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22.一度繋がった縁ですもの

浅葱さんと野崎さんはいつの間にか朝一緒に登校するようになっていた。


駅の先にある商店街に家がある野崎さんと駅から徒歩通学してる浅葱さんは通学路が同じで、野崎さんが浅葱さんに声をかけたらしい。

会話成立するのか?と思うが、その不安の根源は全て浅葱さんにあるだけなので、結局は野崎さんが相手なら成立するんだろうな、と言う感想に落ち着く。



靴箱の事件から1週間少し経ったが、今のところいじめの再発はなく、僕の警戒心も少し緩んでいるところだ。


─そういえばこの3人で過ごす状況はいつまで継続させる感じなんだろうか?


いじめが完全になくなった・もう大丈夫なんじゃね?と言った感覚を持つのは軽率な気がする。

それに戸田を防御に使ったら戸田と疎遠になった時点でまたいじめが再発するのではと言う懸念点も出てくる。

自分らの作戦は結構ら考え無しの見切り発車だったのだなと気付く、ただあの時はそれが最善だし他に手があったとも思えない。


話は戻るが、いじめがなくなったと仮定したとしても、もう出来てしまった縁のようなものを、解決したから終わりです明日から前みたいなクラスメイトに戻ります、みたいなことにするのってなんだか違うと僕は思った。

浅葱さんは休み時間や昼休み、なにか空いた時間が出来ると呼ばなくてもスススッと僕らの近くに来るようになった。

それがなんだか可愛く思える。


3人で裏庭でお昼を食べた時に聞いたが浅葱さんは中3の時に北海道から転校してきたらしくて、言葉の訛りをすごく気にしていたらしいことを話してくれた。

道理で「私・ご飯・食べる」みたいな単語を区切ったような独特な話し方をしていた訳だと思った。

そんなの気にしないから普通に喋りなよって僕と戸田で言った時、はにかんだ笑顔は流石美少女と言わしめる美しさで少しドキッとした。

それからは相変わらず静かな方ではあるが前と比べると確実に口数が増えたし、表情も前ほど固くない。と言うかむしろたまに口空いてない?と思うほど緩んでいる。

それもなんだか可愛く思える。


そう、情が湧いたのだ。


そんなに長い時間一緒にいる訳では無いが、戸田との関係性に居心地の良さを感じてるのと同じくらい、浅葱さんを含む今のこの人間関係を、問題が解決したからもう必要ないとは思えないほど、僕は好ましく感じていた。

約束もなくいつも一緒に過ごすのが当たり前な相手なんか戸田と仲良くなるまでは1人もいなかった僕には特にそう感じた。


戸田だってそうなんじゃないかな、となんとなく僕は感じている。

浅葱さんが僕らに懐いてくれたのはいいが、やっぱりちょっとあの子はズレてるのか、近付いてきた時の距離が異様に近い時がある。

僕はそんな時は緊張しつつそれを表に出さないように振る舞うのに必死だ。

戸田は女の子にそんなことされたらサラッとかわして逃げそうなものなのに、浅葱さん相手だと受け入れてるように見える。


むしろ1度僕と戸田が椅子に座って喋っている時に、立ったままの浅葱さんを見て戸田は、自分の椅子に深く座り直して「座る?」と自分の目の前のスペース、つまり自分の股の間に浅葱さんを座らせようとした事がある。

浅葱さんも少しの間の後、頷いて、普通に座ろうとするもんだから「待った待った待った」と止めて、僕が近くの席から椅子を借りて事なきを得たことがある。

あれは今思えば止めない方が面白かったのかもしれない、常識的な自分を恨めしく思うが、あの行為で何人かの女子の命を救ったには違いないと思った。


それになんたって戸田は、ここ最近浅葱さんの頭を当たり前の様に撫でている。

さすがモテ男、動作が自然だ。僕が″浅葱さんの頭を撫でる″を実行したら、身長差的にも僕のやれなさ的にもそれはもうぎこちなくなることが想像できる。


戸田に感心すると同時に、やっぱりラブコメ展開!?こっちでロマンス的なやつが芽生えたのか!?と一瞬ワクワクしたがどう考えても二人の間に恋愛のときめきはなく、見た感じ猫を撫でている時の人間と、撫でられている時の猫の雰囲気だ。

僕が浅葱さんに妹味(いもうとみ)を感じてるのと同様に、戸田は懐いた野生動物として彼女を見ているのでは…と思ったがこれは口にするべきではないなと思い僕は黙って2人を見守っていた。



僕が黙っていても周りは黙っていない。

普段ぼちぼち喋るくらいのクラスメイトの男子に「戸田くんと浅葱さんて付き合ってるの?」と聞かれる。

珍しい質問だなと思っていたら、仲良い女子達に聞いてこいと強要されたと愚痴られて僕は同情した。


「全然付き合ってないよ。」


端的にそう答えると、そいつは「良かった…」と答え、聞けと命令した女子たちの元に戻り結果を伝えていた。

良かった…とはきっと答えが″付き合ってる″だと発狂する女子たちの愚痴に付き合うことになるからだろう。

女子たちは喜びあっていたが、その後「じゃあ、あの2人の雰囲気はなんだ?」となっており、気持ちはわかるけど、野生動物なんだよ、野生動物、と僕は内心でほくそ笑んだ。



今日は帰りのホームルームで7月の期末試験あとにある球技大会の参加種目決めがあった。


男子は野球とバスケット、女子はバレーボールとバスケットで希望者を募る。人数に偏りが出たらジャンケンで争う様だ。

小さい球を扱う球技が得意だと言ったが、野球だけは別物だと感じている僕にはその二択のどちらにも旨味を感じなかったが、バスケよりはマシだという理由で野球を選択した。


戸田も「それなら俺も野球に~」と野球を選択しようとしていたが、体育の授業でバスケの上手さを把握され、身体測定の結果を知っている体育委員やクラスメイトにいや、バスケにしてくれ→と言うか両方出たらどうですか?→いや両方出てくださいお願いします!と言ったふうに頼み込まれ、バスケメイン出場、野球では助っ人要因として登録されていた。


最初クラスの男子生徒ほぼ全員から目をそらされていた様子からは想像出来ないほど戸田がクラスに馴染んでいるのを感じた。


─もともと絡んでみたらかなり良い奴ではあるから、怖くないって分かったら一気に全性別からの人気者ポジション取れるんだろな。


などと感心する。



ちなみに浅葱さんはバレーボールを選んでいた。


─体育の授業見てて気付いたんだけど、浅葱さん、運動音痴っぽいんだよなぁ。


バスケットの時、一度もボールに触れることなく、コートの端をポテポテと人の動きの流れに合わせて行ったり来たりしてるのを何度か見かけた。

僕からしたらとても共感できる行動だ。

彼女はとても運動神経の良さそうなしなやかそうな体躯をしてるのに飛んだギャップの持ち主である。



うちの高校の球技大会や体育祭はそれなりに気合いが入っているらしく、クラス委員で決める時の人数も3名と他の委員より人数が多い。

これから約1ヶ月ないくらいの期間、球技大会までの体育の授業も全てここで選択した競技の練習になるらしい。

担任教師と体育委員の気合いの入れように少し引いてしまうが、ここで冷笑系に走るような愚かな真似はしたくないので、それなりにこの空気にのる雰囲気は出しておこうと思った。

戸田が女の子の髪を撫でる絵はかなり破壊力があるので、多くの女の子が萌え死んでます。

もちろん、嫉妬に狂う子も生まれます。



次は「ほんと大丈夫かこの子」です。

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