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44.一学期の打ち上げ

「それでは、戸田くんの無事の学校脱出と、1学期終了を祝いまして、かんぱーいっ!」


戸田の家で、野崎さんの明るい号令と共に皆でジュースで乾杯だ。

テーブルには先程戸田を家に残して僕らで買い出しに行き、スーパーで買ったピザとポテトが並んでる。


駅付近は時間によってはうちの高校の生徒と遭遇することもあるので、安全な場所を選んだ結果だ。



「それにしても力技プラン、見事にハマったね。」


僕は感心したように言う。


「誰も何も言えなくなってたよ~、あんなことあるんだね~。」

「なにあれ!って疑問に思ってもなかなか仲良さそうに一緒にいるカップルかもしれない2人に対して問い詰めたり、邪魔したりってできないだろうなと思って。予想外な出来事に臨機応変に対応出来る人ってなかなか少ないしねっ。」


少し自慢げな野崎さんがそう言う。



「ほんとに、野崎さんは人の視線を集めるのが上手だよね。戸田はけっこう自然体だったけど、野崎さんの雰囲気がガラリと変わるだけで、二人の世界って感じだった。」


僕がそういうと野崎さんは「えっ、いや!そんなことないよっ」と焦ったように言う、謙虚な人だ。


「あ、でも戸田くんが荷物持ってくれたアドリブは効いたと思う!」

「彼氏っぽくって言われたから一生懸命考えました!」


そんな野崎さんと戸田のやり取りを微笑ましく見てたが、戸田は急にしゅんとしだした。


「でもさ、あれのせいで野崎さんが俺と変な噂たっちゃうのは申し訳ないな。」

「んー、大丈夫だよ!色々聞かれるとしたら私だし、何聞かれても″友達だよ″って返す予定だから。」


野崎さんのスマホにはすでに友達からの追求が始まってるのか、通知を見せながらそう言う。


「腕とか組んじゃったから、あんまりにもしつこく言われたら、戸田くんは仲良い親しくなれば距離近いタイプだからあれくらい普通だよって言わせてもらうつもり」

「あぁ、確かに戸田って距離感おかしい時あるよね」

「え!?そうなの?」


僕がそういうと、自覚のない戸田は驚いたように言う。

よく浅葱さんなでなでしてるやんけ、とツッコミたいとこだが、別に悪いことでは無いし、僕がそういったせいで2人の触れ合いが減るのはよくないな、と考え直した。


「おかしい、と言うか少し距離近くはなるよね。」と野崎さんが言う。

おかしいって言い方は悪かったかと僕は反省する。


「確かに。僕にも近いからなぁ」

「えー、全然自覚なかった。」

「仲良くない人に対する距離はむしろしっかりとる方だし、身内だけになら、変な勘違いもされないし、全く問題ないと思うよ?」

「そう…?」


野崎さんの優しいフォローを素直に受け取る戸田。

浅葱さんもずっと頷いてる。


─多分1番距離感おかしいのは戸田より浅葱さんだけどね、これは度が過ぎたら野崎さんが止めてくれるだろうし、今はつっこまないでおこう。


自分の失言をカバーしてくれた野崎さんに感謝しつつ僕も「うん、全然問題ないよ。」と言った。



「追加の燃料がなければ煙も消えて、夏休みが終わったら噂も落ち着いてると思う。夏休み明けは誰と誰が付き合ったって本当の話の方が盛り上がってると思うな~」

「確かに。」


中学の時も夏休み前と夏休み明けは謎にカップルが増える傾向にあったなと思い返し、野崎さんの意見に僕が乗るが、戸田はまだ申し訳なさそうだ。


「ただ、夏休み明けも戸田くん狙いの女子に悩まされるのが完全に無くなる訳じゃないと思うんだよね。」


心配したように野崎さんが言う。

浅葱さんは戸田の目の前にあるお菓子を狙っている様子だからとってあげる。


─僕もその心配はしている。


正直いっそのこと野崎さんと付き合っちゃえばいーのに!と思っているが、そんなのは2人にその気がなければセクハラにしかならない。

今日の見る感じ戸田に彼女出来ればけっこう解決するんじゃない?とも思うが、これだけ仲良くしてても戸田に浮いた話は聞かないし、こんど2人の時に「好きな子とかいないの?」みたいな恋バナ振ってみるか?いや、ガラじゃねぇ~~!!

などと頭で思考を巡らす。



「俺がもうちょっと対応悪くすれば収まるかなぁ~?」

「皆に冷たくする必要はないけど、しつこかったり、失礼な女の子には毅然とした態度も必要だと思うな。戸田くんスルーは確かに上手だけど、きっとストレスはすごくかかってるし、女の子はそれを優しさって勘違いして調子にのせちゃうこともある思う。」


困った様に言う戸田に、野崎さんが意外とキッパリと返した。

僕としては戸田に、自分の意思にそぐわない態度をしないで欲しいなと思うが、野崎さんの意見は違ったようだ。

確かに野崎さんの意見は正しい。


─僕は自分が思った以上に戸田を甘やかしたいのかもしれないな。


「俺頑張るよ」と言った戸田を応援することにした。

イケメンと言うだけで学校に通うのも大変になるとか、どんな世界だ。

他の学校でもファンクラブがあるような生徒がいる学校の自治はどう保たれているんだ?

この近辺では戸田の話くらいしか聞かないけど、都内とかにはあるって言うよな。

イケメンとかじゃなくても、スポーツでプロのジュニアユースに入るような人もファンクラブはあったりすると聞くし。


─芸能人が通うような学校とか、なにか対策があるなら参考にならないかな…。ネットで調べてみるか。そういえばファンクラブと言えば戸田のファンクラブってまだあるのかな?中学の時はあったの聞いたけど、流石に高校になって存続はしてないか。新しくできる可能性もあるよな。



「あ、そういえば莉央ちゃん、あの夏休みの宿題うちに半分くらい置いていったら?家まで持って帰るの大変だろうし、夏休みの宿題も皆で集まってやろうよ~」

「…うん。そうする。」

「夏休みの宿題?莉央ちゃんの?」


考え事をしてたら、戸田からちょうどその話題が出たので、野崎さんに浅葱さんが夏休みの宿題を全て持って帰る気がなかったことをさりげなくチクっておいた。

優しくて穏やかな印象が強かった野崎さんは、それ以上にしっかり者な部分が強いとよく付き合ってみたらわかる、そんな野崎さんはちゃんと「こまめに持って帰らないとダメだよ」と浅葱さんを叱り、ちゃんと反省してそうな表情の浅葱さんを見て、僕は満足気に頷く。


─なんだろう、戸田は甘やかしてもいいけど、浅葱さんは甘やかしたら終わりな気がするんだよな。戸田はやだやだ言いながらもやらなければいけないことはやるし、やったら能力高いからな。浅葱さんは…。


どこまでも、際限なく面倒を省く大人になったダメ人間な野崎さんを想像する。

絶対に止めなければ。



「でも皆で宿題やるのはいいね!夏の予定立てようよ」


お説教から雰囲気をいつもの様に華麗に切り替えた野崎さんの意見に全員頷くのだった。

面倒見がよく、可愛いものを甘やかしがちな直哉(主人公)も、莉央ちゃんのダメ人間さには危険を感じています。


次は「夏の予定」です。

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