エピローグ
こちらエピローグですが、この前に、先ほど投稿した最終話がありますので、そちらからお読みください。
(4月5日 金曜日)
学年が上がり、私達は、高校3年生になった。私と小都と孝市と、ついでに河原崎さんは、同じクラスになった。ちなみに、私の後ろの席には孝市が座っている。離れた後ろの席になった小都はものすごい目つきで孝市を睨み、孝市は世界の終わりみたいな顔をしていた。最近の小都は、他人の前でも感情を隠さなくなってきた気がする。
そしてホームルームになると、先生が何やら咳払いをして私達を見回した。なんだろう。
「実はな。このクラスに、転校生がやってきた」
美人? と尋ねる男子生徒の野次を注意した後、先生は扉の方に声を掛ける。
入ってきたのは、すらりとした姿の女子生徒だった。薄い銀色の腰まで伸びる髪と、透き通るようなオッドアイ。彼女は、私を見て、嬉しそうに笑みをこぼした。
「多重世界、お待たせ。これから、わたしと遊んでくれる?」
ガタッ、と小都が立ち上がる気配がした。振り向くと、まるで外敵を見るみたいな目で、転校生を睨みつけている。まあまあと手で制していると、孝市が真剣な顔を近づけてきた。
「そうだ、報告するって約束してたよな。……昨日、空から人が降ってきた。あの転校生がな。これも知ってたのか?」
……3年生になったばかりだというのにちょっと色々起きすぎて、私はクラスメイトに囲まれている転校生を横目に、屋上に退避した。
そういえば、転校生がやってくる3年生からがメインストーリーだったとコメントでは言っていたっけ。ただ、今となってはコメントがまったく流れなくなってしまったので、私からコンタクトは取れないけれど。
でも、ひょっとしたら。世界のどこかには、私以外にもコメントを見られる人はいるのかもしれない。だって一般人代表な私ができたのだし。もし、コメントにコンタクトを取れる人間と会えたら、お世話になった彼らに「元気でやっている」とだけは伝えたい。
……けど、頭がおかしくなってしまうのだっけ。確かに、他の世界があったり、ここがゲームの中だという可能性があることに耐えられる者は、あまりいないだろう。いたとしたら、私みたいにそれ以上に切羽詰まった何かがあるか、よっぽどの酔狂者に違いない。
私が郷愁を込めて屋上からグラウンドを眺めていると、不意に影が差した。見上げると、河原崎さんが、至近距離から、私を見下ろしている。いつの間にかやってきていたらしい。彼は、いつものように信用できない笑顔を浮かべたまま、両手を広げた。
「悩みごと? 俺に何でも頼っていいよ? 江麻ちゃんには楽しませてもらったしね」
「結構です。あなたに聞きたいことなんてありませんから」
すると、河原崎さんは面白そうに、一言だけ呟いた。
「――即答で草」
「あれ? やっぱりちょっと待って」
コメントの彼らは、この世界は3年生になってからが本番なのだと言っていた。
ひょっとしたら……本当の物語は、これから始まるのかもしれない。
[システムエラーメッセージ]
[エラー通知]
システムリセット失敗
原因:生存者確認における不一致
[死亡確認失敗]
萩森 江麻:死亡確認エラー(生存状態)
遠野 千景:死亡確認エラー(不正な生存者)
リア・ウィンター:死亡確認エラー(不正な生存者)
[システム修復プロセス開始]
異常データが検出され、修復処理が開始されました。
現在、データ修復を行っております。
[修復失敗通知]
システム修復プロセスに失敗しました。
修復試行は行われましたが、予測外の異常が発生したため、修復不能。不正な生存者の存在により、エラーの解決を行うことができません。
[システム異常状態]
修復失敗:進行中のデータ修復が完全に失敗。異常な状態が確認されました。
システム予測外の挙動により、修正が行えない状態となっています。
[不明なキャラクターが確認されました]
予期しないキャラクターが追加されました。
[警告]
システムが正常動作しない状態が続いています。
[不明なシナリオの発生が確認されました]
予期しないシナリオの発生が確認されました。
シナリオ「普通の彼女で特別な君」が発生しました。
このルートに進む場合、あなたの属性をヒロインに変更します。進みますか?
「はい」
→「いいえ」
シナリオ「幼馴染の恋※」が発生しました。注記が存在します。確認してください。
※同性同士の恋です。構いませんか?
→「はい」
「いいえ」
※あなたは恋をはっきりと理解していませんが、それでも進みますか?
「はい」
「いいえ」
→「はい」
「いいえ」
――シナリオ「幼馴染の恋」が解放されました。
今後、さらなる異常事象が発生する可能性があり、システム内の修復が困難な状態にあります。現在、状況の推移を注視しています――
ということで、完結です!
ブクマ、評価、感想くださった方、リアクション(こんなのあるんですね)してくれた方々、この作品を読んでいただいた方々、どうもありがとうございました!
えー、異論はあるかと思いますが、これはラブコメです。
恋の話なので。
たぶん江麻ちゃんは単体でも突っ走る性格なので、これからも小都ちゃんは大変だと思います。
頑張ってほしいですね。




