↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

納得いかん!!

作者: 山田 ソラ
掲載日:2026/06/14

 AI判定70%


「なんでやねん」


 俺は画面を見ながら唸った。


 AI執筆チェッカーの結果。【人間執筆率70%、AI生成率30%】。


 いや、全部俺が書いとるんやけど。誤字チェックでAIに通しただけで、文章は一字一句、俺が書いた。なのに30%は「AIっぽい」と判定される。


 納得いかんから、知り合いの編集者にチャットで聞いてみた。


「あー、それよくある話ですよ」と編集者は言った。「文章が整いすぎてるんだと思います」


「整いすぎ?」


「起承転結がきれいすぎる、説明が丁寧すぎる、伏線の張り方が論理的すぎる。そういう文章、AIは得意なんです。なので人間が書いても『AIっぽい』判定が出る」


「じゃあ、めちゃくちゃに書いたらどうなるんや」


「人間率上がりますよ。誤字も多くて、文体もブレてて、説明不足で、論理が飛んでて。そういうのはAIが今のところ苦手なんで」


 俺はしばらく黙った。


「……つまり、整った文章を書くほど機械に近づいて、めちゃくちゃに書くほど人間らしくなるってことか」


「まあ、そうとも言えますね」


 俺は腕を組んで、画面の前で考え込んだ。


 じゃあ仮に、めちゃくちゃに書いたとする。


 文体がブレる。一文目は丁寧語、二文目は急にタメ口。説明を全部省く。【その後、彼は驚いた】何にどう驚いたかは書かない。読者が想像してくれ。伏線? 張らない。回収もしない。後半でいきなり新キャラが出てきて、特に意味もなく退場する。


 たしかにAI判定は「人間率90%」とか出るやろう。


 でも、それを読んだ人間はどう思うか。

「……何が言いたいんやこれ」やろうな。

「内容、無いよう」やん。


 俺はため息をついた。


 昔、ある作家が言っていた言葉を思い出した。「文章が下手なことと、文章が雑なことは違う」。


 今のAI判定基準で言えば、「下手」が「人間らしい」になって、「丁寧」が「機械らしい」になる。


 これ、本末転倒やないか。


 俺は本来、十年以上小説を書いてきた。最初は本当に下手やった。説明過剰で、文章もガタガタで、伏線も適当やった。それを少しずつ直して、整えて、今の文章になった。


 その「整えた結果」が、今は「AIっぽい」と言われる。


 努力して上手くなった結果が、機械に近いと判定される世界。


 なんか、おかしくないか。


 俺はスマホを置いて、コーヒーを飲んだ。


 考えれば考えるほど、ややこしい話やった。


 AIに小説を書かせると、確かに「綺麗すぎる」文章が出てくる。整いすぎて、逆に味がない。プロットは丁寧やけど、人間くさい矛盾や歪みがない。


 でも一方で、人間が長年かけて「丁寧に書く技術」を磨いてきた結果も、同じ「綺麗すぎる」に分類される。


 判定機は、原因の違いを見ていない。結果の形だけを見ている。


 手作りのパンも、機械で作ったパンも、どっちも丸くて綺麗な形だったら「機械製」と判定される、みたいな話だ。


「結局どうすればええんや」


 俺は誰に向けて言うでもなく、独り言を呟いた。


 答えは、たぶんこうやろう。

 AI判定なんか、気にせんでいい。


 読者は判定パーセンテージを読むわけじゃない。物語を読むんや。


 整った文章でも、その奥に書き手の体温があれば、それは人間の文章や。AIには書けない「この一文を選んだ理由」が、たとえ説明されてなくても、文章の隙間に残る。判定機にはそれが見えない。見えるのは表面の整い方だけや。


 逆にめちゃくちゃに書いて「人間率90%」を取っても、内容が空っぽなら、読者は途中で読むのをやめる。判定機は満足するけど、人間は満足しない。


 どっちを向いて書くんや、という話に行き着く。


 判定機を満足させたいのか。

 読者を満足させたいのか。


 俺は画面を閉じて、原稿ファイルを開いた。


 70%人間、30%AI。

 別にいいやないか、と思った。


 誤字チェックで通したのも、整った文章を書く技術を磨いてきたのも、全部、俺の選択や。それを「機械っぽい」と言われたところで、書いたのは俺やし、選んだのも俺や。


 文章が下手になることで「人間らしさ」を証明する必要なんか、どこにもない。


 俺はキーボードに手を置いた。

 次の一文を、また丁寧に書き始めた。

 AIっぽいと言われても、知らんわ。

 これは、俺が書いた話や。


 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 誰がなんと言おうと真実を知るのは本人のみ。(苦笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。