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恋愛小説  作者: 阪上克利
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『ぼーーーっとですか・・・。』

『そう。ぼーーーっといろいろ考えてみるんですよ。』

『へええ。』

何を考えているんだろう、と靖男は思い里奈の横顔を見た。

里奈の顔は、どきっとするぐらいキラキラとまぶしい笑顔だった。

無言を決め込もうとしていた割りに、靖男は饒舌になっているような気がした。どうして話すのが苦手な自分がこんなにも話せるのかが不思議だった。

映画館にはすぐに着いたが、ちょうど昼食時だったので、ランチをとってから見ることにした。

里奈の持っていた前売り券の映画は『ユー・ガット・メール』というものだった。

ランチの店に入って前売り券を受け取った靖男は『あれ?』とつぶやいた。

『どうかしました??』

『いや・・・この女優さん・・・。』

靖男は映画にでていた外人女優の別の映画を克利と見たことがあったのだ。

そのときは克利も靖男もジャッキーチェンの『ラッシュアワー』を見るつもりだったのだが、あいにく券が売り切れでその映画にしたのだった。

確か、恋愛物の映画だったような気がする・・・。

『『めぐり合えたら』じゃなかったですか?いい映画ですよね。』

『男二人で見るもんじゃないですよ。しかも周りはカップルばかりだったし。』

『でもそれで覚えてたんですよね。メグ・ライアンのこと。』

『そうですね。こっちの人も一緒ですね。』

『トム・ハンクスですよ。』

『すごいですね。よく知ってますね。ボクなんか外人はみんな同じ顔に見えちまうのに・・・。』

『そんなことないじゃないですか。保高さん、ちゃんとメグ・ライアン覚えてたし。』

『あ、そうか・・・。』

昼食はパスタの店に入った。

もちろんおしゃれな店なんか靖男は知らない。

吉野家でも行こうかな・・・と思っていたら、里奈がいい店があるから、といって連れてきてくれたのだ。

そこは女性の好みそうな店で、どこかお洒落なたたずまいの店だった。

でてきたパスタも、いきなりメインのパスタが出ることなく、サラダがでてきて、ちょっとした前菜が出てきて、そしてメインのパスタが出てきて、最後に、デザートが来る・・・というコースになっていた。

『保高さん。』

メインのパスタを食べながら、里奈はちょっといたずらっぽく笑いながら言った。

『ランチ、吉野家にしようとしてたでしょ?』

『え?!なんで分かった・・・んですか?』

『わかりますよ~。女の第6感ってやつです(^^)』

第6感・・・。

靖男は一瞬、克利の言葉を思い出した。

『もしも、もしもだよ。保高くんがデートするならどこに飯に行く?』

そう聞かれてすぐさま『吉野家』か『COCO壱』と答えた記憶がある。

もしかしたら里奈は克利から何か聞いているのかもしれない。

『男の人って吉野家好きですよね。』

『そうですね。安くて美味いのが魅力です。』

するとまた里奈はいたずらな笑顔で小声で言った。

『実は・・・わたしも好きなんです。吉野家。』

『え?そうなんですか?でもなんで?』

『せっかく男の人とデートしてるんだからお洒落なところのほうがいいかな~って思って柄にもないことしちゃいました。』

その割には里奈にはこのレストランは似合っていると靖男は思った。

『お昼はいつも何食べるんですか?』

『ボクはカレーが多いですね。』

『カレーかあ。いいなあ・・・。あたしのお昼はなんと吉野家が多いんです(^^)』

『え??』

『ビックリしました?』

『ええ、そりゃあ・・・だって・・・。』

『うそじゃないですよ。うちのお店の横・・・吉野家あるじゃないですか。仕事柄ゆっくりご飯というわけにもいかないから多いんですよ。吉野家で食べること。』

『ああ、そっか。』

意外な感じだった。

里奈には今いるようなお洒落なレストランが誰よりも似合う・・・と靖男は思った。

デザートが運ばれてきて、食後のコーヒーを飲みながら、靖男は里奈を少し観察してみた。

というより、今までまともに目さえあわせたことがないような気がする。

里奈は美人ではないが、透き通るような白い肌とパッチリとした大きな瞳が印象的な顔をしていた。

てゆうか、そんなことは釣具屋でみたときから分かっていたはずなのだが、意識してみたのはこれが初めてだった。

『あんまりまじまじと見ないで下さいよ。顔がでかいのがばれちゃうじゃない。』

『な!!そ・・・そんなことは・・・。』

靖男は真っ赤になって何か言ったが、もう何言ってるか自分でも分からなくなってしまっていた。

『冗談ですよ。保高さんってホントに真面目な人なんですね。』

『え?あ、まあ、うん、なんだな。それだけが売りです。』

『そんなことないですよ(^^)』

『そうですか?』

『そうです。自信もって大丈夫です。』

『はあ。』

里奈は靖男のどっちつかずの反応にはとくになにも触れずに時計をみて言った。

『そろそろ時間ですね。行きましょう。』

(つづく)


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