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野崎陽菜 1-4

戸田啓吾は昼になると売店でパンを沢山買って教室でスマホをいじりながら食べる。

陽菜はお弁当なので、ユイとミサキがパンを買いに行くのについていって、そこで戸田啓吾に挨拶したり話しかけたりするのが陽菜の日課の一つだ。



戸田は女に話しかけられたからと言って喜ぶタイプではないのだろうと、陽菜はなんとなく察していた。


─あれだけモテたら当然なのかしら、今のところ誰に対しても平等に対応してる。


男ウケは誰よりも自信があった陽菜が話しかけても表情や声色が他の女子が話しかける時との違いがないように陽菜は思えた。


─ちょっと自信に傷付いたけど、それでへこたれたり、逆にムキになったりするのも違う。これも勉強よね。


他に特別感のある相手もいないのだ、これは長期戦と見て、ゆっくり相手の懐に潜り込むべきだと陽菜は考えた。


─むしろ、女子に話しかけられんのダルいくらい思ってる可能性もあるし、話しかける時は無駄に時間をかけず簡潔にしよ。


内心でそんな計画を練りつつクラスメイトと売店へ向かう。



ただ今日はいつもと様子が違った。

1人で売店に向かうはずの戸田啓吾の隣に知らない男子生徒が居たのだ。

しかもいつもの売店を通り過ぎる学食の方に向かっていった。


陽菜は少し悩んで「あれ、戸田君、今日は学食なんだ」とポツリと呟くとユイとミサキは騒ぎ出して「今日はパンやめて学食で食べようよ!」「陽菜、席取っとくからお弁当もっておいで!」とはしゃぎ出した。

陽菜の狙い通りだ。

相手の言い出しそうなことを予想して、自分の希望に誘導するのは陽菜の得意技の1つだった。



教室からお弁当を取って学食に入ると、ユイとミサキは戸田啓吾達の近くに席を確保していて、戸田達はそんなことは知らずに頼んだものが出てくるのを待っていた。


「え、戸田くんメニュー何頼んだの?」

「唐揚げなのは聞こえた!」

「え~可愛い~!!」


などとユイとミサキが小さく盛り上がる中陽菜は1人観察と思案をする。


─ずっと男女問わず自分からは人に絡まなかったのに、友達出来たってわけ?


戸田がニコニコと声をかけてる男は、それといった特徴のない、どちらかというと地味なタイプの男子生徒だった。


─少し目つき悪いけど、しれっと二重だな。幅は狭いけど。戸田君みたいに顔の掘り深い!鼻筋綺麗!とかはないけど顔の輪郭はわりと綺麗かも。


表情にあんまり変化がないし、そこまで口数も多くないけど、他の男子生徒が確実にビビってるのが肌で感じられる戸田啓吾に対して普通に、と言うか割とツッコミを入れるような喋り方をしていて、怖いもの知らずというか、けっこう気が強いタイプの人なのかもしれないと陽菜は思った。


それよりも今まで観察していて見たこともない、ニコニコとした戸田啓吾の表情が陽菜は気になる。


─昼食時に一人でパンを食べてる時も顔が緩んでるなと思ってたけど今はその比じゃないわ。そんなにここの学食美味しいわけ?それとも…


攻めるのならばここからなのかもしれないと陽菜は確信に近い思いを抱いた。

陽菜はすぐにその男子生徒の名前を調べ、戸田啓吾に話しかける時は必ず高田直哉にも同じように話しかけるようにしたのだ。



そんな陽菜の作戦は効果的だったらしく、変化はすぐに現れた。


「あ、おはよう~」

「え、戸田くん!おはよう!」


校内で遭遇したら戸田から声をかけてくれるようになったのだ。


「ふふ、眠そうだね。昨日も飲んでたの?」

「うん~。あ、でも俺お酒は飲まないよ?」

「え、ほんとにー?」

「うん、周りが飲んでても俺はコーラばっかり」

「絶対嘘だ~」

「ホントだってば」などと言って2人で笑う。


戸田と一緒に歩いて、教室前で別れた時、陽菜はガッツポーズをしてしまいそうなのを全力で我慢した。

それまではどこかで遭遇しても「俺は周りを見てませんよ~」と言った雰囲気で誰のこともスルーしていて、声をかけられた時だけ反応する感じだったのに、この変化である。

そして、陽菜のことを″陽菜ちゃん″と呼ぶようになった。他の女子は名前で呼んでよとしつこく言っても苗字呼び、どころかあまり苗字ですら人の名を呼ばない会話をするのに、だ。


陽菜は強い達成感を感じる。

人を誘導できた時もそうだけど、自分の狙いが予想以上にカッチリハマるのはとても気持ちいいと心底思った。


やはり高田直哉を大事にするのが重要だったのだ。

中学の時に不覚にも好かれてしまったクラスの不良から、不良は身内を大事にする、仲間を馬鹿にするやつは許さん、みたいな戯言を聞いてもないのに語られた時のことを陽菜は思い出して「あんなやつの言葉でも役に立つんだな」としみじみした。


戸田は何故か分からないが高台直哉を大変気に入っていて、そして男友達を大切にするタイプの人間なんだろう。

陽菜にはその気持ちがよく分からなかったが、そういうタイプにどう振る舞えばいいかくらいは理解できるのだ。


そして自分の作戦が本当に大成功だったのだと思わせる出来事が4月の終わりに起こった。

陽菜は人の心を汲み取るのがとても上手です。

高校生になりたての子供くらいの簡単な誘導ならまんまと成功してしまうため自信過剰気味です。勿論手痛い失敗をすることもあります。


次は陽菜編ラスト、1-5です。

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