誘拐
あれから数日が経ち来週にはテストというところまで来ていた。僕は今、一年生の教室まで来ていた。
「あれってもしかして噂の男の先輩?」
「うわ、噂通り小さい…」
「声かけてこようかな」
色んな声が聞こえてくるが僕はキャーキャー言われるために来たわけではない。
ユキ「竜雲誠司くんは居ますか?」
竜雲誠司くんは一年生にしてこの学校では僕を抜くと唯一の男子生徒だ。
「誠司さんに何か御用でしょうか?」
ユキ「えーと…」
カナ「同じ男子生徒として話をしたいとのことです。」
「いくら同じ男子生徒とはいえ簡単に許可することはできません。」
カナ「それを決めるのは護衛の貴方ではなく誠司さん本人が決めるべきことです。」
「…わかりました。」
そう言ってその子は1人の女の子に近づいていく。するとその女の子が立ち上がり僕に向かってくる。
「呼びましたか?」
ユキ「え…もしかして…竜雲誠司くん?」
セイジ「そうです。私が竜雲誠司です。」
ユキ「えーと…失礼だったら申し訳ないんだけど男子だよね?」
セイジ「はい。私は歴とした男子ですよ」
身長は僕より少し高いぐらいだろうか?顔は美少女だ。しかも服装も女子用の制服…髪はショートだが、それでも女子にしか見えない。
セイジ「そこまで疑うのでしたら、証拠を見せても構いませんが…」
誠司くんがそう言った瞬間全員の視線が僕たちに向く。それから守るように3人の女子生徒と佳奈さんたちが囲む。
ユキ「そこまではしなくていいよ。今日はお友達になりたくて来たんだ。」
セイジ「なるほど…私も男友達ができるのは嬉しいです。女子生徒は護衛の皆さん以外は獣しかいないですし…」
ユキ「そうなんだー『モテるんだなぁ〜』」
セイジ「一度場所を変えましょうか。人が多いですし」
ユキ「そうだね。」
既に放課後で少しは帰っているが、それでも男子生徒2人が会うというのが珍しいのか結構な生徒が集まっている。僕たちはそこから離れて空き教室に入った。
セイジ「ここは2人だけで話したいので、皆さんは外で待っていてください。」
「ですが、男性のみにしてしまうと女たちがどう動くか…私たちが守りきれません。」
ユキ「僕も2人きりになりたいかな。」
カナ「ここに関しては一年生の護衛リーダーと同じ意見です。流石に護衛なしというのは許可しかねます。」
ユキ「大丈夫だよーここは3階だし、それに少しの間だからね」
「…」
カナ「はぁ…わかりました。全員外に出てください」
「ちょっと!貴方はそれでいいんですか!?護衛対象ですよね!?」
カナ「私たちは信頼関係を重んじているので『雪様に嫌われたくないし…』」
サクラ「それじゃあ全員出ていくよー一年生組もー」
そして一年生の護衛の子たちは引きずられるように外に追い出された。
セイジ「ふぅ…で、雪さんですよね」
ユキ「あ、まだ自己紹介してなかったね。2年生の柳雪だよ」
セイジ「知っています。噂は一年生の私の耳にまで入っていますので」
ユキ「嬉しいなぁ〜そう言えばなんで誠司くんは女装なんてしてるの?」
セイジ「?逆に何故雪さんはしていないのですか?」
ユキ「?」
そこから色々話を聞くとなんでもこの世界では身長が低く女性に見える程度の顔つきの男性は女装をして女性から身を隠しているらしい。学校に登校している男子生徒も女装する人が多いらしい。
セイジ「雪さんでしたら女装は似合うと思いますが…」
ユキ「そうかな?」
前の世界では楓から無理矢理女装させられることはあったが自分から女装したことはなかった。
ユキ『意外とありなのか?』
僕がそんなことを考えていると急に窓が開いた。
ユキ「は?」
セイジ「え?」
僕たちが急なことで呆けていると発煙弾のようなものが投げられ煙が噴射させられる。その後に気付き佳奈さんたちが入ってくる。
カナ「これは!全員呼吸しないでください!」
その時には僕たちは煙を吸いすぎており、その場で気絶してしまった…
・・・
気がつくとそこは見知らぬ廃墟だった。
「姉貴…前回の男はエグかったっすけど今回は大丈夫っすかね?」
「大丈夫だろ。それに前の男も結局は私たちの金稼ぎのために身体を売らせてるだろ。それに今回の奴らはわざわざ無防備な学生を狙ったんだよ。」
「そうっすよね…てか片方はこの顔つきで女装してないっすよ」
「襲われないとでも思ってたんだろ。ぬるま湯で生きてきたんだろ。今回は人生の恐ろしさを教えてやるよ」
この2人のセリフ聞く限り僕たちは誘拐をされたらしい。でも僕の意識がある時には佳奈さんたちが入ってきていたはずだ。つまりはあの6人に2人がかりで勝ったということになる。僕たち2人じゃ勝ち目がないかもしれない。
セイジ「うーん…」
「お、目が覚めたか」
「おはよー」
セイジ「貴方たちは?」
「私たちはお前たちの初めてを奪う悪魔だよ」
セイジ「へ…?」
「姉貴、こいつ漏らし始めてますよ」
「ははは、やっぱり男はこんな奴らなんだよ」
誠司くんがビビって漏らしているのに対して僕は不覚にも興奮をしていた。
「どっちから犯しますか?」
「そうだなぁ、ビビってない方から犯してやろうか。その強気な顔が恐怖で歪むのが見てみたいからな」
2人の手が僕に近づいてくる。近づくたびに僕の股間は熱くなっていく。そして触れられるという瞬間だった…
「待ちなさい!」
「な!お前たちは!」
そこにいたは佳奈さんたちだった。
「なんでここがわかったんだ!」
カナ「念の為雪様のポケットに小型の発信機を入れていたんですよ。貴方たちに催眠ガスで眠らせられた後にすぐにその情報を元に追いかけてここに辿り着いたということです。」
「ギリギリでしたが、なんとか間に合ったようですね。誠司さん…私がついていながら申し訳ありません。」
セイジ「…大丈夫だよ…」
その護衛の人たちに今の誠司くんの状態が目に入る。すると3人の顔がどんどんと怒りに染まっていく。
「よくも誠司さんをこのようにしてくれましたね…」
「ここでボコしてから警察に突き出してやるからな」
「ええ、誠司さんにそんなことをしていいのは私だけなので!」
そして佳奈さんたちの目線は僕に向く。僕は咄嗟に立っている息子を隠す。
カナ「雪様…まさかもう手を出されて…」
ユキ「まだ何もされてないから!だから早く倒しちゃって!」
カナ「…そうですね…貴方たちは私たちの癒しの存在を奪ったんです。覚悟はいいですね」
ナナミ「雪くんを誘拐した時点で貴方たちの運命は決まっているだよ」
サクラ「雪くんは守る…貴方たちなんかには…もう渡さない…」
僕を守るように3人が前に立ってくれる。
「ふん、一度私たちにやられた奴らが何を言ってるのさ。やってやるよ!」
「うっす姉貴!」
2人の誘拐犯が佳奈さんたちに襲いかかる。佳奈さんたちはそれを軽々と避けていく。
「じゃあこれはどうかな?」
姉貴と呼ばれている方の女性が自然な動きで発煙弾を落とす。
カナ「な!!全員息を止めて!」
「よそ見してんじゃねぇよ」
もう1人の女性が佳奈さんに蹴りを放つ。佳奈さんはそれを避けようとするも避けきれず腕で受ける。発煙弾から再び催眠ガスが噴射、全員は息を止める。そして両者動きが鈍ってくる。だが徐々に誘拐犯の方が動きが良くなっている。
ユキ「…大丈夫かな…」
セイジ「…頑張って…」
僕は辺りを見渡し何かないか探す。
ユキ『ガラスの破片…』
僕は近くに落ちていたガラスの破片を足で引き寄せ手に持つ。そのガラスの破片を使って縄を擦っていく。
ユキ『時間はかかるけど、何かをしないといけない…』
・・・
私たちは目の前の女とやり合っていた。ガスは少しずつ晴れていっている。だがそれでも先ほどまでに受けたダメージは大きい。私以外の五人も息が荒い。呼吸をまず整えなければならない。でも相手はそんな余裕をくれない。
カナ「くっ…」
「護衛もこの程度なのね。」
サクラ「思い出しました…どこかで見た顔だと思っていましたが…あなた、現恋楽学園三年の八原和也さんが一年の頃に護衛を担当していた原口千夏ですね」
チナツ「知っている人がいたのね。そうよ。私は原口千夏よ」
サクラ「もう一人は二年前、八原和也さんを犯した集団の主犯、大黒海ですね」
ウミ「私のことも知ってるんすね。でも、だからなんなんすか」
サクラ「正体がわかればいくらでも対処法はあります。それにそろそろ…」
「そこまでです!」
複数人の拳銃を持った警察が入ってくる。
チナツ「これは…」
カナ「私たちが急いでいたとはいえ、警察への通報をしないとでも思っていたのですか?」
「抵抗しないでください。」
警察が二人に手錠をしていく。さすがの2人でも拳銃にはなす術はない。大人しく捕まっていく。そしてそのまま連行されていった。私たちも事情聴取をかねて警察署に行くこととなった。




