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JSDF異世界戦記  作者: やぶ
状況開始
6/8

3話

帝国軍団が平原を埋め尽くすように陣を張っていた。歩兵の中に投石器が地面より生えるように組み上がっていく。そして、軍団の両翼に平たい台車に鎮座する2騎のワイバーンが観えた。

龍騎兵が跨がる。綴じていた翼を広げる。数回、羽ばたかせると空に舞がっていった。

「遅かった…」ボドワンは手綱を握り締め直し、馬の横腹に蹴りを入れ森の中を駆け入る。

帝国軍団の襲来を告げるのは無理だったかもしれないが、襲撃の真意を伝えるのは遅く無いはずなのだ。

戦場を大きく迂回した。少数の歩兵たちが戦って入るのが遠くに観えた。砦。古い砦が観えた。一瞬、光ったような気がしたがそのまま森の中に駆け込む。歩兵が移動しているのが観え、そして、城下町と城から阻塞気球が登るが観えた。

城下町を走り抜ける。橋を護る10人隊の歩兵が見てた。

「陛下に。陛下にお知らせが。橋を降ろして下さい。私はアベル騎馬隊のボドワン。陛下にお知らせがあります」




「先程は部下が失礼をしました。自分が現場指揮官です。氏名と階級はご容赦ください」

「大滝2等書記官です。あなた達の事情は理解しております。救出していただきありがとうございます」

「いえ、任務ですから」

「指揮官、あそこの奥に女性達が…」厨房を指差した大滝の表情が曇る。

「解っております。医務官と女性自衛官を手配済みです。他に医務官を必要とされる方々はいませんか」

「怪我人はいません。疾患をもつ方と栄養が不足ぐらいかと。ここからの移動は何時になりますか。」

「制空権の確保と散らばった人質の救出が完了してからになります。邦人の方々は我々がお連れしますのでいつでも移動出来るように準備だけお願いします」

「わかりました」

大滝は一礼をすると人質たちが集まる所に向かった。小走りに歩く大滝の左手がテーブルの上の何かを掴み取るのを白石は見た。


「RPG!」竹宮1等陸曹が叫ぶ。

遮蔽物として使っていたレクサスに向かって弾頭が飛来する。隊員たちは近街路樹の植え込みに飛び込む。爆発するレクサス。

「2時の方向、制圧射撃」

小林3尉の第2小隊が受け持つエリア、高層ビル群を抜ける大通りは混戦になりだしていた。敵兵の群れは巧妙に建物に隠れては射撃を繰り返し、徐々に前線を押し上げてくる。

ブラックホークがミニガンで援護射撃をするがRPGや携帯式対空ミサイルがヘリを近づくのを拒み、あまり効率よく射撃ができない。

ただ、セレブ向けの宿泊施設と商業施設の地区だけあって、もともと定住の民間人はあまり居らず、海外からの渡航者、現地従業員たちは人質として捕らわれ、建物内に監禁されているので外にいるのは敵だけで民間人を誤射する恐れが少ないのが唯一の救いであった。

榴弾が近くで小林の近くで炸裂した。イヤーマフが爆発音を遮断する

「負傷者は」

「なぁぁし」

「ヒトマル、ヒトマル。こちらヒトフタ、増援はまだか。このままでは保たない」

「落ち着け。米軍の増援は飛来中だ、ヒトヨンから増援とCASを送る」

「!」冷酷な言い方に一瞬、小林は怒りが込み上げた。



城爺たちが城壁の上で地下牢から運び入れたバリスタを組み上げる。

「ちょうど良い時じゃたの」橋で居眠りをしていた城爺、ルソ・トーヤックは平原の辺りで羽ばたき空に登る2騎のワイバーンを眺めながら言った。

「眺めておらんと最後の調整をせんか。お主が、せぬ事に使い物にはならんのじゃぞ」ルソと組むビルド・バルドが弦を張りながら言った。

「すまぬ、すまぬ。久々の戦じゃで、ついな」

木箱に登り、具合を確かめる。「良い具合しじゃ。銛をよこせ」

ビルドは銛を木箱から出しバリスタの台に載せた。

阻塞気球の隙間を2騎のワイバーンが滑空する。ルソの両隣りのバリスタから銛が瓶撃ちされる。身体を捻じり避けるワイバーン。そして、火の玉を吐くワイバーン。翼を羽ばたかせ、一瞬、その場に留まる。ルソはバリスタの引金を引いた。硬い鱗が銛を弾く。

ビルドは手にした銛を発射台に載せた。ルソは弓に手を掛け身体を倒れ込むようしてに引いた。狙いを定める。ワイバーンは上空に登っていく。

「腕が鈍ったの。龍殺し」

久々に字名を呼ばれたルソはにやりと笑った。



闇が身体にのしかかる。ダットサイトが小刻みに震える。畠中はゆっくりと息を吸い、留めた。一筋の汗がこめかみから流れた。敵兵の頭部に合わせたダットサイドの震えとが止まる。 トリガーを絞り込む。素早く、右にマズルを振る。トリプルタップでトリガーを絞る。

山田が突入の合図をした。

8小隊は畠中の後ろ、家屋の影から音も無く、まるでその場に湧き出るよう現れた。建物の影から影に進み30メートル先の倉庫のような巨大な建物内に進む。畠中は中に突入をした班を掩護する為に建物正面に取り付いた。

外周に目を向ける。冷静だった。

もっと劇的なショックが有るかと想っていた。初めての実戦という緊張とアドレナリンが和らげていると想う。終わった後でショックに狂えば良い。只、今は掩護の為に外を見張るのが自分に与えられた責務を全うするのが重要なのだ。

建物内から床に落ちた数発の薬莢の音が聴こえた。

グローブの中で汗でジワリと掌が濡れいた。グリップを握り直し外周部の警戒を始めた。


「Choose between death and shame」宮崎はマズルを敵兵の頭部に向けて静かにいった。

敵兵は小刻みに震え、建物の影に振り向いた。ピタリと銃口が向けられいた。K2アサルトライフルをゆっくりと地面置くと両手を上げながら地面に腹這いになった。

「good 」宮崎は敵兵に近づくとタイラップコードで縛り上げる。建物の影に引きずり込むと目標の屋敷を見上げた。



ベルンハルトは小高い丘にいた。湖畔に浮かぶ城を眺める。

重い灰色の雲の切れ目から射し込んだ一条の陽の光を浴びた城が白く輝いていた。

平原は引き出された馬防柵の後ろに歩兵部隊が連なり。両翼に騎馬隊が構えていた。

「美しい城だ」馬上のベルンハルトは呟くと1つ笑みを浮かべた。

阻塞凧の群れも城下町に上がり、龍騎兵はたやすく近づく事をもままならない。

そして、両翼に陣取る騎馬隊の紋章旗を観る。

「ほう。共和国は我らを勇猛な騎馬隊で歓迎してくれるようだ。アベルがいないので残念ではあったが」さも嬉しそうに笑みを浮かべた。

「御館様。まさか単騎で向かうおつもりではございませんな」隣の馬上のブットシュテットはベルンハルトに兜を渡すと自身も兜を被った。

「先の、あの騎士の見事な戦ぶりに血が騒いだ。私も1人の騎士だと思い出したよ。一騎で戦いたいと思うが。今ではそれはかなわない思いだな。伝令」兜を被りながら伝令役の騎馬兵を呼んだ。

「前列に大盾。後ろに弓兵。投石機は騎兵の前進と共に打ち出せと伝えよ」

2騎の騎馬兵は丘を駆け下る。

城を照らしていた光が消えた。空は雲に覆われる。山脈のには雷鳴が轟く。

ベルンハルトは剣を抜き頭上に掲げる。

角笛が雄々しい音を鳴らす。

前方の弓兵たちが矢を打ち上げた。矢の豪雨が共和国の歩兵に降り注ぐ。

共和国側からも矢が放たれる。両翼の共和国の騎馬隊が雄叫びを挙げ突進をしてきた。

「騎馬、進め」

合図の角笛が響き前方の騎馬隊が駆ける。投石機が大石を打ち出し始めた。共和国の歩兵たちが混乱をし陣形を崩し始めた。

数が違い過ぎる。そして技量。

共和国は野盗、怪異から身を守る戦力しか保持をしていないのは目に見えいた。

一瞬、この戦が虚しいものに思えた。

騎馬が草原でぶつかる。

3方向より帝国騎馬団に共和国の騎馬隊が食いつく。

両翼の騎馬隊にベルンハルトは感嘆した呻きを漏らした。あの単騎で迫ってきた騎士と対を成すように動く騎馬隊に。「世に知られてはいない者が居る。これだから戦というのは」深く被った兜の中でほくそ笑んだ。


窓のステンドガラスに風が雨を叩きつける音だけが響く謁見の間は悲痛な面持ちで知らせを述べたボトワンも今は下り、玉座に座るアベリックと側に立つオクタヴィアンしかいない。

青白い素肌を紅くしたアベリックは肘掛けを握る両手は小刻みに震えさせいた。

「力を見せつけるだけではありませんでしたな」

「私も戦場に出ます」

「陛下、何をおっしゃる。国の長が戦場に立つなど他の国も無いことですぞ」

「私も民の命を預かる1人の騎士です。力はありませんがね。それに、笑っていただいて結構です、3人の子を想う親ですから」

「もしもの時、どうなさるおつもりですか。共和国は陛下あっての国ですぞ」

「私など末裔というだけです。なんの力がありましょう。国は民が居てこそ国です。その時は貴殿に共和国をお任せいたします。」

「陛下…」

オクタヴィアンはうつむき、内心で笑った。

「国軍長に伝えましょう。陛下、ご武運を」一礼をすると扉に向かって行った。

アベリックは頷くと玉座に深く座り直した。

「いますか」

「御身の側に」

後ろのカーテンが揺れた。応えた声は女性だった。

「妹君、でしたね。貴女にお願いが。クローディアを、片時も離れずクローディアを護ってください」

「さすれば、陛下、御身は」

「私の身は国軍兵たちが護ってくれますし一応は騎士ですから」自笑をした。

「それと兄君を、そうでした。貴方たち兄妹の恩名をそろそろ教えください」

「兄さまと私はあの日に死んだと想っております。そんな者に名乗る名はありません。我が兄妹、全ては陛下のために」

アベリックは虚空を観るように部屋を観た。表情が強張る。

「よろしい。私の手足として、ただ独り私に尽くし貰います。この名とともに我が命を伝えよう。汝、アガフィヤよ、我が娘クローディアの身の盾となり終身その身を護りぬけ」

カーテンの切れ目から緑色の塊がアベリックの前に飛び降りて着た。

ハーフゴブリン。アガフィアは片膝を着く。

「ハ!」

アガフィアは両手の鉄爪を遣い壁に取り付くと天井裏へと駆け登っていった。

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