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52.川遊びって何すればいいの?

「おいしい~!」

「戸田くんも手伝ってくれたんでしょう?お父さんうるさくなかった?」

「色々教えて貰えて楽しかったです~。」


心底本心で言ってそうな戸田を見て母が安心したようだ。

僕らが作ったカレーが、とは言っても野菜とお肉を切ってくれたのは女性陣だが、全員に行き渡って昼食が始まった。


母が家から唐揚げを上げてきていてくれたので唐揚げカレーだ。

唐揚げがあると聞いた瞬間、戸田と何故か浅葱さんも目が喜んでいたので浅葱さんも食いしん坊組に認定だ。

父が腕をふるったのと、自分らで作ったのと、外で食べるのが重なって、キャンプで作るカレーは美味しく感じる。


食べ終わったらほとんど作ってもらったからと女性陣が洗い物をしてくれると言ったので、僕らは炊事棟に鍋とかの調理器具を運ぶのだけ手伝った。



正午も過ぎると流石に暑くなってくる。

僕と戸田と浅葱さんと野崎さんは川に遊びに行くことになった。

麻衣は母に誘われてドックランに犬を見に行くようだ。

僕ら高校生組が妹の面倒を見なくて済むようには母が気を使ってくれたのかもしれない。

僕的には麻衣の面倒を見るなんて、なんの苦でもないが、野崎さんがずっと麻衣に構ってくれていたので、ゆっくり出来る時間になるのなら助かる。

父はテントに残るらしく、きっと1人で珈琲を淹れて飲んだり、リクライニングチェアを倒してぼーっとしたりして、癒されるんだろうなと想像できた。


川は自分達のいるサイトから真反対の場所にあり、けっこう歩く。

自由にテントをたてれる区画の奥に、施設利用者が歩きやすいように整備された自然道を少し下ったところに、けっこう広いけど浅瀬が続く川があった。

昼も過ぎて、人は多かったけど、自分らが川を堪能するスペースはそれなりにあったので確保した。

靴を脱いでズボンを巻くって川に足をつける、冷たい。


「ヤバい、めっちゃ冷たい!」

「…魚いるかな?」

「あ、あそこいない?」


浅葱さんが魚を見たがると、野崎さんはズイズイと奥へ進む。

野崎さんは安定感あるけど、頑張ってついて行こうとする浅葱さんはなんとも不安定だ。


「足元気を付けてね、特に浅葱さん!」


思わず僕が声をかけると、野崎さんが振り返って、バランスを取るためか前に出ていた浅葱さんの手を取ってくれた。


「浅いって聞いてたけど、深いとこは膝上くらいありそうだね?」


そう言いながら戸田はズボンをまくり直した。


「ていうかすごい冷たいよね。小さい子供とか普通に全身川につかってたりするけど寒くないのかな~」

「遊んでると慣れてくるのかな?」


家族連れで川遊びしてる中には浮き輪やライフジャケットをつけて川遊びをしている楽しそうな幼児たちもいて、賑やかだ。


正直なことを言うと僕は泳ぎが得意ではないので、水遊び自体が苦手だ。

浅瀬だからまだいいけど深いとこにはなるべく行きたくない。

こういう時は常に座れるところを探してしまう僕が、川のサイドにあった丁度いい岩に腰掛けると戸田も同じように腰掛ける。


「戸田、そんなタオル首にかけてたっけ?」

「あ、これは野崎さんと浅葱さんの」


戸田の首には可愛いらしい色のフェイスタオルが2枚かけられていた。どうやら野崎さんに持っててねと頼まれたらしい。



「こうやって座って水に足つけてるだけなのになんでこんなに気持ちいいんだろう。暑いからかな。」


戸田がまた可愛いことを言ってる。


「戸田アウトドア好きなのかもね。自然とかも好きなんじゃない?」

「そうかも~、なんかすごく癒されてる気がするんだよね~。」


ふと野崎さんたちを見ると、魚を見つけた浅葱さんが顔を前屈するような姿勢で川面ギリギリまで近づけていて、野崎さんは魚よりも浅葱さんを見守ってる感じで、浅葱さんの三つ編みが川に付かないように2つとも手で掴んでいる。

その2人の立ち姿がやたら面白かった。

見てあの二人、と戸田に言うと、それを見た戸田がまた静かに笑いをこらえる。


「あの二人、ほんと仲良くなったよね。」

「確かに~!2人とも最初に知り合った時とはなんか雰囲気も変わったよね~」


戸田がいい方向での変化の話をしているのが伝わったので僕は頷く。


「しっかり者の野崎さんとポ…ちょっと抜けてる浅葱さんだから、相性いいのかもね。」

「莉央ちゃんは甘え上手だしね~。」


─戸田から見ると浅葱さんはそうなのか。

僕からすると1番甘え上手なのは戸田だ。

甘し上手と言うよりは、なんでも許してしまいたくなる可愛さを持ち合わせていると言うか…。


浅葱さんはわりと本能のまま行動するし、人からの気遣いや施しを基本拒否や遠慮せず、全力で受け入れるから、そういう部分では確かに甘え上手と言えるかもしれないなと僕は思った。

でも僕は浅葱さんが甘えても止めるべきとこは止めてしまうと思う。


「陽菜ちゃんは確かにしっかり者だよね、そんな子になんか頼まれたり、頼られるとなんか嬉しくなるな~。」


戸田は首にかけられたタオルを触りながらそんなことを言う。


「確かに…中学の時から、何気にリーダータイプなんだよね、野崎さんは。」

「そうなの?」

「中学一緒だったからさ、クラスはかぶらなかったけど野崎さんは学校でも目立ってたからさ。率先して仕切るとかではないけど、周りに人が集まって、野崎さんが中心で、皆が野崎さんに支えられてるって言うのかな、そんな感じに見えたかな。」


モテるからと言って異性を良いように使ってるイメージもなく、自分でよく動くし、友達の相談に乗ってあげてるところを見た(盗み聞きした)ことがある。


「…そーゆーのって疲れないのかな?」

「どうだろ、疲れる人もいるだろうし、性分的にそうしてた方が楽な人もいるかも」

「なるほど~」


そんな話をしながらまったり過ごしてると、野崎さんの声が聞こえたのでそちらを見る。


「え、あれ大丈夫?」


そう言って戸田は立ち上がって野崎さんの方に向かう。

何故だか分からないが、浅葱さんが川に膝をついて四つん這いの様なポーズを取った上で、川に顔をつっこんでいた。

濡れるのなんて勿論おかまいなしだ。


─川の中、直で見たかったんだろうなぁ。


浅葱さんの三つ編みを掴んだまま慌てる野崎さんとその場に向かう戸田を横目に、浅葱さんの奇行に慣れた僕は成り行きを見守った。

辿り着いた戸田に立ちあがされて、野崎さんに顔にタオルをあててもらい、3人はこちら側に帰ってきた。

最初は心配していた戸田も戻ってくる頃には笑いを堪えられずにいた。


「ゴーグルとか持ってくれば良かったね」と僕が言うと浅葱さんは頷いたが、その顔は満足げだった。


タオルで足を拭いて、サンダルを履いて、自分たちのサイトに戻ってからは、家から持ってきたバトミントンを広場でやったりして過ごした。

陽菜ちゃんは性分にあってるので面倒みの良さを発揮して疲れることはありません。

が、それをいいことにやたらと頼ってくる人間のことはあまり好ましく思ってません。


次は「星の夜」です。

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