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1.イケメンとの邂逅

新しく通う高校は家から歩いて20分もしないところにある、偏差値が高すぎず、低すぎもしない進学校だ。

将来の夢も希望もまだない僕は家の近さで選んだ。

自転車通学も出来るけど、部活動に入るつもりがないから通学は徒歩にしてそれで″運動したつもり″と言う感覚をゲットしておきたい。



10分くらい歩くと橋が見え、その辺りで駅の方面から歩いてきた電車通学の自分と同じくおろしたての、真新しい制服を着た学生たちが増えてくる。

そこまで大きくない川の橋を超えると満開の桜が咲く校庭が目に入る。


正門まで桜に見とれながら歩いていたが、正面のクラスの張り出しに人が集まっているのに気付いて足を止めた。


このクラスの張り出しはいつまでこのスタイルなのだろう、人混みをかき分けて12クラスの中から自分の名前を探すのはなかなか難易度が高い気がする。

もうクラスが決まった時点で各家庭に通達するとかでいいのでは…?

そんなことを考えながら人混みに紛れ込みつつ自分の名前を探す。3組にあった。

12組中の前半で見つけれてよかったと思いつつも下駄箱へ向かう。


校舎は受験の時に1度来ているが、これから3年間ここで過ごすのかと思うとまた違って見えてくるもので不思議だ。



3組のドアをガララと開けて教室に入ると、先に着いて各々過ごしていたクラスメイトの視線が一瞬集まる。

不躾にジロジロと見るような視線ではない、どんな人がクラスメイトかな、程度の軽い確認の視線だがどんな種類のでも落ち着つなかい物だなと思いつつ黒板の席次表を確認する。


─真ん中の列1番前か…


最初の席は、五十音順で席を決められてるため、高田の″た″と考えると仕方ない気もするが少しだけ運の悪さを感じる位置だ。

1番前は黒板が見えやすくていいのだが教卓の目の前は目立つし教師を近くに感じるのが嫌だ、端がいい。



座って少しすると担任になる教師が教室に入ってきてそれを合図にするようにバラけていた生徒たちが席に座った。


「皆!入学おめでとう!!今日からこのクラスの担任になった渡辺だ!よろしく!」


─学園モノ青春漫画の冒頭シーンみたいだな。


と思いながら担任を見る。

ジャージで入ってきたところで察してはいたが、体育教師でサッカー部の顧問らしい。

明るくハツラツとそして早々にサッカー部員を募集していた。

威嚇要素の強い凶暴タイプじゃないのは良かったが、少し眼力が怖い。


─脳筋の匂いが漂っている…いや、決めつけは良くない。


と思い直す。

中学の頃にもいたが、ただテンションが凪いでいるだけの自分を見て「元気を出せ!」とか「もっとしっかりはっきりしろ!」と背中を叩いてくるタイプでは無ければいいなと願った。

とても元気だし、しっかりもはっきりもしてるつもりの自分としてはあれはなかなか納得いかないアドバイスの類なのだ。



あらかた担任の話が終わると廊下に並ぶように言われ、そのまま体育館に移動して入学式となる。

校長はナイスミドルな雰囲気のおじさまだったが、案の定話が長く虚無の時間を過ごした。



始業式が終わり、教室に戻り、クラスのオリエンテーションで生徒の自己紹介が始まる。


まずは男子から、僕は″た″なのですぐ回ってくる。



「名前と趣味と一言」


なんとも面倒臭いお題だ。

真面目に考えたら趣味は漫画を読むことと人間観察なのだが、人間観察なんて真面目に発言したら痛い子だと認識されるのはインターネットで予習済みだ。

地味で見栄えも良くない自分だが、こう見えて客観的に他人にどう評価されるかを完全に放棄してる訳では無い。

と言うかあまり目立ちたくないのだ、いい意味でもでも悪い意味でも。


「高田直哉です。趣味は特にありません、これからよろしくお願いします。」


自分の番がまわってきて、めちゃくちゃ無難に挨拶をすませるとクラスメイト達が手癖で拍手をしてくれる。


担任はほんのちょこっと納得いかない顔をしてたが何も言わないで済ませてくれたことに内心ほっとする。

″趣味は漫画を読むことです″と答えても良かったのに、なんとなく言えなかった。

もしかしたら自己開示が苦手なのかもしれない。

元々の性格なのか、思春期ゆえの恥じらいなのかはまだ判断が付かないが、新たな自分の一面を知れた時間だった。



僕が座って、後ろの人が立った時、少しざわっとする、そんなに多くの声が上がった訳じゃないのだが、クラスの空気が変わったのが分かる。

チラッと後ろを振り向くか悩んでいたが相手が紹介を初めてその必要がなくなった。


「戸田啓吾です。趣味は~、ん~寝ること?よろしくお願いしまーす。」


戸田啓吾。

そんなに人と多く関わらない僕でも知ってる人だ。


何が有名かと言うとまず間違いなくその容姿だろう。

他中、しかも隣とかでもない少し遠いとこにある中学なのにうちの中学にもファンクラブがあった。


背が高くて、顔が良くて、たしか家が金持ちで、喧嘩の強い不良で、騒いでた女子の話が勝手に耳に入ってきただけでもこれだけの情報がある。

彼を隠し撮りした写真が出回って、待ち受けにしていると自慢していた女の子がいた記憶もある。

かなり素行が悪いと聞いていたが自己紹介をした時の喋り方や声色はなんと言うかすごく穏やかに聞こえて意外だった。


─漫画の主人公みたいなやつだな…


と思いつつ、なるべく自然に振り返ってそのご尊顔を覗いて見た。



あぁ~これはイケメン。



と、語彙力を捨て去ったあっさりした感想になってしまったが、そこには確かにイケメンと称されるに相応しい容姿の男が立っていた。

身長175センチ以上はありそうだ。

ゆるくパーマがかかったみたいな髪がアイドルみたいにセットされていて、かなり明るい色の茶髪が日焼けしていない肌に似合っている。

その辺の女の子より長いまつ毛に縁取られた少し色素の薄い、眠たげな目が印象的で、目鼻立ちがシュッとしていて少しアンニュイと言うか、気だるげなオーラすらカッコ良い。

中性的な顔立ちだけどしっかりある肩幅と程よい首の太さが男らしい。


ここまで考えて、人を観察するのが好きな割に容姿を褒める言葉選びがあまり上手くないことに気付いた。

自分で考えてるこの内容を妹に聞かれたらすかさず「きもっ」と言われるだろうな。


それにしても自分が知っている漫画の不良のイメージとは、離れている。

どちらかと言うと少女漫画に出てくるイケメン男子のそれだ。


─噂は多分嘘では無いから、ヤンキー漫画のイメージと違って、現代の不良はおしゃれなんだな…


と、学びになった。

漫画で全てを知ることができると思い込んでいた中学時代から比べると大きな成長だ。


ただ自分の中学にいたやんちゃな子達は、卒業式の後に派手な刺繍の入った学ランに着替えて嬉しそうに写真を撮っていたので、(いにしえ)のヤンキーもまだまだ健在なのかもしれない。



戸田啓吾の自己紹介が終わると手癖では無さそうな拍手とともに女子生徒の嬌声が響いた。

このクラスになれた女子はきっとその幸運を噛み締めているのだろう。


女子も含めて自己紹介が進む、何気に自分はしっかり全員真面目に聞いていた。

なんたって趣味は人間観察だ。


同じクラスに同じ中学だった人間は8人いたが、全員元々クラスが一緒になったことがないやつや、知ってるのは1年の時に一緒のクラスだったことがあるほぼ絡みのない女子くらいで、ほとんどが知らない人間だった。

どんな感じの人がいて、その人達によってどんな学校生活が作られていくのかを予想するのは楽しかった。


直哉(主人公)は理屈っぽく見えますが、今は結構柔軟なヤツです。


次は「少し迷惑なクラスメイト」です。

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