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24.莉央の世界 side-R

莉央ちゃん視点です。


きらきら、くるくると世界が回る。

沢山の色がついた世界が、

きらきら、くるくると。


きらきら、くるくる。

目まぐるしくて、

沢山の色が混じり合う。

私には触れないきれいな世界。




中学3年に入る頃、莉央は両親の離婚で北海道から本州へ引っ越すことになった。


元々大手出版会社のやりて編集としてバリバリはたらいていた母が、出張先で父に一目惚れして押しかけ女房として父の家に乗り込んできた話を莉央は祖母から聞いていた。

行動的な莉央の母は冷めた時も行動的だったのか、仕事に復帰するために、莉央を連れて自分の地元へと帰ることを迷いなく決めてすぐさま動いた。


莉央の父はとても寡黙な人間で、最後に家を出る時の見送りでも、「元気で」以外の会話は無かったが、最後に莉央頭をポンポンと撫でた。

褒めてくれる時や、雪かきを手伝うと必ず最後にそうしてくれたのと同じ行動に莉央はとても寂しさを感じたのを覚えている。


莉央の母は特に感慨もなさそうにその地を去り、地元に戻ってからはとても元々の会社に復帰して、生き生きと働き出した。

離婚前に夫と上手くいってなかっただけで、娘に対して愛情のない親ではなかったので莉央も母親が楽しそうなのを嬉しく思っていたが、いつまでも地元の雪景色と、車の車窓から見える、見送る父がとんどん小さくなっていく光景を忘れることは出来なかった。


引越し先は莉央が故郷では見たことない、大きなビルが沢山並ぶ街だった。

故郷の自然の美しさも、新しい土地の人工的な街の美しさも、莉央にとってはどちらも楽しいもので、新しい世界の佇まいを吸収する楽しさは、父との離別による寂しさを少しだけ慰めてくれた。


転校した中学は、故郷の中学校よりも沢山生徒がいて、学生の喧騒は明るく、騒がしく、元々莉央がいた、どこか閉鎖的で、暗いようでいてでもその実とても穏やかだった過去の環境との差異に莉央は少し戸惑った。


最初の方は、クラスの女の子たちも歓迎して莉央に話しかけてくれる。

莉央にとってその子たちの会話はとても早口に聞こえ、返事をしようと思った頃にはどんどんと会話の内容が変わり、簡単についていけるものではなかった。

頑張ろうとはしたが、気の強そうな女の子たちに、言葉の訛りをバカにされてから莉央はさらに上手に会話出来なくなってしまった。

その内に寄ってくる人もいなくなって、莉央は一人で過ごすようになった。


少し寂しい気もしたけれど、あの恐ろしいほど早い会話の濁流に飲み込まれずにすむのに安心した部分もあった。



母はまだ仕事と夕飯の買い物をして帰ってくるから、莉央が帰宅するより遅く帰ってくる。

学校から帰った莉央は1人で、リビングでぼんやりとテレビを見ていた。

故郷にいるころから暇になると絵を描いて過ごすのが好きだったけど、何故かそんな気持ちにはならなかった。

昔は家に帰ると祖母がいて、買い物から帰った母がいて、仕事から帰った父と皆でご飯を食べていたのに。

急な生活の変化に、心がついていっていないこと、それに自覚があるような、ないような感覚で莉央はぼんやりとしていた。


変わってしまったからと言って自分にはどうすることも出来ない、炬燵で温まり相撲を見る祖母も、眉間に皺を寄せて静かに何かの資料を読む父も、帰り道笑い合った友達も、キンと冷えて澄んだ空気を思いっきり吸い込むことも、深く積もった雪を足で踏みしだく感覚も、もう取り戻すことは出来ないのだ。


街には光と音が溢れていて、クラスメイトもきらきらと明るく笑顔に溢れているのに、莉央だけがそこに紛れ込めないまま、あの雪景色の中に取り残されて抜け出せない、いや、抜け出したくないと思っていることにも自覚のない莉央は、ただ毎日をやり過ごすことしか出来なかった。


高校に入学してからも、莉央は変わらなかった。

故郷に帰りたいと言う気持ちは常に自分にまとわりついていたが、毎日充実してそうな母を見ると、その気持ちを表に出す気にはならなかった。



自覚はないが莉央は優れた容姿をしており、それは男子生徒を惹き付けた。

引っ越したあとの中学校でも、知らない男子に好意を寄せられたりして、その度に莉央は少し困っていた。

離れていった女の子達と違って自分が変でも優しくしてたり、話してくれると思っても、ある日突然好きだと言われてしまったりして、どうすればいいか分からないくなるのだ。


─故郷の友達は、男の子も女の子もこんな風になることはなかったのにな。


と莉央はまた寂しいような、虚しいような気持ちになるが、だが、そうなったところで莉央はその感情も、起こったことに対する対処も″どうすればいいのか″が壊滅的に分からなかった。



初めて告白された時、莉央は″断る″と言う選択肢があることすら知らなくて黙っていたため、相手から「あの、返事は…?」と困ったように催促をされた。

「返事…?」と返すと、その子は丁寧に自分が好きだと言う気持ちを伝えて付き合ってくれと頼んだのだから、付き合ってくれるならYES、無理ならNOと答えて欲しいと説明してくれた。

「付き合うって…?」と言うと項垂れていたが、色々教えてもらった結果NOのお返事を選ぶこととなり、それ以降、同じことを言ってきた男子に莉央は同じNOを答え続けていた。

NOと答えると相手が悲しそうにしたり、機嫌悪そうにしたり、気まずそうにするため、莉央はその度に嫌な気持ちになっていた。


なるべく関わりたくないと思った莉央は、高校に入ってからも見ず知らずの人に連絡先を聞かれた時も、告白の応用を聞かせるようにNOと答えることにした。

莉央の両親の離婚理由は、父親の不倫です。

母親の意向で莉央には離婚理由を知らせない形となってます。


莉央の母は莉央の前で元気に見せてただけで、10年以上ぶりの社会復帰に当たり前に苦労してます。

莉央は他人の本質に対して鋭いところもありますが、人の感情の機微は読み取れません。


次は「二人の男の子」です。

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