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12.浅葱莉央との出会い

6月に入り気温は上がり、クラスメイトは制服を夏服に衣替えし、僕も昨日から初めての夏服に袖を通したばかりだ。


先日あった身体測定の結果が保健だよりと共に配られた。

保健だよりには身体計測の学年ランキングが1位から3位まで書いてあって、なんと戸田は握力と上体起こし、ハンドボール投げで学年1位であった。

すごいを通り越してもはやドン引きまである。

ちなみに立ち幅跳びは学年2位(1位はバスケ部の1年エース候補の男子だった)、シャトルランは学年3位(1位はサッカー部のエース候補、2位は陸上部)だ。

50m走も早かったが、流石に陸上部達には勝てなかったらしくて逆に安心した。


「予想より結果が凄すぎませんか?」

「中学の時ジム行くの好きだったから、筋力系はけっこう頑張れたかも~」


また照れ照れとしながら戸田はそう答える。


─中学生が部活ではなくジムに通う辺りに僕の知ってる常識とは違う部分を感じるが突っ込むまい。この人は規格外なんだ。流石主人公タイプ。



流石に身体測定以降は、戸田に運動部の誘いが増えた。

入学してからの戸田は、1度人前で怒ったらしいがそれ以外は大人しいものだし、それ以上にあの身体測定の成績を見たら怖い不良とか言ってられないのだろう。

最初は少し怯えながら話しかけた運動部の男子も、戸田が穏やかにお断りする感じを見ると、フレンドリーに「諦めないから!」とか「考えが変わったらすぐ言ってくれ!」と言ったように戸田に絡むようになった。


担任の渡辺もサッカー部に入ってくれと頼み込んできたが、戸田が1度断るとシュンと諦めて、それ以上しつこくはしなかった。

勧誘が結構しつこい先生なのは他の生徒を誘ってるのを見てて知っていたから、戸田がしつこくされなくて良かったなと僕は思った。



今日戸田は義理のお母さんが家のことをしてくれに来る日らしく、委員会の集まりのある僕とは別行動で先に帰宅していった。


入学したてのオリエンテーションで入った図書委員の委員会は図書室で開かれる。

うちの高校の図書委員はクラスで2人、学年で24人、3年は受験で免除されていて2年は立候補制なので基本的に1年生がメインで担当する委員だ。


高校には学校司書がいないので昼休みと放課後に2人組でローテーションを組み、その時間図書室の本の貸し出しの管理をしなくてはならない。

委員会のメンツは本が好きそうなのが半分、残り半分は適当に入った委員で月に2回もそんなことしゃきゃいけないとか面倒で最悪、みたいな感じだ。


僕はくじで負けて図書委員の学年の代表に決められたのでさらに地味に仕事が多いが、図書室の鍵の管理を一任されていて、いつでも職員室から鍵を借りれる権利がある。

図書館の隣に隣接してる、図書館とは入口が別の図書準備室とい物置部屋の鍵はスペアキーを常にもってていいらしいので、もうちょっと暑くなってきたら私物化して、そこで昼食を食べようかと目論んでいる。



今月のローテーションシフトの紙を配ったり委員会が終了して未返却者リストに乗ってるクラスの委員に返却指導するよう言ったり、今月の図書だよりの内容を精査し、委員会は終わった。

委員たちがはけた後に職員室に鍵を返して自分も帰ろうと靴箱に向かうと、靴箱の前にクラスメイトが立っていた。


─浅葱さんだ。


同じクラス、同じ委員の浅葱莉央。

浅葱も戸田ほどではないが、人目を引きつけるよう容姿をした同級生だ。

身長は女子にしては高い方でスラリと伸びた手足、色白で、長い黒髪をそのまま下ろした髪型をいつもしている。

どちらかと言うと彼女も目付きが悪いので僕は内心で親近感を抱いているが、目付きが悪くてもその大きく綺麗な目に視界に囚われた人間は睨まれたではなく、射抜かれたと感じるのではないだろうか。


─イメージ的には戸田が少女漫画のイケメンヒーローで、野崎さんは少年誌の清純派ヒロイン、表情が硬い浅葱さんは影がある系のヒロインかな。


ただ、浅葱莉央は顔立ちの派手さに反して制服を着崩したり、今どきの女子みたいなお洒落な雰囲気を全く持たず、クラスでもとても大人しい。

大人しいというか本当に喋らない。

授業で教師に問を指された時とクラスメイトに声をかけられた時の短い返事しか聞いたことがない。

委員会で一緒の僕だって、話しかけたれたことは1度もない。挨拶をしたら返してはくれるけど、接触は最低限だ。

僕も進んで人に雑談とか持ちかける方ではないが、共感どころか常軌を逸してる、生活に支障出るんじゃないかと感じるレベルだ。


─最初はツンデレだったらいいのに、とか冗談で思ってたけどツンの気配すらない人なんだよね。常に気配を消してると言うか。


とは言ってもその容姿のおかげで気配を消しきることはムリの様で、入学当初は他のクラスの男子や、上級生男子がクラスに彼女を見に来ていたこともある。


─まぁそれよりもうちのクラスには派手で人目を引きつける戸田がいるから、目立ってない方だよな~。


そんな事を考えながら靴箱に近づくまでの時間、やはり浅葱莉央は微動だにしていなかった。

一時停止をしているような彼女を「大丈夫か?」と思いつつも僕の靴箱は位置的に言うと浅葱莉央の靴箱の場所よりも奥にあるので彼女を避けながら後ろを通る。

その際に浅葱莉央が1点集中して見ている自分の靴箱をなんとなく見てしまった。

戸を開かれた靴箱には彼女の白いスニーカーが置いてあるが、それが泥に塗れていた。

そしてさきほどまでは気づかなかったが、靴箱から少しだけ泥水がしたたってる。



─………めちゃくちゃいじめられてるな。



これは、漫画で見たやつだ、何か声をかけるべきなのか、いやこういう時声をかけられたら人によっては嫌がるかな、もしかしたら怒られるかも、見て見ぬふりをして上げるべきなのか、いや、見て見ぬふりっていじめも見て見ぬふりすることになるよな、それって人としてどうなの?


自分の靴箱の踵を掴んだまま自分も体は停止して頭はフル回転させていると、浅葱の時間は動き出したのか、泥水まみれの靴を取りだしてそれを自分の足元に置く。

…どうするんだ?と思ってつい成り行きをじっと眺めてしまっていると、浅葱さんは泥まみれの靴を普通に履こうとした。


「待て待て待て待てーーー!!!」


あまりの驚きに芸人のようなツッコミを入れてしまった。

浅葱さんは驚きほうけた顔でこちらを見ていたが、今までクラスで見ていた感じの通り、何も喋らないでこっちを見てまた固まってる。


「…せめて靴の中の泥くらい出して…、いや、それは絶対履かない方がいいやつだよ。…ちょっとここで待ってて、動かないでね、あと絶対履かないでね。」


何も理解してないようなぼんやりした表情に不安を感じた僕が念押しすると、浅葱さんはひとまず頷いてくれた。

天然少女の登場です。

面倒見の鬼 の戸田とは相性いいです。


次は「ほっとく訳にはいかないし」です。

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