ep9 譲り合い戦争
「それにしても…メイドすらいないとは…。どうしたのだろう。何か事件でもあったのだろうか…?」
多分私たちに気遣ってるだけだと思いまーす…!
「お嬢様っ!大変です!!あ、失礼しました、殿下」
気遣っているだけだと思ったら緊急事態だった…
「何事か?」
「じ、実は…っ!」
* * * * *
『なんですって!?』
咄嗟にしては上手いお嬢様言葉だったのではないだろうか。フフン。
じゃなくて、
「厨房でお義兄様が火傷だって!?」
そこまで緊急事態ではなかった…
お菓子作りが趣味の兄さまにはよくあることだ。
きっとメルとジークに持ってこようとしていたのだろう。兄さまは妹が病気なことも俺が妹とすり替わっていることも知らないのだ。妹は楽しく殿下と話していると思っているし、俺は謹慎中だと思っているのだろう。
「あとこれを渡せとのことです」
こ、これは
『兄さまの作ったミルフィーユ!!』
なんだよ作り終わってんじゃねーかよ!
あれ、でも1個しかない…。
もしかしてもう1個作ろうとして火傷したのかな?
「フィー!!兄さまもう1個ミルフィーユ作ったよー!一緒に食べよー!…………あ、でっ、でっ、殿下っっ…………、も、申し訳ございませんでしたぁあぁぁぁあぁぁぁあ!!」
「い、良いから落ち着けぇぇぇぇぇぇぇ!」
* * * * *
「すみましぇん、グスグス…モグモグ」
『あ、兄さまそれ…』
「ん?」
『ミルフィーユ2個しかないんだけど……』
「え。あ、うわぁぁあぁあ、す、す、すみましぇん!!」
「我は要らん。お主らが食べると良い」
「で、でもぉ!」
『わ、私はいつでも作ってもらえるし、何回も食べたことがありますので〜…殿下がお召し上がり下さいぃ…』
「で、では…」
ε-(´∀`*)ホッ…良かった…。
「フィー、口を開けろ」
『へ?あー…ん!?』
とっても美味しいミルフィーユの味がする。
『おいひ…ひゃひゃくへ!ひゃんへへんはははへないんへふは!!(おいし…じゃなくて!なんで殿下が食べないんですか!!)』
「すまん、何言ってるか全く分からん(ニヤニヤ)」
殿下がそう言いながら自分の手を舐める。
「ん。甘い」
絶対味してないでしょうが!!てかミルフィーユって粉出るの!?でないよね!?やっぱし食べてないじゃん!!