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48.夏の夜

野崎さんはさっそく親に聞いて、話し合って許可をもらえたらしく、嬉しそうに参加できると言う内容の連絡が来た。


僕も母には話を通しており、女の子の参加と言うことには少し驚いてたみたいだが、多分それは僕に女の子の友達がいることに驚いてただけみたいで、すぐに″人数が増えると楽しそうね″と受け入れて貰えた。


野崎さんの親の方からうちに連絡すると言われたので、僕の家の電話番号を教えると、さっそく家に電話がかかってきて、母が対応していた。

後日、浅葱さんの家とも連絡を取り合ってくれた。

男女でテントを分けることとか、責任をもって預かるとか、色々話をしてくれてありがたい限りだ。



一連の話を聞いてた妹は「おにぃの友達増えるの?」と言ってきた。


戸田はともかく、家族のキャンプに知らない人が増えるのは嫌かな?と一瞬心配になったし、僕の友達が参加するなら自分の友達も!とか妹が言いそうなことを予想したが「ふ~ん」と言いながら無関心な時とも違う考えが読めない表情をしていて、あれだけ把握できていた妹の考えが察せれなくなってしまった自分に少し落ち込んだ。



野崎さんからキャンプに行く時に持っていった方がいいものがあるか聞かれた、ネットでは一応調べたけど、ちゃんと経験者の意見が知りたかったらしく、その辺がしっかりものの野崎さんらしいと思う。


基本的な道具はうちの親が食べ物からテントからポータブル電源…あげたらキリがないほど、かなりなグッツを揃えているので正直身一つで来てもらっても構わないということを伝えた。

ただ、服装は今回のキャンプ地が少し標高が高いのと、夏の夜中は意外と冷えることもあるので薄くてもいいから長袖長ズボンの用意と、虫対策であまり濃い色の服装にしないことを勧めた。

女の子が外泊で必要とするものが分からないので、あとは個人的にこれがないとダメ!ってものを持ってくることを勧めておいた。



「天の川見れるかな?」


僕の部屋で一緒にしてた、夏休みの宿題の手を止めて戸田が言う。


「キャンプ場の場所聞いたけど、結構郊外の方だから天気次第ではかなり星綺麗に見えると思うよ。」

「じゃあ天気よくなるように祈らないとだ~!」

「今のところ予報は晴れだよ。」


子供みたいな可愛いことを言う戸田を微笑ましく思う。



「そういえば戸田ビーサン持ってる?アウトドア用のウェアは買ったって言ってたけど、サンダルのこと言うの忘れてた気がする」

「スニーカーで大丈夫と思ってて買ってない。ビーサンあった方がいい?」

「キャンプ場は浅瀬だけど川があるとこだから、足つけるとかの水遊びしたかったらビーサンと着替えはあるといいかも。てかそもそも結構汗は書くから替えのTシャツは多めがいいって野崎さん達にも連絡しとこうかな。」

「持ってない」

「じゃあ明日買いに行こうか。」

「えー今から行こうよ!ドンキなら空いてるし!」


やけに張り切ってる戸田に笑ってしまう。


「宿題サボりたいんでしょ?」

「それもあるけどポテチ食べたい。」


さっき食後のひと袋食べてたよなぁと思いながら、腰をあげることにした。



外は昼よりはマシになったとはいえ、少しもわっとした暑さがあった、でもそれも戸田の自転車の後ろに乗れば少しだけマシに感じた。

妹がついていきたがったけど、今は21時過ぎていて、流石にこの時間は中学生の女の子は保護者がいないとダメだと母に止められたので、妹の分のアイスでも買っていってあげようと思った。



ドンキに近づくと共に、街の灯りが増える。

思えばこんな遅い時間に駅の方にちゃんと来るなんて初めてだ。

家族の外食の帰りに車で通り過ぎるくらいはあっただろうけど、その時は特に外を意識してはいなかったためあまり記憶にもない。


─今まで自分から夜遅くに家を出ようとしたことはなかったけど、今日は出ようとしても母は止めなかったな…。


戸田がいるし、ドンキ行って帰るだけだからなんだろうけど、なんかちょっと大人扱いされた気持ちに僕は嬉しくなりながら、いつもと違う様子の街を新鮮な気持ちで眺める。


街のまぶしくてキラキラした灯り、熱気がこもる街のぬるい風、大人達の喧騒、学生っぽい年頃の人も沢山いた。

同じ場所なのに昼と夜とでこんなに感じが変わるんだなと僕は不思議に思った。


キョロキョロして落ち着かない僕に比べて、戸田はもちろん慣れた感じで、颯爽と自転車を走らせている。

よく夜遊びしていたと聞いていたから、戸田のホーム的な世界の一部を垣間見れた気持ちにもなった。



ドンキに着いて自転車をとめる。

お店に入って、窓はないのに夜と言うだけで違った雰囲気を感じるのは何故だろう、僕が落ち着きがないだけかもしれない。

戸田のビーサン、スナック菓子、妹と母のアイスを買おうとしてたら店の中で声をかけられる。


「お~高田?それに戸田君じゃん!」


声をかけてきたのは、同じクラスでバスケ部の木村だ。

黒髪だったのが茶髪になってるから一瞬誰かわからなかった。

存分に夏休みを満喫してる様子で何よりだ。

ちなみに、彼は球技大会でも大量の女子に囲まれてもむしろ目立ってやるぜ!と張り切り、戸田と組んで頑張ってて、優勝して感動していた子だ。



「木村くんじゃ~ん!遊んでるの?」

「そそ、中学の時のツレとね~。」


木村はだいぶ戸田とも打ち解けていて、球技大会の時は率先して戸田を無事に返すことに協力してくれた良い奴だ。


「あ、そうだ、2人って納涼祭行く?」


納涼祭は8月の後半に2日間開催される地元のお祭りだ。

野崎さんの希望でその日は4人で行く予定だった。


「初日に行く予定だよ。」

「あ、初日俺も行くよ!クラスのやつと行く約束してるんだよ!どこかで会えたら声かけるわ!」


木村は明るくそんなことを言って挨拶して去っていった。

夜に街でクラスメイトに会うって本当に不思議な感じがするな。


新鮮な非日常感にワクワクした反面、家に着いて、玄関に出迎えに来た妹が大喜びでアイスを袋から攫っていく光景を見ると、心底安心した気持ちになった。

本格的な夜遊びは自分にはハードルが高いのだろうな、と思いながら僕は家に上がった。

高田の夜遊びデビューはドンキでお買い物→即帰宅です。

一般的な夜遊びと比べると些細な行動ですが、夜の街で自転車の後ろに乗ってた時の感覚を高田は大人になっても思い出すことになります。青春ですね。


次は「父帰宅」です。

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