精子提供《前編》
「雪さん、今日はどのような予定でしょうか。ご家族も一緒らしいですが…」
「今日は精子提供のために少し市役所にね」
「精子提供ですか…この時期の市役所は精子提供で男性が多いのでメスたちも狙ってきます。その分男性の護衛がいるので大丈夫だとは思いますが…」
「精子提供かー!私は女だから今まで行ったことけどどんなところなんだー?」
「とても怖い場所だよ。お兄ちゃんが泣くぐらいだから…」
「あ、それで思い出したんだけど、前の僕がここに来る時の護衛ってどうなってたの?佳奈さんたちではないっぽいし…」
「前の雪は普段外に出ないから護衛が必要なかったの。一応佳奈ちゃんたちが護衛ではあったんだけど面識はほとんどなかったのよ。で、精子提供の時は護衛が必須だから佳奈ちゃんたちに頼むつもりだったんだけど、女性が近くにいて欲しくないって聞かなくて…それで市役所から護衛経験のある人たちをお借りしてこっそり護衛してもらっていたの」
「へー…ってあれって…」
見知った顔を見つけてしまい顔が歪む。
「うーん…今日は気分が優れないから帰r」
「雪さんじゃないですか」
「げっ…誠司くん」
そう。そこにいたのは女装姿の竜雲誠司くんだった。誠司くんは少し前に僕のことを襲おうとした前科がある。なんなら女性とかよりも今は誠司くんの方が怖い。
「げっ…ってひどいです。私はこんなに雪さんのことを愛しているのに…」
「僕は愛していないし、どちらかというと嫌いだよ」
「そんなダイレクトに言ってくるところも私は好きですよ。あ、ちなみにツンデレも好みです」
「聞いてないよ。って誠司くんも精子提供に?」
「そうなんです。めんどくさいですよね。年に3回も来ないといけないなんて…」
「僕は記憶がないからどんなことするのかわかんないんだけど…どんなことするの?」
「そうなんですか?そうですね…まず精子提供はコースが分かれてるんです。機械搾取、女性搾取、自己搾取の3コースです。私は機械搾取しか行ったことがないので他のコースの具体的なところはよくわからないです。」
「そんなコース分けがされてるんだ。」
「そうですね。軽くなら知っているので教えますね。自己搾取コースは自分で精子を出して提供するコースです。誰にも知られないので結構人気です。次が女性搾取コースですね。ここは市役所が選びに選び抜いた女性が男性から精子を出させて、それを提供するようなコースです。あんまり人気はないですが一部の層からは絶大な人気を誇るらしいです。最後に機械搾取コースです。ここは機械によって半強制的に精子を出して提供するという物です。その二つのコースで出来ない人が行くイメージですね」
「そうなんだ…僕は何コースにしようかな…」
「機械コースにしましょうよ!大人数で行けば安心ですし!機械コースならどんな感じなのか教えられますし」
「うーん…」
普通に考えれば知り合いの男性のいる機械コースなのだが、誠司くんがここまで押してくると何か裏があるのではと勘繰ってしまう…ただ知ってる間柄の男性は誠司くん1人だし…
「決めたよ。僕も機械コースにするよ。」
「やったぁ!じゃあ案内しますね!」
そして連れられるように奥へ奥へと進んでいく。移動する道中も十数名の男性とすれ違った。ほとんどの人が泣いていたり、怒鳴っていたり、絶望していたりと負の感情ばかりだった。
「なんか怖くなってきたなぁ」
「大丈夫だよ。2人なら尚更ね…」
「??」
「あ、ここだよ」
そう誠司くんが発する。目の前には扉が一枚、ただかなり頑丈そうに見える。
「この先は男限定で護衛のみんなは外で待つ感じだよー」
「はい、わかっています。雪さん、どうかご無事で…」
「うん、頑張るね」
そして僕たちはその扉の向こうに行くのだった。




