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19.乗りかかった船的な感じで

「浅葱さん、ごめんね、友達がきちゃって。」


リビングに入ってそう言うと浅葱さんは無言で立ち上がってカバンと手に取り帰ろうとする。


「待って待って、今靴乾燥中だから座って。」


と言うと、少しの間の後、すとん、と大人しく座った。

自己主張なく、しっかり指示を聞いてくれる人だなぁと僕は思う。


「クラス一緒だけど、喋るの初めましてだね~」と戸田は明るく笑顔で声をかけた。


「……はじめまして」


と浅葱さんが無愛想に答えて静けさがくる。

この空気で30分耐え切れるのか?と思って戸田を見たが、全く気にした様子もなく「靴汚されるとか大変だったね~」と話しかけ続けた。強い。


ちなみに、戸田には玄関で軽く事情を話している。



「戸田、この件をどうしたいか、浅葱さんはまだ決めかねているらしいから他の人に言わないでね」


最初は僕としか喋らなかった戸田もここ最近はクラスの男子と会話する機会が増えているので、一応そう言う。

「男子は皆怖がって俺から目を逸らしてたから、直哉と喋ってるの見て怖くないってわかってくれたのかも~」と嬉しそうに言っていた。

勿論まだそんな深い話をするほど男子と仲良い訳では無いのだが、女子生徒だと野崎さん辺にはけっこう心を開いているような気もするし、なにか行き違いがあってもいけないのでちゃんと禁止事項は話しておくのだ。



「どうしたいか分かんないものなの?」


強者ならではの疑問だなぁと僕は感じた。


「あんまり大事にはしたくないんだって」

「じゃあ相手を〆…やめてって本人に言うのはダメなの?」


─今絶対しめるって言おうとしたなこの人。


これだから不良は。

そんでもってイジメ問題のデリケートさをまったく理解してない発言だなと思った。


─誰もがお前のように強くは無いのだ。この気の強そうな顔した女の子も普段から大人しいし、喋ってみたら頼りないことこの上ないのが分かるだろう。


「いや、まず誰がしたかも分かんないだろうし…あ、いや、浅葱さん心当たりはあったりする?」


うちのクラスは平和だ、と言うと聞こえがいいが、実際はあまり団結力と言うかクラス皆で仲良くしましょうみたいな空気はなく少しのグループの他は個人行動派の人も多い、1番目立つ戸田が人に自分から関わらないという体たらくなのでクラスの中心やリーダー的な存在もいないのだ。

ただその代わりに何かに対する反発や人とのぶつかり合いもなく、観察する限り不穏な空気なんか感じたことはなかった。

いくら美人だからって入学して、大人しくしてるだけの人の靴にあんな泥水いれるような手間をかけるか?そんな熱量ある人うちのクラスにいるかな…と今更不思議に感じた。


「………多分、前の 中学の人。」


─あ~、昔からの私怨かぁ。


それなら入学してすぐでも有り得るかぁ、と僕は浅葱さんの言葉ですぐに納得した。


「誰か分かってるなら対処しようがあるよね~、で、誰なの?」


戸田の目がギラつく、なんでお前が好戦的になっているんだ。

詰め方が少し怖かったせいか、考え込んでいるのか、浅葱さんは黙り込んでしまった。


「浅葱ちゃん、直哉はいじめとか絶対許せない人だからさ、もっと頼っていいんだよ~?ついでに俺も出来ることあるならやるし。」


─待て待て、なんだその設定。そんな正義感を戸田の前で振りかざした覚え全くないぞ。やめてくれ。


と思ったけど、ついさっきいじめられてる女の子を家に連れてきて汚れた靴を洗ったばっかりだな、と気付いて否定できなくなってしまう。

そしてそれより戸田の出来ること、の範囲が自分よりかなり幅広い気がして何をする気なんだと気になった。

戸田にそう言われた浅葱さんは僕の方をじっと見たあと口を開いた。


「…1組の、佐々木さん、と白川さん。」

「「ああ~」」


思わず戸田と言葉が被ってしまった。

佐々木と白川、なぜ僕が知っているかと言うと、それは入学当初に戸田に付きまとっていて、僕が苦手と感じていた、うるさいギャル2人組のことだからだ。


─しそう!言ったら本当に悪いけど、平気でそういうことしそう!


そう思うが確定してない相手に対して、あまりに酷い考え方なので勿論口には出さない。

何となくだけど戸田も同じように思ってそうだ。


─しかしあのギャルが多分(確実に)実行犯か~、戸田に多分振られて、最近近づいてこないんだよな、近づいてきてた頃なら戸田に牽制してもらう手段もありだったとは思うけど。でもそんなこと戸田にさせるのも違うしなぁ~なにか自分が出来ることはあるのか…?あのギャル相手に…?僕が……??



考え込み、思考が宇宙にたどり着きそうになった時


「あの二人には先月ちょっとキレちゃって、かなり怖がられてるっぽいから、俺らと一緒にいれば被害なくなるんじゃない?」


と戸田が言った。


─キレたの???


僕は驚いて戸田の方を見る。


「二度と話しかけるなって言ってるから少なくとも絡んでくることはなくなると思うよ~」


─そんなこと言ったの??


あんなに女の子に紳士的に努めようとしてる戸田がキレるなんて意外だ。

意外だけどあの2人のうっとおしさから考えると…きっとよっぽどな発言をしたのだろう、詳しい内容を聞く前から戸田は悪くないと思えてしまうのも凄いな、と僕は思った。


─振られたのが避けてた理由で戸田と仲良くしだしたら嫉妬と逆恨みが追加されてさらにいじめが酷くなりそうだと思ってたけど、キレて怖がってるなら効果あるんじゃないかな?


「もし一緒にいてもしてくるなら、俺がまたキレてあげるよ~」

「それはダメ、その時はちゃんと3人で考えて対処しよう。」


戸田が戸田自体を害されてない件で無理に怖がられる行動を取る必要はないのだ、と思いきっぱりとそう言う。

そういえば、まだ浅葱さんの意思確認してなかったと気づき慌てて浅葱さんを見る。相変らず不安そうな、それでいて話をよく分かってないような顔でこちらを見ている。


「浅葱さんがこのことを大事にしないことを優先するなら、俺も戸田が言う案が1番だと思う、浅葱さんはいつも静かにしているし、もしかしたら人といるのは苦手なのかもしれないけど、無理にしゃべらなくていいし、いじめが完全になくなるまででもいいから、僕らと一緒に過ごさない?」

「………うん。」


浅葱さんが頷いてくれてほっとする。

これなら戸田に威嚇なんて行動をさせずに、浅葱さんの安全確保が出来る。


─戸田の威光を使ってるのにはちがいないけど。


自分はなんの力にもなってない気がするなと思ったけど、さっき靴洗ったし、これから自分の靴も貸すし、ちゃんと力になってるなってるなってる!自分を納得させた。

佐々木と白川。害悪ギャル。

ギャルと称されてますが単純に派手で流行りものが好きな、でもちょっとダサめな2人組です。

佐々木は万引き常習犯。白川は小判鮫気質。

大体の悪事は佐々木が主導してます。


次は「戸田バリア」です。

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