ、赤みを帯びた茶色だった。
「俺なんぞのために、なぜそこまでやっきになる? 俺が同胞を何十人も殺した殺人者だからか? だが政府にとっちゃ国民は、いくらでも替えのきく使い捨ての歯車に過ぎねえはずだ。歯車同士がかち合って壊し合ったからって、今更深刻ぶることもねえだろうが」
「……貴様が殺したのは『何十人』なんてものじゃない」
ヴァイスが頭を持ち上げ、シュトロに笑いかけた。
「『何千人』だ。連邦では今、貴様のせいで何千人ものヴァイスや中央管区民が虐殺されている。我々は、それを止めるために貴様を追って来た」
……話が見えなかった。シュトロはヴァイスの髪をつかみ上げ、低く「どういうことだ」と問う。
ヴァイスは地面にどろどろと流れ出てゆく己の血液に視線を落としながら、ひきつるように笑った。
「内乱だ。我が国は今、連邦発足以降初の内乱に脅かされている。叛徒達は連邦各区から発生し、具体的な勢力像を持たぬまま個別に公的施設への襲撃、暴動を繰り返している。……言っている意味が分かるか?」
「……連邦国民が暴徒化したってことか? 誰に扇動されるわけでもなく、皆が皆、自分の意志で政府に牙を剥いている……」
「やつらはな、全員カカシの顔をかぶって戦っているんだ」
心臓が、早鐘のようにシュトロの胸を打った。ヴァイスはどろりと濁った目をシュトロに向け、「馬鹿野郎が」と毒づく。
「自分のしたことがいったいどれほどのことか、微塵も分かっちゃいない。貴様は何百年も続いた連邦の民間支配にひびを入れたんだよ。国民が長年政府に盲従し、どんな環境でも己の務めを果たしていたのは、つまりは政府の偉大さ、強大さを認知し、屈服していたからだ。政府に逆らう者は、生きてはいけない。例外なく叩き潰される。そう信じていたからだ。
だが貴様は、連邦史上類を見ない大罪を犯しながら、まんまと逃げおおせた。そのことが民衆の政府への不信と、叛意を生み出したのだ」
「……ふざけんな。俺のしたことは、しょせんは辺境の村の小事に過ぎねえ。それがなんで国全体を巻き込むような大事になってんだよ! だいたいてめえら、詳しい事情も知らねえんだろうが! 全部終わってからやって来て……!」
「一人、生存者がいた」
ヴァイスの唇が、にちゃ、と嫌な音を立てた。
「腸を抜かれ、桶をかぶせられ、生身のカカシとして晒されてもなお息のある村人がいた。そいつが何もかも喋ったのさ。くたばる寸前にな。貴様が三人目のレヒトと通じていたことも、ヴァイスになろうとしていたことも、カカシの顔をかぶって村人達と戦ったことも全部吐いた。
話を聞いた労働監視官は早馬を飛ばして政府に事態を報告した。不幸だったのは、報告を受けた取り次ぎ役が三人目のレヒトの隠れ信者だったことだ。やつは何を血迷ったか、辺境に現れたカカシ男をレヒトの反政府思想の嬰児だと触れ回った。それが一度は鎮火した三人目のレヒト崇拝に火をつけたのだ」
「冗談じゃねえ! 俺のやったことはレヒトとは関係ねえ! レヒトはとっくに俺から離れていたんだ! 外野が何を勝手に盛り上がってやがるんだ!!」
「貴様の言い分など関係ない。事実政府は大罪人である貴様を国外に取り逃がし、その威信を傷つけてしまった。法と秩序を踏みにじった殺人鬼が、裁かれもせず人生を謳歌している……しかもそれを、中央管区の連中がめでたいことのように喜んでいる……。
大方のレヒト信者どもは、以前と同じように一時の流行のつもりで、よく考えもせずレヒトと貴様をもてはやしたのだろう。一人の誠実な男を使い潰し、逆に復讐された村人達をさげすみ、やはりレヒトの個人の幸せを重視する思想は正しかったのだと騒ぎ喜んだ。
だがその姿が他の連邦民の政治不信を決定的にし、やがて暴動を起こすまでに至らせたのだ」
ヴァイスが笑みを消し、シュトロの顔に指を伸ばしてきた。シュトロがその手をつかむと、ヴァイスの顔に焦げ付くような嫌悪がにじむ。
「心底、救えぬ、愚民ども……。国を思えば唾棄し殺すしかない貴様を、やつらは英雄視し、伝説化し、いまや革命のシンボルのように扱っている。カカシの旗を振り、カカシの顔をかぶり、暴れまわる民衆が連邦領内にあふれている。
やつらを止めるには、貴様を殺して死体を晒すしかない。政府に逆らう者の末路を、政府の強大さを、再び見せつけねばならない」
「……」
「覚悟しろよ、シュトローマン。これは戦争だ。ルイン連邦は貴様を、存続をかけて追い続ける。貴様に安息の地などない。必ず……必ず仕留める……」
「ちょっと待てよ」
シュトロが、不意に睨みをくれているヴァイスから手を離した。顔を引き、相手を見下ろしながら、シュトロの瞳が異様な光を宿す。
「たった一人の人殺しのせいで、威信が揺らぐ国家って……何だよ」
目を剥くヴァイスの顔に、シュトロは色濃い疑いの視線を向けていた。「お前ら、ひょっとして」と、シュトロの唇が至極ゆったりと動く。
「何か、俺に、押し付けようとしてない?」
「なっ……何……?」
「つらつらと恨みがましげに語ってくれたけどよ。冷静に考えてみりゃ……三人目のレヒトみてえな偉い男が、命がけで挑んで変えられなかった国をさ。俺みたいな若造が意識せずたまたま変えちまったなんてこと、あるわけねえだろ」
そうだ。そうだよ。あるわけねえんだ。
シュトロは繰り返しながら、ぎろりと確信に満ちた目でヴァイスを睨んだ。
「連邦政府が威信をなくして、民の心が離れてるっつうんならよ。今までおとなしかった国民が暴徒化して、革命を叫んでるっつうんならよ。そりゃあきっと、俺のせいじゃねえよ」
「何を言うか! 貴様の存在が暴徒どもの……!」
「俺がいなくても暴動は起こった。俺の殺しはただの『きっかけ』さ。お前らはきっかけにばかり執着して、一番の問題から目を背けてんだよ」
シュトロは言いながら、いつしか周囲の死体に集まり出していた蝿に目をやった。ルイン連邦の寄生蝿よりも小さなそれらを剣先で追い、くくっと、喉を震わせる。
「そもそもよ、連邦政府のお膝元の中央管区で、レヒトみてえな男の論説が一時的にでももてはやされること自体がおかしいじゃねえか。今の制度や政権を批判する言葉が流行るのは、政府の威信ってやつがとっくに地に落ちてたってことの証明なんじゃねえの?」
「なっ……」
「国境を越える時、ただの一人の見張りとも会わなかったんだけどよ。あれってどのくらい前からあの状況なの? 俺ってばてっきり、国境にはドでかい警備砦があって、何百人もの傭兵が詰めてるもんだと思ってたんだけど。
あれじゃ他国の軍隊が侵攻してきても国を守れねえじゃん。つまりは、国土を危険にさらしてるってことじゃん」
そんな政府ってあるぅ?
シュトロの毒気をはらみはじめた声音に、ヴァイスは唇を噛み、必死に身を起こそうとしている。シュトロは懐をあさり、カカシの顔を取り出しながら、ぎりりと歯を鳴らした。
「とっくに行き詰まってたんだろ。俺達の国は。傭兵なんて人種は結局金づくだ。より払いの良い国につく。そんな連中に国防を任せるって発想が、すでに下の下なんだよ」
「黙れ! 薄汚い殺人者のくせに国を語るなッ!!」
「おおかたどこぞの隣国に傭兵達を引き抜かれまくって、国境全域を警備させるにゃ人員が足りなくなったんだろ。無理もねえ。ルイン連邦は国民を飢えさせて、弱らせて、義務と罰でがんじがらめにして無理やり働かせているが、他の国は働けば働いた分だけ財産も自由も得られるようにして、自分から精を出すように仕向けてるんだ。そりゃあ成果は段違いだろうぜ。傭兵の取り合いにも負けるよなあ」
カカシの顔が、シュトロの手の中でぐにゃぐにゃとうごめく。その眼窩にこもった闇が、ヴァイスを暗く見つめていた。
「――崩壊は、とっくに始まっていたんだ。馬鹿で低劣な制度が何百年、何千年続いたからって、それが来年も、来月も……いや、明日存続してる保証だってねえ。これまでの愚行のツケが、たまたま今、回ってきたってだけなのさ。三人目のレヒトも、二十五人目のシュトローマンも、国家崩壊の元凶じゃねえ。
元凶は、お前らさ。人間の苦痛と不幸を国が行き詰まるまで積み重ねてきた、連邦政府のお歴々とその飼い犬さ。お前らはそれを認めたくないから、国の混乱を俺一人のせいにして、必死に殺そうとしてるんだろ? それで全部解決すると、思い込もうとしてるんだろ?」
「……ひ……」
ヴァイスが、震える唇で何かを言おうとした。だがその言葉は、カカシの顔を深くかぶったシュトロのけたたましい哄笑にかき消された。
「哀れすぎて涙も出ねえ! 俺みたいなくだらねえ男に連邦のお偉いさんが全ての責任をひっかぶせようと、必死によっかかってきてるってわけか! 沈み行く泥舟の中で、沈没の責任を十代のガキに肩代わりしてもらおうとしてんのか! そのためにお前らヴァイスをはるばる寄越して来なさるってのか!! 何度も何度も、俺がぶっ殺されるまで!!」
シュトロは街道中に響き渡るような大声で笑うと、何の前触れもなく、ヴァイスに血抜きの剣を振り下ろした。
刃は首の付け根に埋まり、ずぶずぶと肉と、血管を掘り起こす。鮮血を噴いて白目を剥くヴァイスに、シュトロは暗黒の双眸を寄せ、ささやいた。
「これは戦争だって言ったな。いいぜ、乗ってやる。お前ら連邦が崩壊するか、俺がくたばるかだ。一日でも長く生き延びた方が勝ちだ。……結果が出るまで、何十人でも、何百人でも殺してやる。てめえらの血で連邦を沈めてやるぜ」
びくびくと跳ねるヴァイスの体を、シュトロは何度も何度も刺し貫く。
飛散する血液を、飛び交う蝿がうれしげにひっかぶり、真っ赤な線を幾重にも宙に刻み込んだ。




