63.進路 side-K
中2の夏あたりには鍵をもらったマンションにいりびたり、この頃になると学校も行ったり行かなかったりだ。
なんとなく、久しぶりに家に帰ると、義理の母に心配したと泣かれた。
聞けば父は再婚してから祖父の援助でかなり裕福になったせいか、外に飲みに行くようになって、最近では家にいることも少ないらしい。
─こんな家でこの人は一人なのか。
そう思うと、なんだか同情してしまって、ずっとべそべそと泣かれるのにも困るしと、啓吾は大雅に許可をとって大雅から持たされたスマートフォンの番号とLINEのアカウントを教えた。
LINEは好きに使えと言われたが電話番号は無闇に人に教えるなと言われていた。
義理の母には絶対に父や祖父母に教えるなと念を押しておく、
義理の母と少しだけ向き合うような姿勢になれたのは、大雅と出会って精神的に安定して余裕が出来たからこそできた行動だったが啓吾にその自覚はなかった。
定期的にくる生存確認の連絡には普通に返して、確実に父親は帰ってこない日に家に帰ってきてと願われた時に暇だったら顔を出す、そんな生活に変化していた。
─別にこの人のこと、嫌いとかじゃないしね。
前までは自分を腫れ物みたいに触るのがもどかしかった気もするけど、実の息子でもないのにずっと心配して、10近く年の離れたあんな父親の妻でいるってたいがいお人好しだ。
父と結婚することで義理の母の実家が祖父母から何かしらの支援を受けてるとは祖母からきいたことがあるが、父にも祖父母にも逆らわず低頭し、この人の人生はそれでいいのか?とこっちが思うくらいこの家の犠牲になっている。
中学3年になった時大雅に「お前進路とかどーすんの?」と聞かれて、何も考えてなかった啓吾は「今もあんま学校行ってないし家出たいから適当に働くのかな~?」と答えたら、めちゃくちゃしかめっ面をされて真剣に「進路はちゃんとしっかり考えろ」と怒られた。
─こんだけ破天荒な人が、そんなまともな事人に言うのってどうなの?
とつっこみたくもなったが、からかわれたりすることはあっても真面目に怒られたことは一度もなかったから、すぐ「分かった」と答えると「よし」とまた普通に戻ってくれたけど内心では怒られたことに衝撃を受けていたので真剣に考え込んだ。
でも特にやりたいこともない啓吾に進路を決めることは難しい。
今みたいに父親を避けるように家に帰るのもなんだかなと思っていたし、大雅から鍵をかりてるマンションに寝泊まりしていたがずっと頼りっぱなしになるのって駄目なのかな?とも思うし、何より「今は使ってない」と言われてるので突然使うから鍵返せと言われる日が来るかもしれないと思っていて、″自分で働いて部屋を借りてちゃんとそこに住みたいな″と自立心みたいな物が少し芽生えてしまっていた。
だからどうやって高卒働くことを大雅に納得してもらうかという方向で考えることにした。
実家で過ごしていたら母親にも「進路はどうするの?」と遠慮がちに聞かれた、祖父母から介入があったらしく啓吾はうんざりした気持ちで「今のとこしたいこともないし、高校行かずに働く感じかな~?ジジイ達には適当に言っといてよ。」と答えた。
母はそのままそれを祖父に伝えてしまったらしく、勿論祖父母は激昂した。
後日頼むから帰ってきてくれと言われ家に帰ると祖父母がリビングで待ち構えていた。
─も~母さん勘弁してよ、いや、ジジイ達に対して立場弱いのは察してるけどさ~。
祖父は高校行かずに働いてくなんて言語道断!そんなことは絶対に許さん!とのことで、「でも家を出たいし」と言ったら、拒絶反応がさらに強くなり、今度は祖母が「亮子さん、あなたがついていながら!」と母を責め出した。
─ほんとに勘弁してくれよ。
ただ啓吾も祖父母の言動にどう対応すればいいのか分からなかった頃の自分では無い、やりたいことも無い自分が高校なんか言っても意味が無い、母さんのことは好きだけど父親とどうしても相容れない、と父親が自分の幼い頃にした仕打ちも軽くだけど自分の言葉で伝えて、父親が帰ってくるこの家にいるくらいなら早く独り立ちしたい。と伝えた。
つい大嫌いな父親と比較してしまったおかげで母さんは好きだなんて言ってしまったからか、母は泣き出した。
「あの馬鹿息子は…!」
「偉そうに啖呵を切って絶縁したくせに妻に逃げられたあげく子供1人健全に育てられん!」
「それでも教育者か!!」
と祖父は怒り心頭の様子だったが、祖母に宥められてやっと落ち着くと、少し考えて条件を出てきた。
高校は祖父が校長を務める学校に通いながらしたいことをゆっくり探すこと。
学校の近くに家を借りて仕送りもしてやるからそこに住むこと。
学校はサボらずちゃんと通うこと。
そして話の流れで母が心配だからと週に1度以上は絶対様子を見る来ることになった。
─またこの人はいらない手間を自分から抱えに行って。
と呆れたが母は嬉しそうだった。
祖父母が押しかけてくるよりマシか、啓吾はそう思った。
学校の近くの家を借りるということは必然的に祖父母の家も今より少し近くなって、それが何となく嫌だったが、悪い条件では無いし、大雅にしっかり考えろ、と言われたってことは高校行かずに働くコースは大雅的にはナシなんだろうと理解していた啓吾はひとまずその案に乗ることにした。
大雅に伝えたら「お~悪くないじゃん。」と言って貰えた後に「マンションに仕送り…お前ほんとボンボンすぎ」と笑ってからかわれた。
高校に入るとサボるのを禁止されていて、きっとサボったら仕送りとか生活に影響が出るのだろうと予想出来た。
良く良く考えたら祖父母がさらに干渉してくるのでは…と気付きあの案に乗ったの失敗だったかな…となるが乗ってしまったものは仕方ないかと切り替える。
大雅と今みたいに遊べなくなるのかな…と頭によぎったが、啓吾は考えるのをやめてなんとかなるか~と問題を先送りにした。
大雅との関係性に夢中になることで、反抗期が落ち着いた啓吾にとって義理母親は自分を心配してくれる存在として好意を持つつつ、″弱く″″守るべき″″女の人″でもあります。
次は「啓吾の興味と命令」です。




