【9月15日】~【9月21日】
【9月15日 火曜日】
小都と陽葵は、揃って頭を抱えたまま、放課後の教室で向かい合った。まず、絞り出すような声で、陽葵が口火を切る。
「今日もそのまま金髪だったな……あいつマジで何なの? 気に入ったの? 死ぬほど似合ってないぞって誰か言えよ……」
「江麻ちゃんのことだから、きっと何か理由があるんだと思う」
顔の前で両手を組んで、真剣な顔で答える小都。それを見て、陽葵は呆れたように溜息をついた。そんな理由なんて、あるわけがないのに。
「そういや、お前ってファンクラブあったじゃん。そっちは大丈夫なの?」
「大丈夫、みんな、応援してくれるって言ってくれたから」
ほら、と顎をしゃくる小都。日葵はその方向に耳を澄ませてみた。すると、隣の空き教室から、何やら大勢がしゃくりあげたり、唸ったりする声が聞こえた。その中には、少ないが、女性の声も含まれていた。総じて、亡霊のようだった。
「俺らの姫の小都ちゃんが……!」
「小都お姉様が、誰かのものになるなんて……⁉ 皆で拝むものなのに!」
「みんな、泣くな……! ガチ恋勢が多かったのも知ってる! だが、俺たちが一番願ったのは、小都ちゃんの笑顔、小都ちゃんの幸せじゃなかったのか⁉ なら、応援すべきじゃないか! だからこそ、彼女が頷いてくれるならと、告白もNGじゃなかったんだから」
「会長……!」
亡霊のリーダーらしき号令に対し、おお、と感にむせぶ大勢の亡霊の声。陽葵は、それ以上考えるのをやめた。これ以上亡霊の招き声に耳を傾けていると、仲間にされてしまう。
【9月21日 月曜日】
「最近、江麻ちゃんがコーチみたいなこと言ってくる。どうやったらわたしの恋愛がうまくいくんだろうって一生懸命考えてくれてる」
電話の向こうから聞こえる悲壮な声に、陽葵はため息をついた。顔を覆っている小都の顔が目に見えるようだった。
「傷口に塩塗られててウケる。よく平気な顔でいられたもんだ」
「吐きそうになったけど、気力で耐えてセーフだったよ」
「まあ、驚くもんな。友達が目の前でいきなり吐いたら」
「江麻ちゃん優しいから、背中さすってくれた」
「……それほんとにセーフか? 困らせてないか?」
どう考えてもアウトな気がした。しかし、それにしても……。
「ああでも謎が1つ解けたわ。なんで江麻の前だけあうあうしてるのかって思ってたんだ」
「そんなに目立つかな?」
「普段しっかりしてるから余計に。でもまさか好きだったからだとは」
そして、しばらく小都は沈黙した。しかし、何か言いたそうである。陽葵が促してみると、小都はどこかこわごわと切り出した。さっきまでよりもだいぶ小さな声だった。
「それとね、料理が青いの」
「……え? マジでどういうこと?」
「最近ね、江麻ちゃんが変な色の料理を作ってるの。青いカレーとか」
「うわまずそう」
「おいしいの。それがかえっておかしいの」
「なんだそれ、意味わからん。どっちにしても、明らか奇行だよな……さすがに小都の相談だけでそうなってるとは思えないよな。また変なこと言い出し始めたら注意だな」
「なんで突然おかしくなり始めちゃったんだろう……?」
陽葵は電話を切った後、この前江麻と交わした会話をふと思い出した。願いが叶う代償として、頭がおかしくなる神社の話。陽葵は、ぽつりと独り言をつぶやいた。
「まさか、だよね」




