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野崎陽菜 1-3

「え!?校長の孫??」


夜、家族の食卓で陽菜は素っ頓狂な声を上げる。


家族の食卓と言っても、1番上の兄は都内の和食屋に務めるために家を出ているし、2番目の兄は大学のサークル飲みとかで今日は不在なので父と母と陽菜の3人での夕食だ。


「そうそう、陽菜の同級生に居るはずだよ、あの4丁目の″春日絵″さんとこの近くに大きな御屋敷あるだろ?あそこのじいさんが陽菜の高校の校長で、この辺の地主さんでなぁ。今年からお孫さんを自分とこの高校に入れたって話を春日絵の大将から聞いたよ」


春日絵はうちの豆腐を仕入れているけっこう美味しいと評判の居酒屋で、うちの豆腐屋とは先代からの仲だ。



父の話に陽菜は勝機を見た。


陽菜の将来の夢は玉の輿だ。

勉強頑張って家の近くの進学校には入れたから、高校でもっと勉強頑張って公立のそれなりに偏差値の高い大学を目指して、就職も出来るだけ大手に入るつもりだ。

自分なら顔採用ってやつにも有利だという自信がある。

そしてそれは勿論、その環境で好条件の旦那様探しをするためだ。


高校で彼氏を作る気なんてサラサラなかったし、今異性間の人心掌握に力を入れてるのは、陽菜にとっては単なる将来への予行練習だった。

同級生達はいつ初体験を済ませるかで話が盛り上がることもあるが、陽菜からしたら結婚するまで処女でいいし、なんならそっちの方が、ハイスペックや上流階級の人間を相手にする場合は、婚姻する女性の身持ちは硬い方が高く評価されるんじゃないかと考えていた。


ただ、いい大学、となると流石に地元を離れることになるし就職だってそうだ、そこで伴侶となる男を見つけたとしたらきっと結婚する時は就職先、もしくは夫の地元に住むことになると思っていた。

でも実は陽菜は地元を、と言うか実家から離れたくなかった。

陽菜は大好きなのだ、自分の家が、家族が。


─地元の地主の孫で同級生。もしかして完璧なんじゃない?


「だれだれ!?めちゃくちゃ気になるんだけどっ」


家族の前では素直で言葉を取り繕ったりしない陽菜はストレートに父に聞く。


「4丁目の御屋敷は戸田さんだわ、息子が2人だったから、孫もその苗字なんじゃないか?」


陽菜は手に持っていた茶碗を落としかけた。



次の日、陽菜は学年に戸田という苗字が一人しかいないことを確認した後、戸田啓吾を事細かに観察することにした。


確かに学校では分からなかったけど、同級生の女のSNSと、探して見つけた戸田啓吾自身のアカウントの写真で見ると、私服姿はやたらオシャレで小綺麗でお金をかけてそうな雰囲気があった。

それに学校で見かける戸田啓吾はほぼ寝てるが、起きてる時をよく観察すると、なんとなく所作に落ち着きある気がする。

過去にクラスメイトだったヤンキー達のような粗野さを何処にも感じないのだ。

ただ全て″そう言われてみると″の話なので後付け感はすごい。


─私の観察眼、やっぱりまだまだなんだな。


底辺だから不良になったのではなく、素行悪いボンボンだったのだ。


─でも陽菜、落ち着いて、やっぱり不良は頂けない。いくらイケメンでも、実家が金持ちでも本人の資質がクズならそれは私のターゲットではない。元同中の馬鹿女と付き合ってる可能性があるのもかなり頂けない、趣味が悪すぎるし、あんな女のお下がりとか死んでも嫌だ。



陽菜は同級生の素行が悪い馬鹿女─リナのことを思い出す。

中学生なのに少し発育のいい身体をしていて、とにかく股の緩い女で同級生の男や先輩からいい様に扱われて、その度に荒れてた女だ、雑なメイクに汚い巻き髪、目鼻立ちは悪くなかったけど歯並びが良くない。

勉強も運動もやる気ないけど学校には何故か毎日来てて女子生徒の中で偉そうにしていた。


「ねー、野崎さんってホント可愛いよねぇ」


所属グループは勿論違うけど、全く本心じゃないの丸出しでそう言って絡んでくるから、毎回「絶対リナちゃんの方が可愛いよ!学校で1番可愛いのリナちゃんだと思う(歯並び直せばな)」と答えていたのを思い出す。


─実際素材がいいから不良男も寄ってくるし、将来はキャバ嬢とかになってそう。でもネットで見る誰かに憧れられる様なキラキラ系の売れっ子とかじゃなくて、ホス狂いとかメンヘラ女になるタイプ。


こういう情報は全部ネットで得た知識でしかないけど、いつも男に振り回されてる彼女を思い返すとそんな推測が容易く出来る。


そこまで考えて陽菜は思考が脱線していることに気付いて考えを戻す。



まず″地元で玉の輿結婚″と言う理想に飛びつきそうになった自分を抑える、いくら実家が裕福でも本人がクズなら実家の繁栄を維持できるとは思えない。

欠点がない男は無理だと分かっているけど、そもそもの人間性と将来性、そして実益、その辺のバランス感は自分が幸せになるためには拘るべき部分だと、陽菜は強い心でそう思った。



─でも高校には割と真面目に登校してるし。噂を集めてみたけど中学はかなりサボってたらしいし、どういう心変わり?改善の余地ある感じなのかしら。一瞬グレただけで性根が腐ってないならいい男になるように育てる…?それも腕がなりそうだけど、まずは馬鹿女との交際の真偽を探ることが先決だわ。


気になるが焦ってはいけない、ついこの間言葉を交わしたばかりなのにプライベートを探るような真似をするのは悪手だと思う。


─ただ、リナとは元同じ中学だから、女友達との繋がり大事にしてる感出したら、自然に探れるかも。


じっくり距離を詰めて、あの高校生のくせに″基本的に他人に興味がありませんよ″みたいなスカした顔の男の心が本当に少し開いたところで当然の空気を醸し出して聞き出すべきだと陽菜は考えた。

陽菜は野心家で上昇志向が強いので、高校生なんて人の見る目が育ってなくて当然なことだったとしても、自分の能力不足を恥じます。


次は1-4です。

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