野崎陽菜 1-2
教室につくと高校に入って仲良くなったユイとミサキがおはよー!と声をかけてくる。
明るくそれに返してるとクラスの男子や他の女子も声をかけて来て陽菜の周りに人が集まる。
この高校に入学して1ヶ月だが、陽菜は赤子の手をひねるくらい容易くクラスの中心の人間になった。
─ほんとどいつもこいつも簡単。このクラスには陽菜より可愛い女いないから当然かな。カーストって美醜で簡単にポジション取り出来るし。陽菜の場合は、顔が平凡な分、メイクや仕草や表情、それ以外にも全力出してるから単純に美醜で片付けれる話でもないんだけど。
心の中で悪態をつきながらも、笑顔は絶やさない。
陽菜は発する言葉の一つ一つ、相手が求めてる言葉なのか、この場の空気を自分を中心に持っていくためには何を話せばいいのか気をつけつつ会話をしていた。
ユイとミサキはこのクラスになって最初に陽菜に声をかけてくれた子達だった。
「野崎さん、だよね、すごい可愛いと思って…良かったらお弁当一緒に食べない?」と。
バイトしてるかと言う会話の流れで陽菜の家が豆腐屋で、それを手伝ってると言う話をて聞くと「えー、…なんか意外だね。」「うん、なんか意外かも」と苦笑い的に言われた瞬間に陽菜の中で踏み台要因に決定した2人だ。
─こいつらもきっとどうせ上っ面だけ見て私が目立つから近付いてきて、勝手に劣等感持つか、気に食わないことあって手のひら返して「いくら目立ってても家は町の豆腐屋ww」とか言って裏でバカにしてくるタイプね。前もいたいた。ほんと、女友達とかロクなもんじゃない。
小学校時代に親友と思っていた子に裏切られて以降、対人運に全く恵まれなかった陽菜は、同性相手に嫌な経験をし過ぎて、周りの人間に期待を持ってはいけないと、痛いくらい学んでいた。
なのにユイとミサキに初めて声をかけられ時に少し、ほんの少しだけ浮かれた自分に、陽菜は内心で腹を立てていた。
今でも昔言われた悪口を鮮明に思い出せる。
「ブスのくせに」
「いい子ぶりっ子」
「あんなのがどうして人気あるの?」
「女子は皆嫌ってるよね」
頻繁に昔の嫌な経験を思い出して、一人でイライラするのは、陽菜が気付いていない自分の悪癖のひとつだった。
笑顔の裏で募りそうになってたイライラはユイの「あ、戸田くんだ」という声で霧散した。
見ると、自分たちのクラスの前の廊下を少し気だるそうに登校してきた戸田啓吾が通り過ぎるとこだった。
クラスの女子達が、廊下にいる女子達がさりげなく視線をそちらに向けるほど戸田啓吾は整った容姿をしている。
─天然幅広二重いいなぁ~、私も整形は最後の手段にしたいから、高校のうちにアイテープで癖つくように祈るしかないなぁ。
そんな事をぼんやり考える。
「陽菜が戸田くんと仲良いおかげで、うちらも戸田くんとちょっと喋れるようになったから2組の友達に自慢しちゃった。」
と嬉しそうにミサキが言うとユイも「うんうんカッコよすぎる!」と頷いた。
そういえば中学の頃″陽菜といれば男絡み増える″という理由で自分の傍にいて裏で私の悪口言いまくってた子いたな…とまた過去の不快を思い出しそうになったのでかき消す。
「仲良いとか全然だよ!私が困ってた時に助けてくれて…改めてお礼を伝えたら顔見知り程度に絡んでくれるようになっただけだから」
周りの男子が会話を聞いてるのが分かっていた陽菜は言葉を選びながらそう答える。
─嘘では無いしね。
入学式の日、クラス分けの張り紙の前で戸田啓吾を見かけた瞬間、確かにその優れた容姿に心を捕まれて戸田は陽菜の中の注目男性リストに入れられていた。
とりあえず関わっておかないとな、と陽菜は即コンタクトを外して捨てて、自然を装って戸田の隣に立つ。そして困ったように「コンタクト忘れちゃって」と言い、自分の名前を探してもらって縁を繋いだ。
─とんでもない顔整いなんだけど…。小顔でスタイルがいい、芸能関係の仕事してるって言われても納得するくらい。あと多分この人、中学の頃の同級生で素行悪かった馬鹿女がら彼氏だと匂わせてインスタに写真を上げているイケメンと同一人物っぽい。世間狭。
やはり戸田啓吾はその容姿と存在感であっという間に女子の注目を集め、入学式から1番の話題になった。
陽菜の手持ちの情報網を使わずとも勝手に情報が耳に入ってくるほどだ。
それなりに有名な不良らしく、中学の頃周りに騒いでる女がいた気がするなと思い出す。
陽菜は不良を対象外にしていたため全く関心がなかったのだ。
その後もやれ誰をボコボコにしたとか、中学入学後すぐ先輩全員〆たとか、この辺の悪いの仕切ってたとか、ヤクザと繋がりが~等のの逸話も耳に入ってきた。
元同級生の素行の悪い馬鹿女との繋がりも不良ネットワーク的な物からなら納得だし、やはり同一人物なんだろうと陽菜は当たりをつけた。
─怖い噂の多い不良の割には話しかけた時に気さくで親切な感じが強かったのよね、チャラいタイプなのかな。でも、…不良かぁ~陽菜の目標は玉の輿乗ってお金持ちな激カワ妻だから、いくらイケメンでも不良なんて底辺相手にしてもなんにもなんないと言うか、自分の評判下がるだけなのよね。ここまで人気で有名人なら絡んで告らせるくらいしたら周りの女達が悔しがるって考えたらそれも楽しそうだけど、うーん。
中学校の時も不良に好かれてもきっちり逃げ切っていた。
将来最高の男と結婚するために今の内に男を手玉に取る技術を上げて起きたい陽菜としては、イケメン・人気・不良と言う新しい組み合わせのジャンルを経験として落としておくべきか…とも考えたが、結局答えは出なかった。
3年あるし、ゆっくり考えるかと先送りしながらトイレで入れ直した予備のコンタクトで復活した視力で他の注目男性の発掘に集中することにしたが、陽菜の考えはその夜に覆される。
陽菜はナルシスト拗らせてますので、異性の見方が思春期っぽくありません。
生まれて初めて認識した悪口が″ブス″だったので、ルッキズムも拗らせてます。
次は1-3です。




