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28.居場所 side-R

─こんなに真面目にお勉強したのは初めてかも。


宿題以外の勉強を家でしたことの無い莉央には、1時間以上勉強することが初めてで、とても新鮮なものだった。テーブルの真ん中に置いてあった陽菜が持ってきたらしい手土産のチョコレートがやたら美味しく感じた。



お昼は4人で戸田の家の近くのファミレスに行くことになった。


戸田が親に友達が家に来て勉強会をすると話したらしく「そしたら小遣い渡されたからこれでお昼食べよう~」と言われ、皆ご馳走になることになった。

友達と勉強会と母に伝えた時にお小遣いをもらったが使うことないみたいだから帰ったら返そうと莉央はぼんやり思った。


何を食べようという話になった時、高田はご馳走になるんだから戸田が食べたいので、と言い、戸田は女の子達が食べたいので、と言い近場の美味しいらしい飲食店を何種類か提案し、陽菜は「あんまり高いお店をご馳走になるのは申し訳ないからファミレスとかどうかな?」と言い、莉央が「…ファミレス」と呟いたことから莉央がファミレスに一度も行ったことがないことが発覚し、ファミレスに行くことになった。



莉央の故郷は田舎すぎて町に喫茶店はあったが、ファミリーレストランが存在しなかった。

こちらに来てから母と外食を全くしていないわけではないが、母との外食は母の好きなお店となり、母は少しこじゃれたレストランや和食屋を好むので莉央はファミレスはファストフードに馴染みがなかったのだ。

バラエティ番組とかでは見たことがある名前のファミレスに入った莉央はゆっくりキョロキョロと店内を見渡した。


適当な席で4人で座る、今度は陽菜が隣だったため、莉央は嬉しく思った。

戸田にメニューを渡されて、沢山のメニューに目移りするが結局好物のハンバーグに視点が定まる。


「俺はオムライスと唐揚げにしよ~、直哉は?」

「…ミートソースのパスタかな」

「私は迷うなぁ…莉央ちゃんは…ほんと好きだよねハンバーグ。私もハンバーグにしようかな!」


同じものを食べることに内心で喜びながら、莉央はご飯が運ばれてくるのを待った。


皆がワイワイとさっきまでの勉強の話をしているのをぼんやり眺める。

話を聞いていなくても、聞いているけど参加しなくても、参加しても、この人たちは許してくれる、気にしない。


「はい、莉央ちゃん、こっち見て!」


食後に陽菜がこちらにスマートフォンを向けてくる。

ぐっと肩を近付けて、ここのレンズを見て笑ってと言われたら、流石の莉央も写真を撮るんだと気付く。


「ふふ、ねぇ、莉央ちゃんこの表情なに!」


そう言って陽菜は笑う。画面を覗き込んだ戸田は「すごい顔してる…」と笑いを堪えていて、高田はいつものスンっとした表情で「僕も笑顔作ろうとしたらこんな感じなるから気持ちわかる」と言っていた。


「も1回撮ろ!」

「あ~また!」

「まってもうこれ無理じゃない?」

「いつもの顔でいいよ、いつもの顔して!」

「あ、これ可愛い、これいいね。」


などと言いながらパシャパシャと写真を取る。

自分が写真に写るのを上手くやれてないのだろうけど、誰も険悪になる感じがなく、むしろ楽しそうにしているのを莉央は不思議に思った。



家に帰って、莉央は一人で送られてきた写真をずっと見返す。


─この人達とずっと一緒にいたいな。


今まで自分が″したい″と思うことは、故郷に帰ること、それだけだった。


新しく今日、いや、ちょっと前からそう思っていたのかもしれないこの気持ち。

それは故郷に帰ることよりも大きく、次第に胸を占めていくことになるのだろうなという予感だけは、莉央も感じることが出来た。

基本的に莉央は周りの人に恵まれているのですが、

分かりやすい自分の居場所を見つけてやっと、それに気付けます。

そして今の莉央には自分の居場所を大事にする能力は勿論ありません。

莉央編は終わりです。


次は「勉強会」です。

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