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55.お祭り①

早いもので8月も後半に入って、夏休みも残りわずかとなってしまった。


今日は地元の納涼祭がある日だ。

街にある少し大きな神社が中心で、参道にズラリと出店が並んでいる、けっこう規模の大きめなお祭りだ。


甚平に着替えて家を出る。

中学の時に着ていた甚平が普通に着れちゃうのが少し切ないが、成長期はこれからだからと自分を納得させた。

僕が紺地に白で縞の入った甚平で、戸田は暗いグレーの無地のものだ、両肩に編み編みしたワンポイントがある。


─もしかしたら柄が悪い感じになるかと思ったけど…やっぱりイケメンはなんでも似合うなぁ。



僕は浅葱さんと野崎さんの浴衣姿にワクワクしながら戸田と駅へ向かう。


ラブコメ要素はないと断言はしていても、やはり可愛らしい女子のハレの日の装いは楽しみになってしまうのが健全な男子高校生の反応だと思う。


─僕の好みはこう、ぽっちゃりした子だけど、やっぱり可愛い女の子達を見て何も思わないの無理だ。でも友達をその瞬間だけ異性として可愛く思うのはもしかして不誠実なのだろうか?


考え出したら宇宙にたどり着きそうな思考の沼からの手招きをなんとか振り払ったところで、駅に着く。



駅はお祭りがあるせいかいつもより人が多く、浴衣姿も沢山見かけるようになった。

駅を抜けて、商店街に入り、野崎さんの家に向かうと、もうすでに家の前に二人はいた。


浅葱さんは薄紫に白の菊柄で、髪の毛は高い位置でお団子にされていて和風な髪飾りがついている。

いつもよりしっかりめに化粧されて、なんか迫力美人って感じだが、表情はいつも通り抜けた感じなのでそこに浅葱さんらしさを感じる。

野崎さんは白地に大きな椿の絵が入ったレトロな感じの浴衣で、いつもはおろしてる肩までのふわるわした髪の毛も今日は簪で綺麗にまとめていて、大人っぽいと言うか色っぽい。


─浴衣女子の破壊力すごい!ほんと!漫画みたいだ!!



「うわー!2人ともめちゃくちゃ可愛い~!」


さすが戸田だ。

褒めに躊躇がない。

なんと言うか女子が女子を褒めてる時の自然なテンションなの凄い。

自分も褒めねば!なんとか言わねば!頭の中でこんだけキモく褒めてるんだから言葉にしろ!

と頑張った結果「うん、似合ってるね。」という言葉だけはひねり出せた。


「ふふ、嬉しい。頑張って着たかいあったね」


野崎さんが愛らしい笑顔でそう言うと浅葱さんは頷いた。

「二人し甚平似合ってるね」と言われお世辞でも嬉しい。

自分が幸せになることで、やはり人を褒めることは大事なんだなと実感する。


祭りへ向かう道すがら、なんと浴衣の着付けは野崎さんがしたと聞いた。


「おばあちゃんが日舞の先生なんだ。着物の着付けも出来るから、浴衣は簡単だよ~。」


浅葱さんの浴衣も、浴衣の小物も全部野崎さんのを貸したらしい。

受験のために日本舞踊は辞めたけど、今もたまにイベントごとのお手伝いはしているとの話だ。


─日本舞踊を踊る野崎さんは美しいだろうなぁ…あぁ、そういう経験があるから、人の視線を集めるのが上手なのかも。



そんな風に考えていたら大きな鳥居が見えて、出店が始まる場所に人が集まっていた。


「人多いねぇ~!」

「今17時か、これからもっと増えるだろうね。」


神社のお祭りだから、夜は盆踊りの披露があったり、池には灯篭が浮かび、ライトアップされるらしく、それ目当ての人も多いだろう。


「あ、戸田、とりあえずこれ買おう。」


僕は祭りの入口にあった、お面を戸田に買うように勧める。


「とりあえずこれを頭につけといて、あまりにアレだったらこれで顔を隠す必要があるかも。」

「あぁ!なるほど!!」


学校であれだけ苦労したのに戸田は警戒心ゼロでここに来たらしい。


「さすが高田くん、よく考えてるね!」


野崎さんが感心したように僕を褒めてくれる。

出来る人に褒められるって凄く嬉しいなと思う。


戸田は野崎さんが選んだ古風な狐のお面を頭の斜め右くらいにセットする。


─あれ、なんか男前度があがっただけな気がする。


これだったらまぬけなキャラクターとかの方が、とは思ったが、選んだのは野崎さんを否定することは僕には出来ないので、顔が隠せれば問題ないない!と考えるのをやめた。


「まずは神社に向かって歩きながら食べたいもの探そう?そして神社で参拝してから、目をつけて食べ物回集めよう!おなかが落ち着いたら射的とかしたいな~」


野崎さんの美しい段取り立てに惚れ惚れする。

お祭りに来て、ちゃんと参拝するところもとても好感度が高い。


─祭りというリア充イベントのこの慣れっぷりよ…。戸田は無知、僕は無知で無口、浅葱さんはポンコツと言う地獄布陣の中の希望の星でしかないな。思えば夏の遊びでこの布陣でグダグダにならなかったのって全部野崎さんのおかげでは…?


「いいねぇ、あ~お腹空いてきたな~!」

「…じゃがバター。」

「それが1番いい流れだね、そうしよう。」


戸田と浅葱さんがあまりにも本能のままなの発言だったので僕だけは野崎さんの功績を褒め称えるべきだと強く思った。


人は多いけど、はぐれるまではいかない程よい多さだ。

ゆっくり歩きながら続く屋台を見ては「あれなに?」「あれは~?」と戸田が質問してくるのに返す。


参道を真っ直ぐ歩いて境内に着く、僕と野崎さんが大鳥居で一礼すると、戸田と浅葱さんもつられるように礼をする。


「参拝の列が神門をこえてるな、やっぱり今日は人が多いね。」

「参拝とか初詣で何回かしたくらいだからマナーとか分かんないや~。」

「教えるから大丈夫だよ~。手水舎は並んでる途中にあるから、二人づつ抜けて行く感じがいいかな。」


地元の神社に慣れてる僕と野崎さんがエスコートする。

人は多いけど、多いのに対応して参拝の列を広く取ってるからか、そこまで待つこともなくおまいりを済ませた。

次は「お祭り②」です。

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