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1: 転生したし美少女愛でたい

初投稿ですので拙い部分が多々ありますが、少しでもお楽しみいただけると嬉しいです。


可愛いは正義である。



元々私は、可愛いものが好きで好きで仕方なかった。

フリルがふんだんにあしらわれたスカートは、くるりとまわれば空気を含んだ布がふわりと舞う。

夏にはツヤのあるサテンのリボン、冬はベロア生地の温かみのあるリボンに変えて。

編み込みがされたつま先のまあるいブーツは、ちょっと踵が高め。


…そんな可愛い可愛いものが似合う“女の子”は素晴らしい。

私には似合わないけれど、可愛らしい美少女がそれらを身につけてお姫様のように愛らしく笑う姿を見るのが好きだった。




それは、昔も今も。

ー…前世でも今世でも同じ事だわ。





「というわけでですね、美少女は国の宝なのですよ!」

ぐっと拳を握って力説すると、目の前の少女は呆れ顔になった。

きりっとした美しい瞳が少し細まるのを見て、自分が馬鹿にされているとは分かっていてもそんな顔も可愛いなぁなどと思ってしまうあたり、私は重症だろう。


「何が、というわけでだ。とりあえずその手に持っているオペラグラスを置こうか。流石に犯罪者と認識されては困る」

「オペラグラスだけじゃなくて屋外用ほしい…」

「没収するぞ」

「没収なんて酷い事を…!アルの意地悪」


口を尖らせると、そういう顔をするものではないと嗜められた。

ええ、ええ。アイスティーン家の娘である私がそのような顔をするなんてはしたないとおっしゃるのでしょう。


「いいではありませんか、別に」

「よくない」

「…別にアル以外の前ではしないもの」

「…はぁ」

「何でため息つくのですか。そうですね、美少女や美人さん…可愛い服はみんな大好きですよ?…でも」



私は彼女…いえ、彼に向き直ってはっきり宣言する。





「それでも、貴方ほど愛らしく可愛らしい全ての美を備えた、私の運命の人は他におりませんわ。アルデリッグ殿下」













皆様ごきげんよう、私の名前はミリアナ・アイスティーンと申します。

唐突ですが、私には前世の記憶があります。

…とりあえず可愛いものが好きで好きで仕方なかった前世の私は、二次元三次元問わず美少女を見ることが大好きだった。

今世の私は、アイスティーンという何だか美味しそうな名前の家のご令嬢。

この世界はなんというか…ちょっぴりファンタジーな中世風の世界で、しかも皆の着ている洋服が可愛いのなんの!

因みに3歳の頃、私の誕生日に行われたパーティ(大規模)にいらしてくださった、とっても可愛らしい方々が沢山視界に入った事で一気に前世の記憶を取り戻した次第である。

これはもう、今世でも美少女を愛せという使命に違いないわ!


…とまぁ、こんな風に私は息巻いているわけなのだけど…流石にこれをペラペラと話せばお医者様を呼ばれるに違いない。



「ミリア、支度は終わった?」

「はい、お母様」



私はこの世界で必死に猫かぶっている。

前世の記憶があるので、ポッと庶民思考が飛び出てしまうのはあれだが、基本的には落ち着いたもの分かりの良い娘と認識してもらえている。


お母様と一緒に馬車に乗り込み、到着を待つ。

お母様はとても美しいお方なので、見ているだけで飽きを感じない。

しかし、娘にじっと見られているというのはお母様からすればアレだろうと私はたまに馬車の外に目をやる。

流れる景色は普段は目に出来ない場所なのでこれもまた飽きのこないものだ。

そうしていれば、あっという間に時間が過ぎた。

じっとしているというものは子供にすれば退屈なものだが、我ながら便利な性分だと思う。


「お嬢様、到着致しました」


声かけをされ、手を差し出される。

ここでぴょいと馬車から飛び降りるわけにもいかないので、そこに手をのせておく。



「…まあ!」


私の目の前に広がるのは立派なお城。

…これは、お姫様がいるんじゃないかしら?

お城に棲む、ふんわりした雰囲気のお姫様…いいえ、きりっとした力強さを感じるお姫様もいいわね!

出来ることなら、前者は金色の髪か薄い茶系…後者は白銀か黒ね。


妄想に胸を膨らませていると、ぐふふという不気味な笑い声が漏れそうになり、おっといけないと口を抑えた。

…それに私がこれから会うのはお姫様じゃないものね。

思考を巡らせていると、今度はうっかり失礼な事をしてしまわないか不安になってくる。ああ、なんて極端な思考回路!


「ミリア、行きますよ」

「はい」



お母様は、堂々とした佇まいでお城へと入っていく。

かっこいいです、お母様!







「…あら?」


お母様に着いて歩いていると、私の美少女レーダーがビビビと反応したのを感じた。

良く無いとは思いつつ、余り不審がられない程度にきょろきょろを辺りを見回すと、今歩いている長い通路の横にある綺麗に装飾された窓に目がいった。

窓は中庭に繋がっているらしく、色とりどりの花々が植えられている。我が家の庭も中々のものだが、さすがお城というべきか…まるで天国を窓越しに見ているようだと思える程に素晴らしく美しい庭だった。

…しかし、そんな庭を目の当たりにしながらも私はその向こうの今自分が居る階より更に上に位置する部屋に取り付けられた小さな窓…そこに見えた“そのひと”に私は釘付けになった。




さらりとした銀の髪は光を浴びてまるでキラキラと輝き、まるで月のよう。

きりっとした目をしているのに、その表情はどこか儚さを感じる。

まるで計算されたような完璧さー…。




…これは…これこそが、私の理想の…!




まるで電流が身体を駆け巡るような衝撃。それに不快感はなく、むしろ胸のあたりがどんどんと満たされていく。

ああ、なんて。


ーなんて美しいのかしら。



「ミリア?どうかしたの、行きますよ」


私が足を止めていたのに気付いたのだろう。

そうお母様に声をかけられ、慌てて…しかし悟られないように静かに、はいと返事をする。

お母様の下に向かう時もう一度ちらりとあの少女の方を見たが、その少女は既に消えていた。




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