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67.最後の命令 side-K

そうして啓吾が夜遊びに行かなくなると、大雅からの週一のご飯の誘いの連絡さえなくなった。



なんとなく「やっぱり自分のあの界隈での行動は大雅くんに筒抜けなんだろうな」と察した。

啓吾は時折、自分から連絡しようかなと迷ったりもしたけど、結局はしなかった。

沢山考えた結果、啓吾の行動で大雅の行動が変わったとなると、大雅はこの状態を望んでいるってことなんじゃないかと考えて、そうなると連絡が出来なかった。


─もうすぐ大雅くんの誕生日だな…誕生日のお祝いくらいは許されるかな?


そう考え始めた頃に、大雅から「出てこい」と連絡があったのだ。




VIPルームで賑やかに過ごして1時間くらいがたった。

今日のメンバーの人達はみな年上で、大雅くんの周りにいつもいる人達だから顔見知りで、″ちょうどいい距離感″で啓吾に優しく接してくれる人しなかいなかった。

皆が高校生活の話を聞いていいねぇ、青春だなぁなどと言って楽しそうにしてくれた。


「啓吾、ちょっと付き合え」


と大雅が言って立ち上がったので啓吾がついていく。

店の外で煙草に火を付け出したから何か話しがあるのかなと啓吾は伺うが、大雅は何も言わない。



「大雅くん、俺高校で友達出来たよ。普通の、友達が。」


そう言うと、大雅はそれが聞きたかったんだよというような笑顔で笑った。


「女の子の友達も二人出来た。」と言うと「マジで!?良かったなぁ~。」と関心した顔で言って貰えた。


そして大雅は自分の人差し指にいつもつけているゴツゴツした装飾のシルバーの指輪をおもむろに外すと、それを啓吾に渡してきた。


「お前はさ~、もう二度とここに来るな。」



いつか言われるだろうと思っていた言葉だった。



大雅は、ずっとそばに啓吾を置いていたが、なんの権限も持たせずに、ただ本当に″そばに置いている″だけだったことに啓吾は気付いていた。

大雅の普段暮らしてる、なかなか広いらしいマンションにも行ったことがなかったし、実家の家業の話だって聞かせてもらったことが無い。


大雅の仕事にかかわらせる気がないことも、自分の周りの人間と深く縁づかせようとしてないことも、全部気付いていたのだ。


啓吾が若いから、使えないからとかではない、大雅が使いっ走りにしている人間を見れば自分の方が遥かに能力あるだろうと思う人もいたのだから。

それでも啓吾を使うことは1度もなかった。

気付いていて、そして従っていた。


深く考えるのをやめて、気づかないふりをした。

それが唯一、大雅の近くに居れる正しい立ち振る舞いだと分かっていたから。



「大雅くんさ、初めて会った時、俺に突然喧嘩禁止っていったじゃん。あれ、なんでだったの?」


沢山言いたいことも聞きたいこともあったけど、どれを言っても余計なことにしかならない気がした啓吾は、泣き出しそうになる気持ちをグッと我慢しながら、最後だからずっと気になってたことを聞いてみた。


「お前は喧嘩向いてねーからなぁ」

「俺けっこう強かったのに??」

「弱いとか強いとかの話じゃねーの、お前の喧嘩には何も残らなそうな感じがしたんだよ。」


大雅の言葉は意味がわからなくても自分の中にずっと入ってくる。

今回もなんとなく心当たりがあって啓吾は黙った。


「お前みたいなガキは、普通に学校行って、ダチと健全に遊んで、好きな女頑張って口説くぐらいがちょーどいいの。」


そう言うと、大雅は昔のように大雅の頭をクシャッと触った。

セットしてる髪だろうとおかまいなし、むしろそのセット崩してやるぜくらいの勢いに、変わらぬ大雅らしさを感じて懐かしい気持ちになる。



「もう二度と連絡してくんなよ、破ったらーー」

「泣くまでボコられるのはやだよ」


間髪入れずそう答えたら大雅は嬉しそうにニヤリと笑った。

元気でな~と軽い感じて言うと、大雅は店に向かって歩き出す。


「大雅くん!」思わず啓吾が声を上げると「ん~?」と言い大雅が振り返る。


「ありがとう、今まで…」


守ってくれて。


と言葉にすると泣いてしまいそうだから言えなかったけど、大雅は破顔してじゃーなと言って去っていった。



いつの間にか強く握りしめていた手を開くと、いつも目にしていた馴染みのあるデザインの指輪だけが、掌に残っていた。

長かった戸田編は終了。

守護者から卒業して、啓吾くんはこれからやっと、成長の時です。


次は「夏休みが終わる」です。

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