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宿泊

12月27日追記

改稿しまし

 衝撃の事実。私が先程まで飲んでいた野菜ジュースは妹の血入りでございました。


 過剰な行動を取るといっても限度があるでしょうが………!!


 いやいや、フェロモン関係なく過剰な行動を取っていることを鑑みればこの程度で済んでよかったと考えるべきかもしれない。


 うーむ、やはり先程思った通り想い人の世話をすることを過剰な行為と考えていることを心配すべきかもしれない。そんな不可思議な思考回路を持っていると相手に嫌われちゃうぞ☆ て、相手は俺でしたね。


 ふーむ、そうなると妹を矯正してやり、健全で建設的な恋を出来るようにしてやることが兄である(わたくし)の義「ねえお兄ちゃん、何でお兄ちゃんから私以外の女のにおいがするの?」


 現実逃避失敗。文美さん、追及激しくないですかね。それよりもさっきからにおいにおいって何だよ一体。犬か貴様は。


 ともかく文美からの追及をなんとかせねばいかん。二回も地雷を踏んでしまった今、三回も踏み抜くのは勘弁したい。仏の顔も三度まで。失敗は許されない。


 ミッション1:文美の追及を回避せよ!


「いや、ね? こう、告白を受けた時にヨロシク、って握手してだね?」

「嘘」

「いやいや、本当だって。そもそも何で嘘つかなきゃいけないんだよ」

「嘘。だってお兄ちゃんの手じゃなくて体から女のにおいがしてる」


 ミッション1失敗!

 何でそんなのわかるんだよ! おかしいだろ! さっきまで質問に素直に答えてたら地雷踏んだのに、素直に答えなくても地雷とかどうしろってんだよ!


 ああ、不味い、元々仏では無かった気がするが三度も地雷を踏み抜いたせいで文美から最早オーラのようなものが発せられているように見える。


「私が頑張ってお兄ちゃんを害虫から守ろうとしてるのに、虫が寄ってこないように私のにおいを付けてるのに、何でなの?! 何でお兄ちゃんは嘘を付くの?! 何でお兄ちゃんは私を見てくれないの?!」


 益々手が付けられなくなった文美が泣き叫びながら俺を問い詰める。普通の人はにおいとかわかりませんから。それあなただけの特技ですから。


 いかん、いかんぞ、ここで榛名の時のように逃げるにしても何処にも逃げ場は無い。むしろ文美の機嫌を更に損ねて想像を絶する何かをされる気がする。ここは何とかして文美のご機嫌取りをしてこの状況を脱さなくてはいかん。


 しかし………どうやって機嫌を取れというんだ………。最終手段が思いつかないわけでもないが、それだけはやりたくない。フェロモン関係なくヤバい文美にこの手段を使ってしまえば明後日になっても大変なことになるだろう。


 くそっ、他の手が思いつかん。下手な言い訳は余計な状況悪化をもたらす。かといって本当のことを言うとかいっても、そもそも文美が俺にそんなことをしていたなんて知らなかったから何も言えない。


 くっ………どうやらこの場を切り抜けるには最終手段しか無さそうだ……。頼む………今だけでも多少は大人しくなってくれ………!!


 神に祈るような気持ちで俺は文美の腕を掴み引き寄せ、両腕でしっかりと抱きしめた。抱きしめられるとは思っていなかったようで文美は目を白黒させて驚いている。


 文美は何か喋ろうと口を開くが、それを遮って俺が喋る。せっかく奪った主導権、渡してなるものか! このまま言いくるめさせてもらうぞ!


 ミッション2:妹を言いくるめよ!


「文美………今まで済まなかった。俺、お前のことしっかり見てなかった。俺、ずっとお前が俺のことを嫌ってるって思ってた………。謝って済む問題じゃないかもしれない、お前の想いに気づけなかったんだから、許されることじゃないかもしれない。でも………だから………せめて、これからはお前のことをしっかり見てるから。お前が俺のことをどれだけ想っているかを、しっかりと感じるから。だから、今日のことは………今までのことは………許してくれないか?」


 一見すると文美の想いに答えたようにも見えるが致命的な言葉は発していないハズ。明後日になればその点を指摘して知らぬ存ぜぬで突き通してくれるわ!


 口から出まかせで一気に喋り、恐る恐る文美の方を見てみる。文美は瞳に涙を浮かべていた。


 仏の顔に四度目をぶちこんでしまったかと思ったが、その表情には喜色を浮かべているので感極まって泣いたのだろう、俺は勝ったぞ!!


 ミッション2成功!


「そんな………私がお兄ちゃんのことを嫌うなんてあり得ないよ………。でも、そうだよね、私が頑張って気づかれないようにしてたんだから、お兄ちゃんが分からなくてもしょうがないかもしれないね。うん………お兄ちゃんのこと許すよ………でも、ちゃんと私のことを見てよね? 今度は嘘付いちゃ嫌だよ?」

「ああ、わかってる」


 別に文美の想いに答える訳じゃないから嘘つく必要ないもんな。


「これからはお兄ちゃんのこと、全部お世話するからね? 私に全部任せて、お兄ちゃんはずっと私のことを見ててね?」

「………………」

「返事は?」

「お、おう………………」


 だが最後に致命的な言質を取られた気がする。しかし下手に歯向かってはいけない。俺は学んだのだ。


 しかし何というか、榛名といい文美といい、感情の浮き沈みが激しすぎないか? 特に文美はさっきまで不機嫌の極みといった状態だったのに、抱きしめて適当に言いくるめただけで機嫌が直りやがった。


 過剰な行動というのが俺に対する好意から来るものだからだろうか? 好意から来る行動だから俺に対する愛情表現や、俺からの好意とかを優先しているのかもしれない。


 ともあれ何とか最大の窮地は脱出したようだ。よくやった俺。


 だがそのように安心していられたのも束の間、全部お世話とは文字通りの意味だったようで、俺が風呂に入ろうとすると服を脱がせようとし、あまつさえ一緒に風呂に入ろうとしてきた。というか入った。


 抵抗は出来なかった。今下手に抵抗すれば「さっきの言葉は嘘だったのか」と詰め寄られ、またしても窮地に陥るのは必至だ。


 背中を流すぐらいならまあいいかもしれないが、あろうことか俺の下半身まで「お世話」しようとしてきた。


 もっともそんな状況で元気が出るわけも無く、元気のない我が息子に文美は非常に不服そうであった。勃つわけねえだろ! いい加減にしろ!


 これは不味い、非常に不味いぞ、この調子だと飯を食べるのも世話をしてくるだろう。寝ようとすれば一緒に寝ようとするだろう。もし不意に元気になってしまえば喜んでお世話してくるだろう。


 明後日になれば多少状況がマシになる、と信じている俺からすれば絶対に回避したい。せっかく言葉を慎重に選んで説得したというのに一線を越えてしまう。しかも兄妹でという取り返しのつかない事態になぞなってたまるか。


 そこ! 既に取り返しがつかないとか言わない!


 幸いにもまだ寝るまでには時間が多少ある。何か妙案は無いものだろうか。せめて明後日まで文美の攻勢を回避出来る(すべ)は無いだろうか。と頭を捻っていると俺の携帯にメールが来ていることに気づいた。


 そして送信相手の名前を見て思いつく。田中、そう、田中だ。俺の一番の親友、頼れる相棒、そして何よりあいつは普通の性癖の男。俺に対して好意を持っているということも無いから、仮に男に対してもフェロモンが有効であったとしても問題ない。


 事実、一緒に帰ろうという誘いを俺が断った時もあいつは普通だった。もしもあいつが特殊な性癖持ちで、フェロモンが同性にも有効であったならばただではすまなかったはずだ。


 メールの内容は「そういや用事って何だったん?」的な物だったが、「色々あった、説明し辛い、あと助けてほしいからそっちに今日明日泊めて」と返信した。


 最早頼みの綱、最後の希望は田中だけであるため、まだかまだかと返信を待つ。そして待つこと数分、無茶苦茶な頼みなのに返事は快諾。流石相棒、そこに痺れる憧れる。


 こうして根回しを終えた俺は「泊りの約束してたから今から泊りに行く」と文美に伝えた。相手は女なの? 誰なの? 私もついて行くよ? とまたしてもヤバい雰囲気になったが相手は男友達で、お前の心配するようなことは起こりえないし、お前の想いは二人っきりでゆっくりと感じたいから今回は来なくて大丈夫と必死に宥めたところ、幾分胡乱げな表情をしていたがなんとか納得してもらうことに成功した。


 もし女の臭いがついてたら何をするかわからないからね? と釘を刺された。怖い。


 田中と文美の気が変わらないうちにと急いで支度をして田中家へと向かう。こんな貞操の危機がある場所にいられるか! 俺は田中の家へ行くぞ!


 ようやく安心出来ると思いながら田中の家へと到着。到着前にメールをしていたお陰かブザーを鳴らすとすぐに田中は玄関を開けた。


「いらっしゃい雄太! 早く入れよ!」


 妙に機嫌が良くないですかね田中くん。何か良いことでもあったんですか。まあ大したことは無いだろう。気にするほどのことでは無い。


「おう、ゲームでもしながら事情は説明するぞ」


 本来ならば事前に事情を説明するなり会ってすぐにでも説明するなりすべきだろうが一刻も早く気を休めたい俺はそれをしない。


 だが田中は嫌な顔一つせず家へと上げてくれた。理解ある親友がいて俺は嬉しいよ。


 家の中へと上がり一息ついたところで俺の腹が鳴る。そういえば夕飯食べてなかった。安心した途端鳴るとは、何とも現金な体である。田中は今から飯だったらしく、俺に飯を分けてくれた。おお心の友よ!


 腹も膨れて田中の部屋へと向かい、ゲームをしながら軽く事情を説明する。流石に全部言う訳にはいかないからね。仕方ないね。


 如月榛名に呼び出され頼みごとをされたこと、家に帰ってみると学校にカバンを忘れていたことを妹に指摘されて気づき、また、妹の機嫌が非常に悪くてカバンを忘れたこと以外の色々なことで説教されたことを説明した。


 嘘は言っていない。言葉足らずなだけである。


 また、あの馬鹿姉が色々やらかしたせいで身を隠さねばならず、明後日まで匿ってほしくて連泊を頼んだと伝えた。あの姉の噂を知らない人はこの辺には居ないので、田中は納得したあと何やら嬉しそうな顔をして「まあゆっくりしてけよ」と言ってくれた。


 「今から泊まる」としか伝えていないから連泊しても嘘は付いていない。事後承諾で文美にメールを送ったる。




 しかし気になることが一つ。事情を説明している間に田中が俺との距離を詰めているような気がする。


 いや、そんな気がするだけだろう。野郎が野郎に近づいて何が楽しいんだか。今日は予想外の展開が多すぎて神経質になってしまっているようだ。


「でも丁度良かったよ。今家に親が居ないんだ。二人とも一週間は県外にいるみたいでね」

「そりゃよかった。居たらお前から説得するの大変だったろ? 急な頼みだったし」

「それもそうだけど………」

「どした?」


 急に口ごもり顔を赤らめる田中に嫌な予感が走る。


 いや、待て、コイツはノンケだ。コイツがノンケである限りフェロモンの影響は出ないはずである。


 しかし顔を赤らめながら下を向き、こちらをチラチラと伺う様子はさながら恋する乙女だ。


 違う、だから違うって、いくらコイツが美少女な顔をしていても歴とした男で、俺に対して友情は感じていても、好意を抱くなどということはあり得ない。


 先程考えたように放課後の時点でさえコイツにフェロモンは影響は見られなかった。もし万が一にもまかり間違って影響を与えていたならば文美や榛名のように朝の時点で何らかのアクションを起こしていただろう。


 コイツはフェロモンの影響下にはいない。冷静に考えればそうなのだが、今日はやけに絶好調な第六感が何かを囁く。


 頬が引き攣るのを感じながら田中の次の言葉を待つ。


 そして田中が口を開いた。




「だって………家に二人きりなんだよ?」









 ………Holy Shit !

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