26.一番のきらきら side-R
莉央には戸田と高田の2人とは別に特別に気になる人が出来た。
いつのも時間の電車に乗り、駅に着き、改札を出て西出口を出ると、沢山が行き交う駅の中でも一際目立つ女の子が立っている。
誰かを探すようにこちらを見て、莉央見つけると「莉央ちゃん!おはよっ」と元気に、笑顔で挨拶をしてくる。
彼女の名前は野崎陽菜。
雪の中に咲くスノードロップの様に可憐で、沢を流れる雪解け水のように清廉で、それなのに、どこか燃える薪から飛び爆ぜる火花の様な雰囲気を持つ同級生だ。
初めて会った時から、莉央は彼女のことが気になって仕方なかった。
彼女の目のまたたきやその表情が、ふわふわと揺れる髪や手の動き、その仕草の全てに何故か目を奪われていた。
そして莉央の目をじっと見つめてくるその瞳が、最初に触れられた暖かい手の感触が、ずっと忘れられずにいた。
そしてそんな忘れられない子に、先日朝の登校時に偶然会って、いつもの様に明るく話しかけられて一緒に登校したのだ。
莉央はその時に何がきっかけて戸田と高田と仲良くなったのかを陽菜に聞かれて、靴箱での件を話した。
「そんな酷いことする人がいるなんて…陽菜も一緒に莉央ちゃんを守るよ!」
「……あ、りがとう。」
「学校の時と帰りは戸田くん達が近くにいてくれるんだよね?なら朝の登校は私がそばに居るよ!莉央ちゃん電車通勤だから、朝待ち合わせして学校に行こう!」
そんな陽菜の提案で、莉央と陽菜は一緒に通学することになったのだ。
莉央は陽菜に連絡先を聞かれて、高校になって母に持たされたスマートフォンの番号を教えると、LINEのアカウントはないのかと聞かれる。
莉央が持っていないと言うと陽菜はアカウントを手際よく作って、簡単な使い方を莉央に教えて、連絡先を共有してくれた。
「これでもっと簡単に連絡が取れるから、もし電車遅れるとか休むとかの時は連絡してね!」と陽菜が言ったので莉央は頷いた。
そしてそれから莉央と陽菜は駅で待ち合わせてから一緒に登校するのが日課になったのだ。
それから莉央は毎晩寝る前、明日がくるのがとても待ち遠しくなる。
莉央は陽菜に喋るのが苦手なのか聞かれて、からかわれた訛りを気にしているとこを伝えた。
陽菜珍しく眉間に皺を寄せた表情をした「下らない」と吐き捨てるように言った。
莉央は自分が下らないと言われたのかと思って血の気が引いた。
同級生の女子に意地悪なことを言われたり、告白を断った男子にすげなくされても、困りはしても傷つくとかはなかったのに、莉央は陽菜に否定されるのは辛いと感じていた。
ただ、その不安は杞憂で、すぐに莉央が真面目な顔で「そんな下らないことでからかってくる人のことなんか気にしなくていいよ、普通に喋りなよ。私は絶対馬鹿にしたりなんかしないから」と言われる。
すぐに意識を変えるのは莉央にとっては難しいことだったけど、陽菜に言われた言葉が嬉しかったので気にしないように意識しようと莉央は意気込んだ。
ただ、陽菜と話しているとその意気込みも出番があまりない。
陽菜との会話は莉央にとってはさらに不思議だった。
戸田や高田とはまた違い、陽菜は話題豊富で、けっこう早口で色々と喋るのだが、莉央が相槌を打つだけで会話が進むのだ。
質問されて答えを急かされないのも勿論だが、莉央がわからないなと思った瞬間に「わかんない?」と思考を当ててきて、そしてわかる方に会話を変えるのだ。
莉央は陽菜との会話では、ついて行くのに苦労がなく、相手に嫌がられてもいない空気に安心して相槌を打つことが出来た。
誰よりも、何よりも、きらきら、くるくるとしているのに自分を置いていかない世界に、莉央は初めて触れた気がした。
「莉央ちゃんは好きな男の子とかいないの?」
「………いない。」
「そうなの?可愛いから告白とかされるでしょ?」
陽菜は莉央によく可愛いと言い、それを言われる度に莉央は″そんなことない″と″嬉しい″の気持ちで揺れる。
─陽菜、ちゃんの方がずっとずっと可愛い。
「…されて、も、わからない。」
「あ~そっかぁ。じゃあ一緒にいる戸田くんとか高田くんは??」
「……2人は、好き だけど……」
「恋愛感情とは違う?」
陽菜はこうやって莉央の答えを先読みする、そしてそれが全部合ってるので莉央はその度に素直に頷いていた。
「そっかそっか~。でも戸田くんとかかっこいいと思わない?」
「………?」
「思わないのね。」
と言われまた莉央は頷く。
「…あ、高田くんは、つららみたいで かっこいい。」
「…うん、わからないかも。でもそれが恋愛とは違うって事はなんかわかる」
と言って陽菜はクスクスと笑う。
「………野崎 さんは?」
「私?私~…私も恋愛とかわかんない」
そう言って笑った陽菜の笑顔がいつものそれより幼く見えて、そんな陽菜もすごく可愛いと莉央は思う。
陽菜は野心を持って莉央に近付き色々探ってますが、もちろん莉央はそんなことには気付きません。
次は「莉央の学習」です。




