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37.野崎陽菜の信念(のようなもの) side-H

最初は控えめだった女子の応援も試合の後半には全開な感じで、戸田のクラスが勝った時は拍手喝采が起こったほどだ。


男子はそれについていけてない感じと嬉しい感じが半々な様子だ。

勿論戸田は自分のことなのに何処吹く風といった感じで、嬉しそうにクラスメイトと勝利のハイタッチをしていた。



「ねー、もうカッコよすぎん?」

「ヤバい、ガチ恋拗らせそう」

「写真ブレてるけど動画は取れた!送るわ」

「なんで1年だけあんなイケメンいるの?ズルくね?」


などとまだ熱が残る女子たちはその場を解散しながらそれぞれ話が盛り上がっている。

戸田はさっそく、1階付近にいた女子に捕まってる。

内心で戸田が嫌がっているのも察することが出来た。


─今は助ける必要もないか。スルースキル高い方だし、女子から逃げることに頻繁に手を貸して恨みを買うのも違うから、助けどころは見極めないとね。


そう思いながら陽菜は自分の試合がある第2体育館へ向かう。



自分の試合は勝って1回戦を通過してしまった。

バレー部のユイとミサキは大活躍だった。


─バレーって腕の内側に内出血出来たりするから、あんまりボール触りたくないな~。


喜ぶクラスメイトに反応を合わせつつそんなことを思っていたら、何故かコートの傍で一人佇んでいる莉央を見つけた。


「莉央ちゃん!高田くんたちの野球見に行こう~」


高田のクラスの試合はまだちょっと先だけど、場所取りが必須なのがバスケで分かったので、陽菜は、バレー部の友達がいるクラスを応援しに行くらしいユイとミサキと別れて、莉央と早めに動くことにした。



莉央のクラスは1回戦で早々に負けたらしい。

トーナメントなのでこの後は出番なしだ、羨ましい。

莉央の少し髪が乱れているのに気付いたから陽菜はお直しをする、試合で強いボールが肩にぶつかったらしい。


「うん、綺麗になった、ねぇ、写真撮ろう」


スマートフォンをだしてアプリを開いてインカメラで写真を撮る。

「笑って」と言ったらしかめっ面なのに口元をニヨニヨさせた変な笑顔になるのはファミレスで一緒に写真撮った時に時に十分に分かったため、何も言わずにパシャパシャ撮った。


─美人は無表情でも美人だし、無表情と言ってもなんか嬉しそうとか楽しそうなのは染み出てるから大丈夫大丈夫。


私のアプリでは加工は肌の色味くらいで、微々たるものしか設定してない。


─さすがだわ、本当は加工いらないんだろうな。それにしても私、ギリギリ小顔よりで良かった。普通くらいのサイズだったら確実に遠近法使わなきゃいけないとこだわ。


陽菜はそんなことを考えながら沢山写真を撮った。

顔を測って自分のサイズがどの評価に当たるかであと3ミリ長さがあったら標準ゾーンに足を踏み入れてたことは陽菜的には正直誰にも言いたくない事実だった。


グラウンドでは上級生がしているサッカーの試合から少し離れたところで1年の野球の試合が開催されていた、今はまったく興味のないクラスがやってる時間だけど、知り合いの男子たちが「野崎さん見に来てくれたの!?」と言ってきたので陽菜は明るく「頑張ってね!」と声をかけた。


見やすそうなところに二人で腰をかけて試合を見てるような雰囲気を出しながら莉央に話しかけてゆっくり過ごしていると、次の試合に出るためにグラウンドに来た戸田と高田が少し疲れた様子でこちらに近付いてきた。


「さっきはバスケお疲れ様~!」


と手を挙げながら声をかけると「莉央ちゃんの応援のおかげで勝てました~」と戸田は陽菜の手に緩くハイタッチしてきた。


─確実に距離詰めれてる…!と莉央は満足する。



「…浅葱さんさっき大丈夫だった?」


と普段表情変化の薄い方の高田が分かりやすく心配した様子で莉央にそう聞く、聞けば肩にボールが当たった時莉央は転んだらしい。

転んだ、と言うより吹っ飛んだに近い感じだったとか。


─この子話を省略する癖あるわね。


そう思いながら肩を撫でてあげる。



「あ、そうだ!」


と言いながら陽菜は戸田と高田にスマートフォンを向ける。2人は写真を撮られることを察したらしく、ポーズを撮ってくれた。


戸田は遠くからの隠し撮りとかは放置するけど、学校で個人的に分かりやすく写真撮られることや写真を頼まれることに対しては「やめてー」とか「1度いいよって言うとキリがなくて中学の時大変だったから、そういうのは断ってるんだー」などと言い、相手を納得させてから断っていた。


思い返せばバカ女がSNSに上げてた写真も隠し撮りか、目線がもらえてない、拡大とトリミングしたんだろうなってものばかりだった。

そんな警戒心高めの戸田と、写真とかまったく興味の無さそうな変わった高田の2人だと私でも全然断られる可能性もあったけど、受け入れてくれて内心でいつか、と勉強会の時も我慢して温めていた任務をやっと達成した気持ちだ。


─これを許すなら、次はちょっと踏み込んだ内容の話を振っても許されるかもな~。


莉央と違って戸田と高田の扱いはけっこう慎重にしてる陽菜はそんなことを考える。


「思い出だね~!グループに後で送るね!」


と言うと2人は朗らかに頷いていた。



─勿論SNSに勝手にあげるような真似はしない。馬鹿女の二の舞だし、非常識な行為は嫌い。


もちろんあげたら陽菜のSNSを見ていいねを押しながら裏で「いい子だとは思うけど~」と言う便利な枕詞に置いて免罪符がわりにして、チクチク言葉で否定している女ども全員が発狂するだろう。

でも私はそんなチンケなところで報復心や認識欲求を満たすつもりはない。


─だって私の夢は可愛いセレブ妻。


目標に届いた時こそ、くだらない人付き合いから私だけが華麗に脱却出来て、それでこそ報復が達成されたと感じれる。

お前はらは大人になっても一生悪口ばかりの世界で、しょうもないマウントの取り合い、足の引っ張り合い、劣等感拗らせてやつあたりを残ったもの同士でやっとけよと胸を張って思える。

男の手を借りないと報復も出来ないのかと言う意見もあるけとしれないが、陽菜にとって男は報復のためにもっとも便利に活用出来る駒でしかない。

陽菜に使えるのは磨いたルックスと愛嬌と社交術、″女の自立″を目標に報復を果たしたとしても、結局男に対してすることは変わらないとも感じていた。

それならばセレブ妻の方が負担も少なく、その他の欲も埋めれるという安直なようでいて、合理的な選択だった。


そしてそれらを達成できた自分を自分で認めるという形での認識欲求が満たされることが陽菜にとっての最重要なのだ。



それにきっと私がそんなしょうもないことをしないと信じてくれたから写真を撮らせてくれたんだ。

その信頼を裏切りたくはない。


─ま、最近インスタ、男性フォロワー増えたし学校の男子もめっちゃ見てるから、男の子を載せる気がそもそもないんだけど。


印象操作の道具として使っていたSNSは、いつかそれでビジネスが出来るようになるかも?と思うくらいフォロワーが増えている。


─でも別にアイドル売りしたい訳でもないんだよね。変なフォロワー付かないように、戸田くんはダメだけど、違う男友達は普通に友達として載せとくべきかな。


陽菜だってネットリテラシーには気をつけているが、何が元で炎上するか、どんな害悪を引き込んでしまうかは、いくら気をつけても万全では無い。


─そもそも陽菜の中の可愛いセレブ妻像に″インフルエンサー″の要素はないんだよね、自分で稼がなくても夫が稼いでくるのが目標だし。…今鍵かけたところで遅いかなぁ。


そんなことを考えていたら戸田のクラスの野球が始まろうとしていた。

陽菜からしたら球技大会は退屈なものですが、イベントを利用してしっかり任務もこなします。


次は「分からないこと、気づかないこと」です。

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