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65.前途多難 side-K

高校に入ってから大雅がパッタリと遊んでくれなくなった。


いつもの呼び出しもなくなって、自分から誘っても「仕事が忙しー」しか言われない。

週に一回だけご飯に誘ってきて学校はどうだとか聞かれるけど、食事が終わったら解散させられる。


高校生活に集中しろってことなのは理解しているが啓吾は面白くなかった。

ヤケになって、周りの人間からの誘いに応じてみるが酒も会話も今までの対人関係通り、表面をなぞって流れていくだけで、何にも残らなかった。



高校に入る前に、祖父母からの小遣いがたまっていた口座の金でスマートフォンを買い、大雅から預かっていたものを返した。

一人暮らし用の家に引っ越したから、鍵も返して、繋がりが大きく減ってしまったようで少し寂しかったとろこにこの流れだった。


念願の一人暮らしの家も、大雅との関係性が希薄になったせいか、家に一人でいる心もとなさを感じるようになって外に出るようになった。

よく泊まっていたマンションが居心地よかったのは大雅の持ち物だったからだ。あそこにいると、大雅に守られているのと同じだったから安心していたのだと気付いた。



寝不足で学校に行って寝て、帰って少し寝て、夜に家を出て朝まで遊ぶ、そして学校に行くを繰り返してるから学校ではほとんど寝ていて、大雅の言う「友達を作れ」と言う命令も放置してしまっている。

学校もサボるなとは言われたが、朝は必ず行くが昼過ぎに帰ったりはしている。

今のところ文句は言われてないから無断欠席とかしない限りはある程度許容されてるのかな、と啓吾は思った。


そしてその新生活で、祖父母は心配してたのが馬鹿だったと思えるほど、啓吾に干渉してこなかった。

母に聞けば「聡おじさんのとこの和葉ちゃんの少し体が弱いからそっちにかかりっきりになってるんじゃないかしら…でも連絡がある度啓吾くんのことは色々聞かれるわよ」と困ったように言われた。


啓吾は祖父母が長男の元に生まれた孫フィーバーしているという事に暗に気づいて「それは助かる」と心底思った。

現金な人達だ、もう1人の孫、和葉ちゃんが健全に育ったら自分のことは忘れたようにそっちに夢中になるだろう。



新しい高校も前の中学とは違う環境だった。

中学の時とは土地も少し離れてて、大雅くんの威光も届いてないとすれば、また変なのに絡まれちゃうかな?と思っていたが、中学の初期の頃の様に不良に絡まることはない、というか不良がいなかった。

女の子はそれなりに派手な子も見かけるけど、男子生徒は至って普通だ。


─上級生も睨んでこないし、と言うか明らか目を逸らされる。



それについて不思議に思っていたら、入学してすぐに絡んできた別のクラスの女子生徒が、聞いてもないのに自分の評判と悪名を嬉しそうに語ってくれた。


─え、俺そんな風に言われてんの?ヤバくない?概ね事実だけど、そんな恐ろしい感じじゃないんだって!死ぬほど喧嘩してたのも最初の1年だけであとは大雅くんに禁止されてたのになんで?


喧嘩してない期間は″ヤバい筋の人に気に入られて、自分たち世代のワルを仕切ってた″ことになっていた。


─仕切ってない仕切ってない~!!悪の親玉は大雅くんだけだよ~!!!


啓吾は少し泣きそうになる。


─それにこの女の子たちはなんでそんな悪名を素敵なものかのように語るんだろ。悪い男が好きな子って沢山いるけど、すごく趣味が悪いよね。どうせ悪い人好きになるなら大雅くんクラスの人にしないといい事なんてないと思うけどな~。



同級生や上級生の男子が、啓吾が目線を送るとあからさまに目を逸らすのも、担任の教師すら寝てる自分に声をかけてこないのも、心底合点が言ってしまった。


─自分の過去の行いが、これから自分のしたいこと、と言うかしなきゃならないことをこんなに邪魔するなんて知らなかった。


こんなんで高校生活で人と上手くやって行けるんだろうか啓吾は初めて自分の行いを強く後悔した。

だからと言って、大雅と疎遠になった今は反省して改善しよう!なんて前向きな気持ちにもなれなかった。


学校で女の子にやたらと絡まれるのもしんどかった。

いつからか、何故だかも分からないけれど、啓吾は女子に腕とかを触られたりするとゾッとして、不愉快な気持ちになってしまうところがあった。

大雅の周りの人や、浅くても付き合いが長い人達はその辺を理解してるのか、無駄にベタベタされることもないし、最近ではしつこく絡まれることすら全くなかったから、優しく断っても、全然めげずに絡んでくる女子生徒にはほんとうにうんざりしていた。

今まで、どれだけ大雅くんに守られてたんだろう…と感じて一人でため息をついた。



週に一回会える大雅は、きっと自分は毎夜外に出歩いてるのを把握しているはずなのに、食事の時にそれを言って啓吾を責めることはしなかった。

啓吾はもしかしたら怒られるかも、と毎回内心ビビりながらも、大雅の誘いを断るなんてことは考えられなくて食事の場に出向いていた。


別れ際の「学校頑張れよ~」の一言に罪悪感を覚えながら。

全てを見透かした様なその目に少しの脅えを持ちながら。

次は「自分の気持ち」です。

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