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半年間の恋

作者: 湯島結代

恋愛は難しいです…。

「先生、娘と…お付き合いしてくれませんか?」

俺が受け持つ患者の母親に、そう言われた。医者になってこんな事を言われたのは初めてだ。

「…俺でいいんですか?」

「先生はカッコいいですし、娘も気にいると思います」

たしかこの人の娘、余命あと半年だったな。

娘のために…か。

「まぁ、患者さんに希望を持たせるのは医者の仕事ですからね。いいですよ。娘さんとお付き合いしましょう」

「本当ですか?」

「ええ、娘さんも喜ぶでしょう」

「ありがとうございます!」

うわ…凄い喜んでる。演技で付き合うって教えた方がよかったかな?

「では、さっそく娘に告白してきてください!」








「あっ、先生。何か用ですか?」

…演技でも告白するのは、なんか恥ずかしいな。

「…はっきり言う。俺と付き合ってくれないか?」

「…………えっ?私とですか?」

「他に誰がいるんだよ」

「あっ…その……私でよければ」

「ありがとう」

「こ、こちらこそ…」




こうして、俺は彼女と付き合うことになった。




「……海、行ってみたいな…」

「行くか?」

「えっ、いや、ただの独り言ですから」

「でも行きたいんだろ?」

「…………はい」

「よし、今から行こう」

「今からですか!?」

「外出届出してくる」

彼女が海に行きたいと言えば、海に連れて行った。






「おい、前に見たいと言っていた映画レンタルしたぞ」

「えっ、あっ、ありがとうございます」

彼女が見たいと言った映画はツ○ヤで借りてきた。




「先生、外に何があるんですか?」

「見てみろ!猫を連れて来たぞ!」

「ニャー」

「…かわいい」

癒しになるかと思い、動物も連れて来た。





「先生、いつもありがとうございます。これ…よければ食べてください」

「おお、弁当か…」

「迷惑でしたか?」

「いや、嬉しいよ。ありがとう」

彼女から、お礼のプレゼントをもらう時もあった。







彼女と過ごす日々は、以外にも楽しく、演技を忘れて楽しむ時もある。





しかし、時は止まらず進むもの。



あっと言う間に半年が過ぎ、最後の時がやってきた。





「…………先生…私と付き合ってくれて………ありがとう」

「それは俺のセリフだよ。ありがとう」

「…………先生の全部が……好き」

「俺も君の全てが好きだよ」

「…………演技でも嬉しかった」

「!」

「…………先生、さよなら。次は…健康な女の子に…生まれて……来るから……今度は本当の恋……」

「ああ、次こそ本当の恋をしよう」






彼女は、泣きながら笑って、息を引き取った。







「先生、娘と付き合っていただきありがとうございました」

「いえ、こちらこそ、娘さんとお付き合いできて楽しかったです」












楽しかった……これは俺の本心だろうか?

「…………あれ?」

気が付くと、俺は涙を流していた。

「ちょっ、なんだこれ?」

医者である俺は、死をたくさん見てきた、だから、患者が1人死んだくらい平気なはずなのに…。

「……止まらない…」




あぁ…俺は……いつの間にか本気で恋をしていたのか…。







俺は涙と共に溢れ出る恋心を止めることは出来ず…子供のように泣いてしまった。























「……………気付くのが遅くてごめん。……好きだったよ」











俺はこの半年間の恋を、一生忘れないだろう…。

誤字脱字ありましたら、教えてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「お付き合いしてあげて」といわれて「いいですよ」と笑顔で答える医者が軽率すぎではないかと思いましたが、あくまで「演技」ということを踏まえれば、逆に大人の汚いというか、不純な心を表せていたと…
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