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25.二人の男の子 side-R

ある日、委員会の帰りに莉央の靴が汚されていた。


靴箱の外から見覚えのある女子2人がこちらを見ていることに莉央は気付く。


「見てあれ!ウケる」

「やり過ぎだって」

「調子乗ってるから~」

「ね、もう行こ」


2人の女子の方をじっと見ると、クスクスと楽しそうに笑いながら去っていった。


莉央はあの2人に中学の時から何かある度に意地悪なことを言われていて、特に男の子から告白されたりすると当たりが強くなるのだが、莉央本人は何が原因なのかよくわかっていなかった。

いつも通り、自分が上手く人付き合い出来ないのをバカにされているのだろうと、ぼんやり考えていた。

先週彼女らのクラスの、人気のある男の子に連絡先を聞かれたことがこの泥靴の主な原因となっているのだが、それを知る由もない。


靴を汚されたことに対して、その場で悲しいとか傷付くみたいな感情は起こらなかった。

まだ綺麗だった上履きの、もう残り少ない真っ白な部分と泥水で汚れてしまった場所の色のコントラストをじっと見て、指先で泥水を白い所に伸ばしたら、模様がかけるかな?などとぼんやり考えていて、そんな遊びをする時間じゃないことに気付いたら、その後は「どうやって帰ろう…?」ということで悩んでしまって、他人から明らかな攻撃をされたと言う事実に気付くまでは、けっこうなタイムラグが発生したからだ。



そして、靴を汚されたことによって、莉央は高田直哉と戸田啓吾と縁が繋がることになったのだ。


莉央にとって、2人は不思議な存在だった。


きらきらしているのに、くるくるはしていない、莉央にとって、とてもそこに″存在している″と言う感覚が強くある人達だと思った。


─朝日で光るつららみたいな高田くんに、静かな夜にチラつく雪みたいな戸田くん。


普通に話しているのに、置いていかれている感覚がしなくて、上手く話せない莉央に困った顔もしない2人に莉央は嬉しくなった。

困っているとこを助けてくれて、優しくて、それでいて莉央を好きだとか付き合いたいとかも言ってくる気配もない。

どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう、と考えたけどその理由は莉央には思いつなかった。



ある日の放課後、莉央は違うクラスの知らない男子から呼び出された。

莉央は好意を告げられ、友達から、と連絡先を聞かれたのを断ったのだが、今回の告白相手ははいつもと違って少ししつこく強引だった。

頑張って断ってるのに、何を言っても聞いてくれないし、戸田か高田と付き合ってるのかとか聞いてくきたのでそれに首を振ったら「じゃあなんで断るんだ!」と言われる。


どうしよう…と莉央が困っていると、しつこくしていた男の顔色が急に変わり、さっきまで莉央を見ていた視線も後方にズレていた。


莉央は疑問に思い、その視線の方に振り返ると後ろに笑顔の戸田が立っていた。

戸田は莉央の肩にそっと手を置いて「もう話は終わったよね?」と笑顔で莉央に告白してきた相手に言うと相手は大きく頷いて素早く去っていった。



「なかなか戻ってこないから心配したよ~、モテるのも大変だね~」


と言いながら戸田はパッと莉央の肩から手を離す。


「あんまりしつこくされて困ったらすぐ俺たちにいいなね」


などと戸田は話していたが、莉央の耳には入らず、莉央は肩を組まれた時からその大きな手に、何かを感じていて、じっと戸田の手を見つめ続けていた。


「…ん?…どうしたの??」

「………頭を 撫でて 欲しい。」


莉央は咄嗟に口をついてそう言ってしまう。


いつも余裕のある戸田が驚いた表情をした後に、ものすごく困った顔になったのを見て、「これは言ってはいけないことだったんだ」と莉央は気付いて目を伏せた。


─また失敗してしまったんだ。また変な子だと思われる。…嫌われるのかな。


そんな考えが頭でグルグルしていると、戸田がぎこちなく、優しく莉央の頭を撫でてきた。


戸田と父とは全然違う、それは莉央もわかっていたけど、でもその大きな手にあの日の別れを思い出して、莉央はほろり、と涙を零した。

もちろん戸田はそれを見て″え、俺が泣かせちゃったの!?″と言った具合に固まったのだが、莉央はそれに気付かずに目をつぶった。


「…おとうさん。」


莉央がそう呟くと、戸田は頭を撫でる手はそのままに、もう片方の手で自分のポケットからタオル地のハンカチを出して、ほんの少しだけ零してしまった涙が流れた莉央の頬を軽く拭いた。


少し気持ちが落ち着いたので、莉央は目を開けて戸田を見上げる


「…ごめんね。」


困らせてしまったことの謝罪のつもりだったが、戸田は気にしてないように優しく笑って「もう落ち着いた?」と心配の声を莉央にかけた。


─…優しい人。


そう思いながら莉央は頷く。

教室で2人を待つ高田の所に戻りがてら、


「勝手に肩を組んだ俺が言うのもなんだけどさ~、頭撫でるとか、自分の体に触れさせる行為を、してくれって男に頼むのはあんまりしないようにね?なんて言うか~、莉央ちゃんは特にしちゃダメだよ?」


と釘を刺されたので、戸田の困った顔から言ってはいけないことなのだと学習していた莉央はしっかり頷いたが、戸田はそれでも不安げな顔をしていた。


でもそう言いながらも戸田はそれから定期的に、何かのタイミングで莉央の頭を撫でてくれるようになった。

莉央はその度に懐かしく、そして満たされた気持ちになるのだった。

戸田に撫でられ思い出を満たしてもらった感情と共に、″人肌″の味をしめてしまいます。なんなら高田くんも撫でてくれないかな…くらい思ってます。

ビッチのように見えますが、そこに性的欲求は皆無です。

戸田のあの注意のおかげで、これから先の莉央の人生の男性トラブルは大分減ります。戸田グッジョブ。


次は「一番のキラキラ」です。

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