前世で俺をいじめてたやつが同じ世界に転生してきたので、この世界で習得した「魔法」で見返します
一年前、僕――飯山修はこの世界に転生してきた。
うん。小説だったらかっこいい書き出しだ。
でも、現実はそうかっこよくもない。
現世で死んだから転生した。それは間違いない。
ただ、僕はトラックに轢かれたわけでも、通り魔に刺されたわけでも、この世界に必要とされて召喚されたわけでもない。
一年前、僕は自殺した。十五歳だった。
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きっかけは、いじめだった。
クラスメイトだった後堂ってやつが…
いや、よそう。
過去のいじめを思い出しても誰も得しない。
転生してきたとき、僕は元の世界の姿で、知らない街にいた。
この世界では、何年かに一度、転生者が来ることがあるらしく、慣れた様子で僕は街の「冒険者ギルド」に引き取られた。
ここの人たちは僕に良くしてくれた。
仕事と住む場所を与えてくれた。
僕がどれだけ助かったことか。
そうやって文字通り「第二の人生」を歩み始めて一年。
「よお修。久しぶりじゃないか、こんなところで会うなんてな」
「………………後堂」
あいつがやってきた。
唐突に。
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「唐突で悪いけどさ――ここどこ?」
もう二度と会うことはないと思っていたのに……。
もうあの日々とは別れを告げられたと思ったのに……。
新しい生活にも慣れてきた頃なのに……。
ああ……またあの頃に逆戻りか……。
――なんて微塵も思っていない。
確かにいじめの最中は死ぬほどつらかった。
それを乗り越えられる人たちもいるんだろうけど、僕には到底無理な話だ。
耐えきれなかった。
だから死を選んだ。
でも、1年間この街で暮らす中で、たくさんのことがあった。
初めて魔法を使ったこと。
初めてダンジョンに潜ったこと。
初めて稼いだお金。
刺激と発見に満ちた日々だった。
なんなら自分の自殺の原因になった男の顔も忘れてたくらいだ。
返事に謎に間が空いたのはただ単に名前を忘れてただけだ。
1年で人の顔を忘れる僕は薄情者か?
とにかく、恐怖とか絶望とかにはお世話にならない。
残念だったな後堂。
「薄々気がついてるんじゃないの?」
「ああ……地獄か」
んなわけねーだろ。
勝手に地獄送りにするな。
「『これが噂の異世界転生?』とか思わないの……?」
「うーん、そうとも言うね」
そうとも言わんだろ。
コントか。
「ってことはさては後堂……死んだな?」
「あー……知らん。気がついたらここにいた」
――嘘だな。
顔がニヤついてるし。
後堂がなんで死んだのかも気になるところだけど、まずは後堂をどうするか……
復讐とかに興味はない。
このままこいつを冒険者ギルドに運んでいけばいいだろう。
「後堂。案内したい場所がある。」
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「ところでさ……俺が死んだあと、どうなった?」
行く途中、僕は後堂に聞いた。
やっぱり、一番気になるのはそこだ。
それもそうだが、僕の一人称がいつの間にか「俺」になってる。
そうか、あれからもう一年か……
「あー。……お前のことなんか、みんなすぐに忘れたよ。
もともと存在感薄かったし。三日間机に花置かれただけ。
で、偉い人たちが『いじめの事実は確認できませんでした』って言って終わり。
みんなで楽しく中学卒業したってわけ」
みんなで……かぁ。
そこに僕は入ってなかったのかなぁ?
許せないなぁ。
僕をさんざん追い詰めたのはキミだよね?
なんで「俺関係ねーし」みたいな顔してるのかな?
さっき、「復讐とかに興味はない」みたいなことを言ったが、取り消す。
後堂。
お前にはここじゃなくて地獄がお似合いだ。
「後堂。……死ね」
地上波には流せないようなNGワードを放ったあと、僕は「魔法」を放った。
「制御術式、上限解放。特級魔術『創世爆炎』!」
……嘘である。
まず、制御術式は勝手に無効化できない。
何のために制御術式があると思ってるんだ。
魔力持ちが勝手に犯罪とか起こさないようにするためだよ。
勝手に外せてたまるか。
さらに、今撃ったのは特級でも魔術でもない。
ただの初級魔法「爆発」だ。詠唱なんていらない。
いやぁ、やっぱり技名ってかっこいいほうがいいじゃん?
一度言ってみたかったんだよね〜。
立ち上る炎。
爆発音。
慌てる後堂。
術式を組んで使用する「魔術」と違い、詠唱がいらないのが「魔法」だ。
当然、威力も低い。
上級魔法とかもあるにはあるが、術式に基づく魔術と違い、魔力をそのまま解放するため、使用者の負担が大きいのだ。
いいところは無詠唱だから失敗しないことかな。
まあでも上級魔法を使うくらいだったら中級魔術を何回か撃ったほうが効率がいいし、上級魔法が使われることはほぼない。
僕もこの一年で見たことがない。
実際、初級魔法である「爆発」なんてほぼ見掛け倒しだ。
攻撃なら他にいくらでもやりようがあるし、ものに対する破壊力もないから、注意を引きたいときくらいにしか使わない。
でも、その効果を知らない者に対しては有効だ。
「ちょっ、修!タイムタイム!」
焦ってんなぁ後堂のやつ。
厨二病展開にできそうだ。
「謝れ後堂!俺が死ぬことになったのはお前のせいだ!お前が俺を殺したんだ!」
自分で言っておいてなんだけど……
肩書きは人を錯覚させるというが…
こうも調子に乗れるのか。
こんなセリフを言えてたら、あの時の僕も自殺まで追い込まれなかっただろう。
「俺のせいじゃねえよ!お前が勝手に死んだせいで噂が広がってだれも話しかけてくれなくなったし!まともに就職もできないし!でもって俺のせいにして被害者面して謝罪の要求かよ!くそったれ!勝手に死んどけ!この……」
うわぁ……。
よくこんな自分に都合のいいように長々と喋れるね。噛まずに。
尊敬するよ。
人生が狂った?
それが嫌だったらあんなことすんなよ。
こっちは人生終わったんだよ。
文字通り。
あ、ちなみに、さっき「爆発」は見掛け倒しって言ったけど、後堂はちゃんと痛みも熱さも感じてるよ?
対抗魔術でかき消すなり結界で防ぐなりどうとでもなるってだけで。
こんなことしていいのかって?
もちろん今僕がやっていることは犯罪だ。
だけど、バレなきゃ犯罪じゃないんだよ?
ここには人通りもないし、爆発音くらいじゃあ誰も見に来ない。
たまに誰かが街の半分消し飛ばしたりするから。
日本じゃ考えられない治安の悪さだ。
それに……被害にあった人はいないしね。
「……『転移』」
長ったらしい詠唱が終わった。
目の前にいた後堂が消える。
なんてことはない。
そこら辺の山の頂上に置き去りにしただけだ。
何やら叫んでてうるさかったしな。
続きは明日にしよう。
死ぬなよ、後堂。
僕が殺すまで……
全国の後堂さんごめんなさい。
鹿児島県に多いらしいですね。




