初めて(?)の学校
僕はやっと学校につき担任の先生に連れられて、教室の前まで来ていた。
ユキ「ふぅ…」
緊張している。なんでも今世の僕は今まで一度も学校には来ていないらしい。つまり、今の僕は友達0人のぼっち…しかも聞いた話ではこの学校の2年生、計124人の中に男子生徒は俺ともう1人だけらしい。そしてそのもう1人も今は投稿していないらしく、友達を作れるかすらとてつもなく不安だからだ。そんな緊張に打ちひしがれていると中から入るように合図がきた。僕はゆっくりとドアを開いた。僕が教室を見渡すと全員女子、その全ての視線が俺に向いている。そして僕を見るなりざわつきだす。
ユキ『あぁ…やっぱり女子の領域に男子が入ることなんて許されないんじゃ…』
僕は学校に行けば男子の数十人程度はいるだろうと甘い考えをしていた。こんなことなら来なかった方がと今更ながら後悔する…
「自己紹介お願いね」
ユキ「はひ‼︎」
急な先生からの呼びかけに変な声が出てしまった。僕は恥ずかしながらも黒板に名前を書く。
ユキ「初めまして!僕は柳雪と言います!これからよろしくお願いします…」
なんとか元気よく自己紹介できたが…一瞬の静寂が教室を包む。すると1人の女子が手を挙げる。
「あのー!好きな女子のタイプとかありますか?」
「ちょっ!それセクハラに入るよ!」
ユキ「そうですね…可愛くて、元気な子ですかね…こんな回答で大丈夫ですか?」
僕がそう回答するとさっきまで静かだった教室が再びざわつき始めた。
「本当に答えてもらえると思ってなかった…」
「はいはーい!彼女とか作る予定ありますか?」
ユキ「それは…出来れば作りたいと思ってます…?」
何故か不思議な質問が飛んでくる。そしてさっきの僕回答により教室のざわつきはさらに勢いを増した。
「じゃあ!私とかどう?自分で言うのもなんだけど私性格いいし」
「咲希!何抜け駆けしてんの!あたしも結構いいと思うんだけど?」
「いや私の方が…!」
続々と女子たちがアピールしてくる。そして痺れを切らした佳奈さんが机を叩いた。
カナ「静かにしてください!雪様は初めての登校、そしてこの数の女性に囲まれ、気が動転しあのようなことを口走ってしまった可能性があります。これ以上騒ぐことは私が許しません」
サクラ「私も許さない…それに騒がしいのは苦手だし」
ナナミ「うちも許さないかんね。てか最初に唾つけたのはうちだから!」
「はいはい。そこまで!一旦HRを終了しますね」
そして一旦の落ち着きがとり戻る…そう思っていた。
「雪君は胸が大きい女子でも大丈夫なタイプ?」
「やっぱり威圧感とか感じてる?」
「彼女にするならやっぱり性欲少なめの方がいい?」
「子供は何人作りたい?結婚式を挙げるならどこにする?」
僕の机は女子によって囲まれていた。一応佳奈さんたちが守ってくれているが、同級生を無碍にすることはできない。
ユキ『それに全然何もされないし…なんなら女の子と喋れるなんて幸せだし…』
前の世界でももちろん女子の友達は居た…
ユキ『純恋もこの世界にいるのかな?』
カナ「雪様が困ってます!それにもうすぐ授業です!先に戻ってください!」
「「「はーい」」」
僕の思考はその声でかき消された。女子たちは全員自分の席に戻っていった。
・・・
ユキ「つかれたー」
普通に大変だった。特に大変だったのは歴史だ。僕の知っている歴史とは大幅に変わっていて、歴史上の人物の大半が女性に書き換わり、戦国時代では男性が女性たちに逆らう為に一揆を起こしたり、というか人物画自体が違いすぎて誰が誰だかわからない。前の世界での記憶がここまで足を引っ張るとは思ってなかった。
サクラ「雪くんは初めての授業だったんだし、しょうがないよ。」
ナナミ「そうだよー。なんならうちは全くわかんなかったかんね」
カナ「自慢げに言わない!はぁ…」
ユキ「あれ?ここにいる3人は結構頭がいいって聞いてたんだけど…」
カナ「それはですね…護衛を選別している協会があるんです。一般的には護衛協会とも言われていますが、そこでの決まりで護衛3人にはそれぞれ役割が決められてるんです。その役割に応じて誰を選抜するかを決めているので、全員が頭がいいというわけではないんです。」
ユキ「へー、そうなんだ」
カナ「はい、具体的にいうと、リーダー枠、情報分析枠、そして言い方は悪いですが肉壁枠ですね」
ユキ「肉壁?」
ナナミ「うん、リーダー枠にはリーダーシップとカリスマ性が必要で、分析枠…冷静枠ともいうんだけど、それには賢さと冷静さ、そして肉壁枠には身体の大きさ、体力、タフネスが必要なんだよね」
ユキ「その…それぞれの役割って?」
カナ「私のリーダー枠は他2人をまとめ上げることが役割です。他にも護衛対象の1番近くで護ることも含まれますね。」
サクラ「私の冷静枠は、緊急時に即対応できるようにすることかな。」
ナナミ「うちの肉壁枠は護衛対象を命懸けで護ることだよー。うちとしては楽だからありがたいんだけどなりたいって人は少ないかな。相手が武器を所持してたら1番最初に殺されちゃうし」
ユキ「…七美さん、しゃがんでください」
ナナミ「ん?うん」
七美さんはすぐにしゃがんでくれた。身長差が激しいからこうしてくれないと手が届かないんだよね。僕はゆっくりと七美さんの頭に手を置き、撫でる。
ナナミ「へ!?」
ユキ「僕のことを守ってくれてありがとうございます。」
本当は抱きたいところなんだけど流石に痛すぎる。この世界の女子はこういうのでも喜んでくれるって思ってしたのだが、かなり恥ずかしい。七美さんの顔はタコのように赤くなっている。
ユキ『まさか怒ってる?』
ユキ「ご、ごめん!嫌だったよね!ほ、ほら!早く帰ろ!」
ナナミ『あー…今日のおかず決まったわ…』
サクラ・カナ『羨ましい…』
そして僕たちは真っ直ぐ帰っていった。その間、一回も七美さんとの会話はなかった…