13.ほっとく訳にはいかないし
僕は一人で職員室へ向かう。
先生に助けを求めようと思ったが、浅葱自信がこのいじめ行為をどう対処したがっているのか話を聞かないとだなと思って考えを改めた。
いじめなんて、漫画でしか読んだことないけど、漫画では沢山読んだことがある。
いじめとはデリケートな問題なのだ。
無能な教師に言うことで、浅葱さんがさらに傷つき、学校に通えなくなるようなこともありうる。
─と言うかあの状態写真に撮っとけばよかったな。こういう時って証拠も大事なんじゃなかったっけ。
迷った挙句、職員室の隣の用務員室のおじさんに「靴が濡れてしまって、持って帰りたいからビニール袋を下さい」と言うと普通にくれて安心する。
「靴が濡れて入れる袋って、裸足で帰るつもりか?」と用務員さんに聞かれたのでちょっと考えたあと「家は遠くないので上履きで…」と答えた。
浅葱さんの家を知らないが、歩いて登校してるのを何度か見かけた覚えはあった。家が近くなら上履きで帰ってもらって、電車通学なら靴のサイズを聞いて妹のに近かったら妹の靴を、母のに近かったら母の靴を貸して帰そうと考えていた。
とは言っても妹と母の靴のサイズを明確に把握してないので、家に帰って確認が必要だが、最悪サンダルを貸せば上履きで電車に乗るよりはマシな感じで帰宅は出来るはずだと思っていた。
「上履きの裏は石が詰まったら取るのが面倒だし洗うのも大変だから近いならこれを履いて帰るといいよ」
と用務員さんは来客用のスリッパの古いのをビニールに入れて渡してくれた。
お礼と共に「洗って返します」と言ったらもう使わないやつだから捨てちゃってくれ~と帰ってきた。
用務員さん優しいなと思いながら、通りがかった手洗い場に放置してあった雑巾を拾い水で洗い固く搾って持ち靴箱に戻ると、離れた時と同じ状態で浅葱さんが立っていた。
浅葱さんのスマホを借りて、一応靴の写真を撮り、靴の泥を外で払ったあとビニール袋にしまう、濡れた靴箱とその周りを拭いた。
浅葱さんに家を聞くと電車で2駅の所だった、やっぱり靴を貸そうとサイズを聞いたら「24.5…」と答えが返ってきた。
─予想してたより大きいな!これ妹のは絶対無理だし母のでも小さい可能性でてきた。と言うか普通に僕の靴(25cm)で入るのでは?今僕の靴を履かせて僕がスリッパで帰ってもいいけど、けっこう履いてる靴を女の子に履かせるってありなのか…いや、なしだな、確実に嫌がられる。
「…僕の家にまだそんなに履いてない靴があって、それを貸すから今日はそれで帰ろう。ひとまず着いてきて、その靴もどうにかしなきゃ」
色々考えた結果そう言うと、浅葱さんは少し間を置いたあと頷く。
浅葱さんの上履きは、明日また被害にあったら行けないので自分の靴箱のいつも靴を置いてるところを雑巾で拭いてから入れておいた。
登校した時勝手に開けていいからと言いながら、遠くから部活動の音が聞こえるだけの、人気のない靴箱を2人で後にした。
学校から家に向かう途中の大きな橋まで、一言も喋らずに来た、彼女が何を考えているのか分からないし、そっとしておいた方がいいのかもしれないけど、とりあえず聞いておくことを考えていた僕は浅葱さんに話しかける。
「浅葱さんさ、こういうことはよくあるの?」
「………ものを 汚されたのは、初めて。」
─汚されたのはってことはそれ以外はあるんだな、物理的な被害以外ってことは精神的な…まぁ普段から色々陰口とか通り過ぎざまになんか言われるあの感じか。
大きないじめ問題に発展はしなかったが女子の間の仲間はずれトラブルや悪口の言い合いは現実でも見たことがある。大変面倒くさそうだ。
「ここまで来たら立派ないじめだと思うし、一応写真は撮っといたけど、浅葱さんはどうしたい?親御さんに報告とかさ…」
「………わからない。」
─だよなぁ。僕だってこんな目にあった時家族にすぐ相談できるかわからない。心配かけたくないし、変な恥ずかしさもある。
自分は悪くないのに恥を感じるなんて、おかしな話だが。
「…けど、親に 知られたくない。」
そうだよな、と僕は頷く。
「なら、ひとまず家に着いたらこの靴を洗おう。流石にここまで泥だらけだとおかしいと思われるよ。親には言うか決めるまでは泥が跳ねたから友達の家で洗って靴も借りたとか言って、適当に誤魔化すしかないね。」
そう言うと、浅葱さんは静かに頷いた。
家に着いて玄関を開けると人の気配はなかった。
母が今日は仕事で帰りが19時前になるのはわかっていたが、妹のお出かけ用のお気に入りの靴がない。妹がいないのは、この状況の説明が難しいなと思っていたのでとても助かる。
浅葱さんを家にあげて、リビングに案内し、冷蔵庫の麦茶をコップに注ぎ、お茶菓子と一緒に出す。
麦茶を見つめる浅葱に「お風呂で靴を洗ってくるからゆっくりしてて」と声をかけると頷いていた。
─本当に喋らない子だな、昔飼っていた、ほとんど動かないカブトムシを観察してる時を思い出すレベルの静けさだ。ずっと迷子の子供を相手にしてると言うか、幼い頃の妹みたいな頼りなさでついついなにかしてあげなきゃと言う気持ちになるな。いや、幼い頃の妹はもっと主張は強かったけど。
靴の表面に残った泥をシャワーで軽く流して、靴用の洗剤とブラシで擦る。
─家事のお手伝いで妹の上履きを洗うことはするけど、クラスメイトの女子の上履きを洗うってどういう状況だろうか…。
縫い目や隙間に入った泥をかきだす、普段使いで出来た汚れじゃないし、新鮮な?汚れだったおかげか、靴の表面はすぐに綺麗になった。中敷に染み込んだ泥の色には少し苦戦したが3度くらい洗うと大分目立たなくなった。
─こんなもんかな?
靴が綺麗になった達成感を感じながらその靴を靴専用のハンガーに掛けて浴室乾燥を付けて、1番風の当たるところにハンガーを置く。
─濡れた靴は重いし、30分で半乾きくらいにはなるかな。
と、その時ちょうど手が空いたタイミングでインターホンがなったから出ると、
「母さん掃除終わったら帰っていったから遊びに来たよ~」と戸田が立っていた。
─…説明、しなきゃだよなぁ。
直哉(主人公)はお兄ちゃん属性激強です。
脹〇には共感しかないです。
次は「乗りかかった船的な感じで」です。




