4.友達…?
あの日から戸田と昼食を食べるのが日課になった。
初めて昼食を次の日の朝に戸田に朝の挨拶をされた時に「お昼はカツ丼が食べたいな~直哉は今日は何が食べたい?」と聞かれて、あの日限定の道案内&ランチのお付き合い じゃなかったのか…と思いながらも前日のランチタイムをわりと心地よく感じていた僕は「…きつね蕎麦かな」と答えていた。
あっという間に呼び捨てにされている事には突っ込むまい。
陽キャ不良の人懐っこさにいちいち戸惑っていてはキリがない。
そう思いつつも、もっと深い内心では、え、もしかして僕友達出来たの?こんなに容易く?友達ってどっからが友達でどこまでが友達じゃないの??などと混乱していた。
食後、戸田が女子に捕まらなかった時に裏庭に行く僕に着いてきた。
いつもここで小説を読んで過ごしてるって話したら「ここ静かで落ち着くね~」と戸田もこの場所をお気に召した様子だった。
一緒に学食に行く日は学食終わりに裏庭へ、パンを買う日はパンとお弁当を持って裏庭へ向かいお昼を摂る、その後は僕が小説を読み、戸田はスマホでゲームをしたりうたた寝したりする。
一緒に動画配信サイトの可愛い猫と犬の動画を見続けて昼休みが終わったこともある。
戸田が猫派で僕が犬派なので公平に、犬、猫、犬、猫と順番に動画を見た。
もちろん会話もする。
ヤンキーと一般人に共通の会話なんてありはしないのだが、戸田はとてもマイペースな1面があるらしく、こちらの興味とかは気にせずに色んなことを話してくる。
特に趣味に関しては、おしゃれなだけあって洋服が好きらしく、良くネットで探した服を「見て見て」と僕に見せてきて、「こっちとこっちで迷ってるんだけどどっちが似合うと思う?」と彼女かな?となるような会話を仕掛けてくる。
ファッションなんか全くわからないが適当に答える訳にもいかないし、いつも似合いそうな色で選んで返事をする。
─もしかしたら、未来に彼女が出来た時にこの経験が糧となるかもしれない!
と、思ったがその未来が本当に来るのかと言ったら勿論全く自信はないし、想像も出来ない、何よりも聞いてくるのは大柄のイケメンだったので回答に対する士気を上げるのは困難だった。
そんな感じで、内心では″これは友達と言っても過言では無いのでは…?″と思いつつ、僕にとっては初めての経験だらけなことにもソワソワしつつも、表面的には落ち着いた昼休みの過ごし方をする。
やはり慣れてるとは言っても戸田もやたら注目され、絡まれる生活が億劫だったのかもしれないな、と裏庭でのびのびしてる彼を見てそう思う。
戸田は僕の作った卵焼きがお気に入りだが、たまに母の作ったおかずを食べて、いつもお弁当作ってくれるお母さん優しいね~と言ってきたことがある。
僕からしたら当然のように与えられていた毎日のお弁当も、戸田からしたら優しさなのだと気付く。
戸田はいつも学食かパンだし、漫画の不良はだいたい家庭環境が良くないのが相場だから戸田の家も何かしら良くない事情が少しあるのかもしれないな…と思ったがそんな事を聞くのは何か違う気がするなと思ってそこには触れない様にした。
少し親しくなったおかげか、寝てる戸田を起こす時の手間が少し減った気がする。
なんと言うか前よりスっと起きてくれるし、起きた時の顔の機嫌の悪そうな感じがなくなった。
戸田に用事がある人は、先生ですら戸田を起こすよう僕に頼む始末だ。
女子から頼まれる時が1番困った。
やはり予想通り戸田的にはそんなに喜ばしいことでは無いことを知ってしまったからだ。
昼休みに裏庭で過ごすのをお気に召した戸田は昼休みに女子に声をかけられるのを嫌がり、それを避けるための行動を取り出した。
裏庭の定位置に女子生徒にこられるのが何よりも嫌なのか、不運にも女子に捕まった際は潔く諦めて僕にまた後でと言い、一人で裏庭に行くように暗に促してくる。
少し話をして上手くまいて裏庭にやってくることも多々ある。
「でも女の子に怒ったり冷たくしたい訳じゃないから、難しいよね~」
と真面目に困ってそうな顔で言っているのを見て、優しいヤツだと思ったし、モテる男も大変だなとも心底思った。
だから女子には「今さっき寝たばっかりだから起こしたら多分怒る」とか「今日は寝不足だって言ってたから今起こすより午後以降に起きてるタイミング探した方がいい」と事実に基づいた助言をする感じで追い返している。
″高田なら戸田を起こせる″と言うイメージを″高田は戸田の理解者だ″と言うような印象にすり替えて″高田の言うことは聞いといた方がいい″と認識させる作戦だ。
ちなみに戸田が学校で常に寝てるのを「夜型なのか?」と聞いたことがあるが、ほぼ毎晩家を出て朝方まで夜遊びしてから学校に来ているらしい、やっぱり不良である噂には間違いがなさそうだった。
体育の前の休み時間前、男子更衣室に向かおうとしたらムクっと目覚めた戸田が「更衣室ってどこ?」と聞いてきた。
「…体育出るの?」
入学してから1度も体育の授業で戸田を見かけたことがなかったから驚いて聞いたら眠そうな顔で頷いて着いてきた。
男子更衣室について、まだ少し肌寒いから上下長袖のジャージに着替えながら戸田を見ると、上背もそうだが筋肉がしっかりついた体格をしていてヒョロヒョロな自分と比べると大人と言うか違う生き物の様に感じた。
身長順に整列したら戸田はもちろん1番後ろだ。
僕は165cmで、このクラスでは中盤くらいの位置にいる、戸田ほどまでは大きくならなくていいけど170cmは超えたいのでこれからの成長期に期待だ。
他の男子も同じ様に考えているのか、皆着替えてる戸田の体型を遠巻きにチラ見しているのが少し面白かった。
授業の内容は体育館でバスケットだった。
大きいサイズのボールの競技は総じて苦手分野だ。
戸田はと言うと予想通り、難なくと言うか、あなた経験者ですよね?という様な動きで軽やかにプレイしている。
女子がそれはもうお喜びだ。
休憩中には必ず僕に近づいてくるから「戸田バスケやってたの?上手いよね」と聞くと
「なんかねー、特定の部活は入ってなかったけどよく頼まれて助っ人に入ってたから運動は色々出来るよ~。バスケはストリートでも遊んでたから結構得意かも」
とちょっと照れたように笑って答える。
身体能力高そうな身体なのは分かっていたが器用なんだなと感心する。
「直哉は今帰宅部だけど、運動とかはしてたの?」
「中学の頃はバトミントン部だよ。」
「バトミントン楽しいよね」
「うん、緩めの部でほとんど遊びみたいなもんだったけど」
「それくらいがいいよ~、俺真面目な部活とか絶対無理。向いてない~。」
─運動神経いいのに勿体ないな。
そう思いつつも、したくないと言ってる人にそれを進めるのも違うか、と思った。
「この高校運動部に力入ってるから緩いとこないだろうし、向いてないなら誘われても断った方がいいかもね。」
─今日の体育の動きみただけでも勧誘ありそうだし。
「うんうん~。直哉バトミントンの他に得意な運動あるの?」
「運動は、あとは卓球とかテニスとか、ボールが小さいやつはけっこう得意かも」
「なにその基準」
そう言って戸田は笑う。
友達付き合いも、友達との過ごし方も、正解の分からない僕だが、戸田の年相応な笑顔を見れたら、これでいいんだろうな、と嬉しい気持ちになれた。
戸田は「天が二物を与えた」タイプの男です。
ただ何かにハマるタイプでは無いので、器用貧乏なところがあります。
次は「布教への使命感」です。




