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30.【番外編】ユイとミサキ

会話文多めになります。

テスト勉強に身も入らなくなった21時過ぎ。

神田ユイは欠伸と伸びをしたまま椅子に仰け反る。



─はぁ~、推しのライブ映像見たい。なんかやらなきゃいけないことがある時こそ推しを摂取したくな現象なんなん?


そんなことを考えていたら、同じく勉強に飽きたのであろうミサキから電話がかかって来た。


ユイはいそいそと散らかったベットに放り投げていたスマートフォンを取り上げる。


「おつー。」

『おつおつー。勉強してた?』

「いや、飽きてたことー。」

『わかる私もー、ちょっと繋いどこーよ。』


ミサキとは幼なじみで小中と一緒に過ごしている。

夜はこうやって通話を繋いだまま勉強したり各々好きなことをして過ごすことをよくしている。



『ねー、陽菜から聞いたんだけど、陽菜今回のテスト、戸田くんのグループに誘われて一緒に勉強会するんだって!』

「マジ!?うわ、なにそれ!羨ま…いや、それよりやっぱり戸田くんて陽菜のこと…!?」

『ねーーーー!!絶対そうだって!!!』

「うわぁ、なんかキュンキュンくるね。」

『ね、ヤバい。まぁ私としては高田×戸田が最推しなんだけど。」

「腐女子のカプ厨突然出してくんのやめな~?」

『ぶはっ』

「気持ちは分かるけどさ~、私も戸田くんには高校いる間だけでいいから恋愛禁止でいて欲しい。あ、陽菜相手ならいいんだよ?戸田くんが陽菜にメロついてんのを最前見れるならむしろご褒美…」

『うーん、芳しきドルオタ臭。』

「いやドルオタ臭も出ちゃうでしょ。あんなとんでもないイケメン相手なら。正直彼の全生態を知りたい。」

「あははははっ!わかるっ!」


ユイはものアイドルグループにハマっていて、ミサキはBL好きなオタクだ。

畑は違うけど、何かにハマっていること、倒錯的な考えをすることに対してはものすごく気が合う2人だった。


『あ、でも戸田くんじゃなくて浅葱さんに誘われたのかも!陽菜最近仲良いじゃん?』

「あー、浅葱さんかぁ。」


会話のテンポは遅すぎるけど、綺麗な子だよなぁとユイはボンヤリ思う。

戸田くんの好きな子が浅葱さんの可能性もあるから、そこに関してはユイの望み的に考えるとぐぬぬとなる女の子だ。


『なんか変わった子だから人を誘ったりするかは謎だけど、陽菜はなんか仲良くしてるじゃん。』

「ミサキあんた…陽菜が浅葱さんと仲良くなったの嫌なんでしょ。」


なんとなく″面白くなさそうに喋ってるな″とミサキに感じたユイはそう言う。


『いっ!嫌とかじゃないよ!?!?』

「図星じゃぁ~ん。」

『ほんと違うってば!ちょっと不安なだけ。それに陽菜が色んなとこから人気で引っ張りだこなのはもう分かってるし…言うてまだうちらも付き合い浅いからそんなん言う資格はないし…」


ミサキの言葉がだんだんしりすぼみになっていくのを聞いて、ユイはミサキの気持ちを察する。


「…高校入ってからすごいいい感じだから、色々変わって欲しくないミサキの気持ちは分かるよ。」

『…うん。』

「中学ん時、地味にストレスだったもんね。」

『…地味ってレベルじゃなかったでしょあれは。』


中学の時に所属してたグループは、6人組で、誰か一人が学校を休んだり、トイレにいっただけでもいない人間の悪口をすかさず言うようなグループだった。

抜け出したくても上手な抜け出し方が分からなかったし、下手な抜け方でもしたらグループの子が騒ぎ出し、悪者にされ、下手したらクラスの女子全員からハブられる流れになる可能性だってある。

それに他のグループもやってることは似たようなもんだと知っていた。

だから幼なじみでもあり、本当は平和で居たいと言う似た価値観を持っていたユイとミサキはそんな中で隠れて結託を強めていった。


「でもあれは私達も悪いでしょ、クラスの中心でグループの中心だったアヤが怖くて迎合してたとこあるじゃん。」

『うぅ…、それはそうだけども…。』

「思ってもない悪口に乗っかったこともあるし。」

『…うん。』

「率先はしてなくても結果的に誰かをハブるのに参加してたし。」

『それは反省してる。』

「だよね、私も。」

『卑怯で卑屈でさ、愛想笑いして、自分守るために他の子犠牲にしたり見て見ぬふりして…、自分のこと嫌いになるばっかりだったもんあの頃…。』

「私も。」


二人でしんみりとしてしまう。

空気を変えるためにユイは続ける。


「でも高校進学であの子達とは離れてさ、新しく関わる人達そういうの全くなくて、ほんと変わったよね~最高なんだが。」

『マジでそれ!まずクラスの雰囲気良すぎる!嫌なやついないし!!』

「いや~、嫌な奴いないってか、陽菜の影響で嫌なやつも嫌なとこ出せないんだよ多分」

『出た!ユイの神考察。はぁ~絶対それじゃん。』


高校から仲良くなった、陽菜。

入学時から一際目立ってたクラスで1番可愛い女の子、いつもニコニコしていて、仕草とか、笑顔とか、とにかく守って上げたくなるような雰囲気がある。

愛らしく人当たりが良さそうな空気がある彼女を、ミサキと二人で眺めていたらバチッと目が合った時、少し驚いたような目元が、その後すぐふわっと優しい笑みを含んだのを見て、つい声をかけたけど、本当にあの時声をかけて正解だったとユイは今でも思ってた。


『けっこう一緒に過ごしてるけど、陽菜が人の悪口言ってるのまだ1回も聞いてない』

「すごいよね、いや、もしかしたらそれが普通なのか?私たちの感覚が汚れちまってるだけで」

『ぶははっ!やめてよ!』


ミサキの笑いの沸点は低い。

ユイの沸点ももちろん低く、辛かった時期も、その現状をこういう下らないノリで自虐ネタにしたりして、二人で笑って乗り越えていた。


「入学したての時、クラスの子がどんな人がタイプか陽菜に聞いたの覚えてる?」

『あぁ~周りの男子がピタッと静かになったよねあの時。』

「そそ、陽菜が″好み…はまだ分かんないけど、人の悪口言う人は大っ嫌い!″って言い切った時、クラスの子達一瞬固まったけど″わかるー!″みたいな流れになったじゃん」


異性の好みを聞いていたのに、女の子たちが一瞬バツの悪い空気になったのはかなり印象的だった。


『あったねぇ、陽菜穏やかな感じなのに、そういうのハッキリ言うんだって意外だった。』

「なんか陽菜がそういうこと嫌うし、自分が嫌う行為をちゃんとしないから、クラスの子達もそういうの違うよねみたいな空気になってるよね。」

『うんうん!陽菜に嫌われたらクラスの男子ほぼ全員敵に回すの目に見えてるしね』


そう聞くと陽菜の人気ちょっと恐ろしいな、とユイは思う。

ただ、さっきは″陽菜の影響で嫌な奴も嫌なこと出来ない″と言ったものの、本当は陽菜のその一言に皆安心した可能性もあるんじゃないかな、とユイは考えていた。

本当は他の女の子達も皆、悪口の言い合いとかマウントとか、そういうのに疲れ切っていて、陽菜の周りではそれがなくなるから、陽菜の周りに凄く人が集まるんじゃないかな、と。



「私自分がドルオタなのクラスメイトに話せる気がしてるもん。中学まではマイナーなグループ推してることを絶対裏でバカにされるのが分かって、そんなん言われてるの聞いたら耐えられないから誰にも言ってなかったけど。」

『わかる~私も腐女子なのペロッと言いそうになる~。』

「いや、ミサキのは私のより確実にハードル高いだろ。簡単にペロッとしちゃダメなやつ」

『正解っ』


そう言ってまたくだらない事で笑い合う。


「陽菜はさ、他に仲良しができたからって私たちを邪険にするような子じゃないと思うんだよね。そもそも今は浅葱さんもクラスは違うし。」

『そっか、陽菜と一緒のクラスな限りは大丈夫だよね…そうなるとクラス替えが怖いんだけど。』

「今から来年の心配してどーすんの。」

『だって高校でユイと一緒のクラスになれただけでも奇跡なのに…陽菜みたいな可愛くて性格いい子と仲良くしてもらえるとか、もうこんなラッキー私の人生でなかなか起こらないってばぁ~!!」


泣きそうな声のミサキに笑ってしまう。


「確かにね、でも来年陽菜とクラスが離れても、私らが別々のクラスになっても楽しく過ごせるように、私ら自身が変わらないとだよ。自分らがしっかりして、中学の時みたいに嫌なことに無理矢理付き合って、加害者になるような真似は二度としないようにしなきゃ。陽菜が自然と作ってくれてる環境に甘えてばっかじゃ駄目だと思う」

『ぐぅ正論。』

「なにそれ。」


ふざけたミサキの返しにまた二人でどっと笑う。


不安がってるミサキにはなんだが、ユイはなんとなく大丈夫な気がした。

中学の時だって辛くてもダルくてもミサキがいるから大丈夫だと思ってた。

高校に入ってからは女の子のお手本になるような子と知り合えて、悪口以外の話を気兼ねなく楽しく話せるクラスメイトも出来た。

今の二人ならこれからきっと良い方に向かっていけると、そんな気持ちでいっぱいだった。

ユイとミサキは似た者同士ですが、

ユイがポジディブでミサキはネガティブです。


2人は自発的に他人を虐げるタイプではありませんが、陽菜はトラウマとその未熟さ故に警戒しすぎてそれを見抜けず誤解してます。

誤解は陽菜の成長と共に解けるはずです。


次は「期末テストと黒歴史」です。

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