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初デート

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 おじさんのSさんには好きな女の子が居た。彼女は28歳。ネットで知り合った。Sさんは55歳だったが、35歳と嘘をプロフィールに書いていた。バリバリ仕事していたのは昔のこと。元々温和で敵を作らなかったSさんは、今は肩書きだけの役職もらって会社の片隅に居させてもらっている。


 彼女とは気が合ってすぐに仲良くなった。お互い陰キャということがわかり、メッセージでの交際がスタートした。知らない話題も拾ってネットで検索して感想を述べる。それが意外に受けてしまう。


 女性経験が無かったSさんはおずおずとやりとりし、通話すらしなかった。お互いの暗黙の了解になっていた。


 半年経って、思い切って会いませんか? とメッセージを送ってみた。


 いつもは響くように返答が来るのに3日後返答が来た。その間、Sさんは踏み込みすぎたかと思い悩んでいたが、

――映画でも観ましょう

 とあって舞い上がった。


 話題の映画を調べて、アニメにした。お互いアニメが好きだと知ってたから。若い頃はアニメが好きだと知られたらオタク扱いされて侮蔑のまなざしにあったのになぁと思い返しながら。


 さて、問題は20もサバを読んでいたことだ。街のアパレルショップに行って店員さんにコーデネートしてもらい、白髪が生え始めていた髪も染め、若者風にカットしてもらった。


 これで、あとはごめんなさいするしかないと腹を括った。振られたらそのときはそのとき。

 念のために神社に行って縁結びのお守りを貰ってきた。


 そして、当日。

 待ち合わせ場所には10人ほどの女性が居て、Sさんは始めて通話ボタンを押した。

「もしもし、どこに居ますか? 手を上げてください」

 手を上げた女性が居た。若作りしているけどおそらくは40代のおばさんが。


 ああ、年齢ごまかしていたの自分だけじゃ無かったんだ。でも、年下だと思って彼女は話していたんだよな。


 Sさんは恐る恐る話しかけてみた。彼女は最初、驚いたようだったがすぐに微笑んだ。心のスイッチがカチリと切り替わった音が聞こえたような気がした。


「お互いおんなじこと考えていたようですね」

「そうですねー、ふふ。いや、私はなんとなく分かってましたよー」


 その笑い方が好ましくて年齢なんて気にならなくなった。


「じゃあ映画行きますか。主演の声優はご存じの通り実力派の……」

「うんうん」


 端から見ても初々しくて、仲の良いカップルだった。

ストックは半年分あって、一定量超えたらKindleで先行発売しています。


この頃は生成AIを試してましたが、自著が多いです。最近、生成AIで面白い小説作る方法が掴めてきたのでそれでかいてますね。その方法についてはnoteで発表を徐々にしていってます。

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