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49.父帰宅

戸田から横流しされた素麺を昼食ですすっていると、父が帰ってきたので玄関に迎えに行く。

今日は父が帰ってくる日と分かっていたので、戸田は遠慮したのか、自宅に帰っていった。



「パパ!お帰り!!」


しっぽを全開で降っている大型犬の様に妹が父の周りではしゃぐのが可愛い。


「ただいま麻衣、直哉もただいま。」

「父さん、お帰り。」

「ご飯食べてたんだろ?父さんの荷物はいいから食べなさい。」


玄関に置いたキャリーケースから母が荷物を取り出してるのを手伝おうとした僕に父がそう言うので、戻って素麺の残りを食べることにする。


「あ、父さん、キャンプありがとうね、友達もOKしてくれて。」


色々を済ませて腰を落ち着けた父に僕はそう言う。


「直哉が友達連れてくるなんて初めてじゃないか!母さんに聞いたがずいぶんかっこいいらしいな。」

「かなりイケメンだよ。あといいやつ。」

「啓悟にぃは優しいよ!」

「麻衣が懐くくらいだからそれはそうだろうなぁ。」

「パパそれどういう意味ー!?」

「ははは、しかも女の子も参加するとか、父さんなんか緊張しちゃう。」


父がちょっとふざけたように言う。


「どうせママに任せるんでしょー?」

「バレたか。」

「私の友達にもそんな感じだもん。」 

「女の子はなぁ、対応の正解が分からないからなぁ。年の離れたおじさんと話して嫌な気持ちにさせちゃったら良くないだろう?」

「麻衣も女の子だよ?」

「麻衣は僕の娘だから特別。」


頭を撫でられて嬉しそうな妹は可愛い。

女の子が分からないという意味ではちょっと気持ちわかるなと思っていると、母もリビングに戻ってきて久しぶりの家族の団欒を楽しんだ。



次の日の夕飯に戸田を父に紹介する。


「すごい、本当に男前だな。」


父が感心したようにそういうと戸田は照れていた。

皆で椅子を増やした食卓を囲んで、12日のキャンプの話を中心に盛り上がる。


「今回のキャンプ場は釣り出来ないとこだけどな~、許可されてる川では釣りをして、釣った魚を食べたりも出来るんだよ~。戸田くんは釣り、した事あるかな?」

「ないです!」

「楽しいぞ~川釣り、直哉は釣り得意なんだよ。」

「そうなの?」

「…そうかも。」

「来年は釣りが出来るキャンプ場にしようか!戸田くんに釣りの良さを教えこもう!」

「はい!楽しみです!」


「え~釣りつまんないよ~」と麻衣が嘆き「お父さんが調子に乗ってる…生魚触れないとかもあるのよ~?戸田くん断ってもいいからね。」と母がフォローを入れる。


穏やかかつコミュ力の高い戸田を穏やかな気質の父は好感を抱いてくれたみたいで、内心ホッとする。


友達が自分の家族から好かれるのはなんか嬉しいものだなと思った。



ご飯が終わったあとに戸田が帰ろうとしたから泊まってかないの?と聞くと「でも、お父さんもいるし」と短く返事が来た。


「父さんいるかは関係なくない?戸田が帰ってしたいことあるならもちろん無理にとは言わないけど」


と僕が言うと戸田はニコーっと笑って「泊まってく」と言った、やっぱり帰る必要は無かったみたいだ。

まったく変なところで遠慮するやつだな、と僕は思った。



二人で野崎さんオススメの海外ドラマを見ながらまったり過ごしたあと、僕は寝る準備をする。

いつものことだけど、僕が早く寝て、戸田はその後ちょっと一人で起きててそのうち寝てるようだ。

朝も僕が早く起きて戸田はちょっと遅れて起きてくる。

僕が1度寝たらそうそう起きないタイプなのと、戸田が朝弱いのがちょうどいい相性になってるようで、生活パターンに1時間ほどズレがあるのに一緒にいて苦にならないのは面白いなと思ったことがある。



いつものように、僕が先に寝室に入り、もはや我がものと化した父のアイマスクをセットする前に戸田が呟く。


「直哉のお父さんっていいね、あれが…」


そう言って黙った。


「戸田の父親はあんまりいいお父さんじゃなかった?」

「…今の母親が来るまで何年も一人で育ててくれたことには感謝してるけどね。美味しいとかはなかったけど毎日ご飯作ってくれたし、俺をいい人間に育てるのに必死だったのはわかるし。」


こういう風に聞いた時に、即「最低の父親だった」と言わずに育ててくれたことの感謝やフォローを口に出来るのってすごくないか?と僕は思った。


─家を出るほどの嫌悪感がある割には、親のこと悪く言わないんだよな、前も真面目な親と反りが合わないくらないの言い方だった。戸田って言動がわりとチグハグな所があるのかも。


戸田が親に何をされたかは詳しく聞いてないけど内容によっては即悪口でもなんの問題もないくらい被害にあってる可能性もあるのだ。

そうでもなければ高校行かずに家を出るなんて子供がなるか?と僕は考える。


普段から困ったことに対してもなるべく穏やかに対処してて、1度キレたことはあるらしいから、チグハグと言うよりは溜め込むタイプな感じなのだろうか。


─我慢して溜め込んだ先の爆発は良くないよなぁ。正直何も我慢せずとも許されるようなスペックを持ってるはずなのに、溜め込んでしまう理由はなんなんだろ。



僕はいつも真面目な話になるとなんて言葉を返せばいいかわからなくなるが、この気持ちを素直に伝えればいいんじゃないのかと気付く。



「戸田ってすごいよ、嫌な思いさせられたり無性に合わない親に対して普通は感謝とか気遣う言葉出てこないでしょ。」

「え、え、そうかな~?」


戸田を褒めると、いつも可愛い反応をするから、僕は戸田を褒めるのが好きだ。


「うん、ほんとに優しいやつだなと思う。でも別に戸田が今恨み言だけを言ってたとしても、戸田のことをダメなやつだなんて思わないけどね。」


だから不満は溜め込まなくていいんだよ、と言外に言ってみる。

僕がそう言うと、戸田は驚いたような顔で僕を見つめた。


「そうなの?」

「そうだよ。」

「そっか。」


戸田はそれ以上喋らなくなったので、僕はおやすみ、と声をかけて寝ることにした。

すぐに伝わらなくてもいい、僕らにはこれからもまだ沢山時間があるのだ。

野崎さんオススメの海外ドラマは全部超スリリングなサスペンスアクションばかりです。


次は「キャンプ出発」です。

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