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41.球技大会3

4階で、窓と入口の引き戸を開けはなして、廊下の窓も開けておいた図書準備室は、風が沢山入って、とても気持ちいい。

図書室が空いてたらダクトから図書室の空調が入ってくるけど今日は勿論閉まっているし、扇風機だけじゃ暑いかなと心配していたがまったく問題ない、と言うよりとても過ごしやすい。


廊下側の窓が空いてるのを外から誰か見つける可能性もあるけど、職員室からは離れてるし、昼休みの間くらいは大丈夫だろう。

他の校舎は全部3階までなので違う校舎からこちらの中を見られることもないし、普通の生徒は戸田がここにいるなんて思いもしないはずだ。

私物化しようと思っていてド忘れしていた準備室がここに来て役に立つとは思ってもなかった。



─次は帰宅までの作戦を練らなきゃいけないな…。



最悪の想定はパニックだ。

まぁ流石にそこには至らないと思ってはいるが何があるかは分からない。

それを考えると戸田を帰宅させるのも手だが、戸田は球技大会を楽しみにしていた。

昔よく遊んでたというストリートバスケのチームの練習に「コソ練してくる!」と言って参加しに行ってたほどだ。

帰すなんて可哀想なことは絶対に出来ない。



─ひとまず戸田には悪いけど決勝戦までここに避難してもらって、うちのクラスの女子のバスケの応援はいけないけど、まぁ仕方ないだろ。


そう考えながらも、僕たちは心底安心して昼食を取ることが出来た。



最終試合、なんとうちのクラスは学年で優勝しました。


戸田のかっこいいシーンの話はキリがないので割愛だ。



僅差だったらしいけど、試合はとても盛り上がって、クラスのバスケ部の男子はちょっと泣きそう!と言っていた。


最終試合からどうするかと言う計画だが、僕は昼食後に戸田を準備室に置いたまま、一人で駆け回って、クラスの男子全員に応援を要請した。

事情を話すと、女子の熱気を十分に理解してた男子は快諾してくれて、試合を勝利て終えたあとは、バスケの男子と応援に来た野球の男子全員で戸田を囲み、クラスの勝利を称えながら戸田をクラスに運んだのだ。


クラスメイトは


「わかった!どうすればいい?」

「あぁ、確かに大変そうだよなあれは…ちょっと女子怖いもん」

「モテるのを困るとか羨ましい悩みすぎるけど協力する!」


などと言ってくれて、頼もしい限りだった。


─こんなにすんなり男子が協力してくれるとは思わなかった。やっぱり戸田が良い奴なのがクラスの男子にはしっかり伝わっているようだ。



流石に20人近い男子の塊、勝利の熱気には女子の各グループも突破は難しかったらしく、あとを着いてきて、廊下からこちらを伺うばかりだ。


教室に入ってからはすぐに体育委員に仕切ってもらって祝賀会ムードを出す。

終礼で配る予定だった紙を配ってMVP投票を先に決めさせる流れにしたのだ。

終礼をする担任がクラスに来るまでは″考える時間″になる。

こうなると他クラスは干渉できない。

1組、戸田を無理矢理呼び出そうとした他クラスの女子グループがいたが体育委員が「今MVP決めてるんで。」と断ってくれて、クラスの全員からの「何あの人」と言う目線に流石に怯んで引いてくれた。



そして計画はまだ終わっていない。


すぐに終礼に来てくれた担任が体育委員から仕切りをバトンタッチされ、大喜びでクラスの勝利を称えて、皆が盛り上がる。

体育委員がダッシュで集計した男子のMVPは勿論満場一致で戸田だった。


─おぉ、なんか青春ぽい。


先生から一言求められた戸田は「すごく楽しかったです~。あと、色々協力、ほんとにありがとう~。」と、男子と体育委員にだけ分かるお礼を伝えて、大きな拍手を貰っていた。



終礼が終わりに近づく頃、廊下には先に終礼が終わったのか、抜け出してきたのか、他クラスの女子たちが集まりだしていた。予想通りだ。


「じゃあ今日はここまで、残って写真撮ったりがあるだろうけど、あんまり居残りせず早く帰れよ!」


担任が明るくそう言う。


「あぁ、あと、戸田!お前は今から一緒に職員室に来い!」

「は~い。」


終礼が終わると戸田は担任に連れられて職員室へ行った、戸田の出待ちをしてた女子達は「どうする?」「待と!」などと話している。



─計画通り。


思わず()(ライト)的な悪い顔をしてしまいそうだ。


そう、僕は担任も利用したのだ。

今日一日の事情を伝えて戸田の脱出の手伝いを頼んだら「高田…お前友達思いなやつなんだなぁ」と熱く感動されてしまったが背に腹はかえられない。



「じゃあ浅葱さん、先に帰っちゃおうか」


そう言うと浅葱さんは最終試合の前にあらかじめ戸田の荷物を詰め込んで、登校時より大きく膨らんだリュックを背負って頷いて着いてきた。

ちなみに僕のバックには戸田が今日持ってきてたおしゃれでスポーティなリュックが折りたたんで詰め込まれている。


出待ちをしていた女の子達はチラリとこちらを見ていたが、すぐに自分たちの会話に戻ってキャッキャとしていた。


浅葱さんのことをどう思ってるかは知らないが、僕のことは「戸田くんの近くにいた眼鏡」程度にしか認識してないのが丸わかりで、そう扱われるの懐かしいまであるなと思った。



学校は、球技大会の余韻があって、まだ終礼が終わってないクラスもあるし、終わっていても、戸田を狙う女子たち以外は教室に残ってクラスメイト同士で盛り上がっていることが多く、部活がある生徒もいるし、即直帰、みたいな生徒は少なめだ。

僕らはそんな″早く帰りたいよね派″の生徒の中をしれっと抜けて、職員室の裏に回ると、ちょうどいいタイミングで職員室の裏口から戸田が出てきた。


担任が「気をつけて帰れよ。」と声をかけてくれたのでお礼を言い、挨拶する。


野崎さんが「これ良かったら使って」と言ってくれた、片紐のビニールのナップサックから、靴箱で回収した戸田の靴を出して戸田に渡す。

ちなみに野崎さんは自分のクラスメイトと打ち上げもあるしで、別行動だ。


「ありがと~!」


自分の荷物が浅葱さんのリュックの中に入っている戸田は、今取り出すのは時間を食うと思ったらしく、浅葱さんからリュックを取り上げた。

そのまま浅葱さんの荷物ごと戸田が持つことにした様だ。

浅葱さんはもちろんされるがままだ。



人気のない校舎の裏を選んで正門に向かい、人の少ないタイミングで正門から出た。


「脱出~!」

「はぁ~、なんか、緊張した~」

「…成功。」


帰り道、下校してる生徒が全然いない訳じゃないから「あれ、戸田くんじゃない?」となってる女子もいたが、話しかけたりはしてこない。


─そんな行動力がある女子は教室や靴箱で戸田の下校を待ってるからな…。


これも計画通りだと僕はニヤつく。



「なんか…ほんと、ごめんね~。中学の時とかはここまでじゃなかったんだけど…」


そう言って落ち込んでしまう戸田。


中学の時は恐らく、不良全盛期だったからだろう。

怖さってのはそういうのの抑止力になりそうだ。

学校にはたまにしか行ってなかったってのも大きそうだ。

今の戸田、傍から見るとヤンキーと言うよりはただの爽やかイケメン化しつつあるからな…。


僕がそんな分析をしてると、浅葱さんが戸田の腕を掴んだ。


「…戸田くん悪くない。」

「…莉央ちゃん。」


戸田の驚きを含んだ表情を見るに、浅葱さんの言葉に感動してると言うよりは、浅葱さんが人を慰めることが出来るんだということに感動してる気もするが、戸田が感動してるには違いないし、僕もそんなことが出来た浅葱さんに感動したから、頷いておく。


「そうだよ。戸田は悪くない。それに明日は休みだし、週が開けたら熱気も少しは落ち着いてるよ。…多分」

「多分かぁ~。」

「落ち着いてなくてもすぐ夏休み入るし。」

「…だね。」


せっかくクラスが優勝したのに、少し落ち込んだ様子の戸田に同情しながら、僕らは帰路に着いた。

担任の渡辺は戸田を見送ったあと、ちょっとして教室の前に行ってます。


女子「え、先生戸田くんは?」

渡辺「話が終わったら帰ったぞ?」

女子「え、荷物は?」

女子「制服で来てないんじゃない?」

女子「はぁ~何それ!最悪なんだけど!!」

渡辺「気をつけて帰れよ~。」



次は「【番外編】ファンクラブ会長の憂鬱」です。

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