人と妖精のはざま
「~♪」
今日は恋人のシモンとピクニックに行く日。
シモンはあたしの恋人だ。
あたしはそばかすのある以外は地味な顔に、縮れたオレンジに見えなくもない、濃い金髪で容姿は中の中か中の下かってところだと思う。
シモンと一緒にいると使用人か何かに見られるらしく、よく驚かれるか、酷い人になるとコソコソ笑われて嫌な気分にさせられる。あたしがいくら頑張ったって人目を引くのはこの髪ぐらいだけど、シモンは違う。
彼は誰が見てもハンサムなイケメンだ。
すっと通った鼻筋に、宝石のような緑の瞳は若葉のようで見た人の心を和ませる。
そんな人がどうしてこんな小さな村にいる地味なあたしを選んでくれたのか分からないけど、シモンがあたしのことを愛していると言ってくれる度にあたしの心も浮き足立ち、いつも幸せな気持ちにさせてくれる。
シモンとデートに行くために、サンドイッチを作りジャムも一瓶入れる。
前にシモンが好きだと言っていたアプリコットジャムだ。
準備は出来た。後はシモンと一緒に出掛けるだけ。
いつものように庭から現れるだろうから窓際に座ってシモンが来るのを待っていようかしら?
この間買ったレース用の糸でショールでも編んでいようかしら。シモンを待っている間にどれぐらい出来るかしら?
ウキウキしながら椅子を引っ張り出し、シモンがいつ来てもいいように窓際に設置して、そこに腰掛ける。
若葉色の糸はシモンの瞳に似た色だ。お揃いで何か作ってあげたらシモンも喜ぶかしら?
何がいいか考えながらショールを編み始めれば、あっという間に集中してしまった。
シモンが来たら声を掛けてくれるだろうからと安心して編み始めると、あっという間に集中してしまった。
◇◇◇◇◇◇
カーカー
「ん? あれ?」
しばらくずっと編み続けて、不意に聞こえてきたカラスの声に顔を上げれば、辺りはすっかり夕焼けのオレンジ色。
いくら夢中になっていたからと言ってこんな時間までシモンも何も言わないだなんておかしいわ。
「シモン?」
今日はピクニックに行きましょうと約束していたのに、声ぐらい掛けてよねと思って顔を上げて、近くにいるはずのシモンを呼ぶ。
いるのだったら返事があるはずなのに、静まり返った部屋にシモンはどこに行ってしまったのと言いたくなる。
もしかして、来られなかったのかしら? それだったら他の人を寄越すはずだけど、人を寄越す余裕もないぐらい具合が悪かったとか?
そんなことにも気付かずにあたしは呑気にショールを編んでいたの?
不甲斐ない自分に落ち込みそうになるが、シモンのことが気になる。
作りかけのショールを片付け、昼食にと用意していたサンドイッチが入ったカゴに果物と飲み物を入れて家を出る。
目指すはシモンの家。
具合が悪いのか、それとも他の用事なのかは分からないけど、シモンがあたしに何も言わずにデートをすっぽかすような人ではない。
途中何人か知り合いに出くわしたので、今日シモンを見なかったか聞いて見る。
「シモン? エキナセアは見てないのか?」
「ええ、今日約束していたのに、会えなかったのよ」
「そりゃ心配だな」
シモンの溺愛を知っていた人たちは口々にシモンの心配をしたり、一緒に行こうかと申し出てくれた。
それに頷いていたら思ったよりも大人数になってしまっていたけど、シモンが倒れでもしていたらあたしの力では運べなかっただろうから、まあいいか。
「シモン?」
ドアをノックする。
いるかな? しばらく待ってみたけど、返事がない。
シモンは成人してからすぐに一人暮らしを始めた。
いつかはシモンの家で暮らすかもとシモンから合鍵を渡されていたけど、シモンがいないのに使うのはどうかと思ってずっと使わなかったんだけど、返事
がないのなら倒れている可能性もある。
シモンの返事がないので、一緒に来てくれた人たちと目配せしてから鍵を開ける。
「シモン?」
ドアを少しだけ開けて声を掛けてみたが、返事はなかった。やっぱり留守みたいね。どこに行ったのかしら?
「寝てるのか?」
「こんな時間まで?」
「医者呼ぶか?」
「先にシモンの様子見てからの方がよくないか?」
あれこれとみんなが話し合っている声を聞きながら、あたしはさっきよりもドアを大きく開け、さらに大きな声でもう一度シモンの名前を呼ぶ。
「シモン? いないの? 今日の約束どうしたの?」
いるならば奥から顔を出して来るはずなんだけど、相変わらず返事がない。
「留守? 今日お前たちシモン見たか?」
「いや、お前は?」
「見てない」
みんなが会話しているのを聞きながら、シモンの家の他の部屋を開けていく。
だけど、どこにもシモンの姿は見えない。
みんなの会話から今日シモンを見た人はやっぱり誰もいないみたい。シモンの家の中も薄暗くて静まり返っていて、どうしていないのよと怒りたくなる。
「急用が出来て誰にも言わずに出かけたとか?」
「エキナセアにも言えない急用って何だよ」
「さあ?」
「とりあえず、エキナセアはどうする? 帰るか?」
「ううん。シモンが戻って来るかもしれないから今日はシモンの家で待つわ」
「分かった。じゃあ、何かあったらまた言ってくれ」
「ええ、ありがとう」
ここまで一緒にいてくれたみんなを見送り、静まり返ったシモンの家に戻る。
今までシモンがいる時にしかいなかったから分からなかったけれど、一人でいるって思ったより心細いのね。
早くシモンが戻って来ますようにと星が出始めた空に願ってみたけれど、その日シモンが戻って来ることはなかった。
シモンがあたしに何も言わずに出て行ってから数日。
みんなシモンがいなくなったことを心配してあれこれと情報を集めてくれるが、あの日以降シモンに会った人はいなかった。あたしもあちこち探してみたのだけれど、村の中でシモンを見つけることはできなかった。
最後にシモンに会った人も翌日にあたしとピクニック行くことを嬉しそうに教えてくれたと言っていたのに。
それなのに戻ってないのかい? と村人たちもびっくりしていた。
それに同意するしかなく、曖昧に頷いてシモンはどうして戻って来ないのよと泣きたくなる。
「そろそろシモンの捜索をするかどうか話し合いをするらしい」
「えっ!?」
シモンがいなくなった日に一番最初に声を掛けてくれて、一緒にシモンのところに行ってくれることを提案してくれたギースさんが捜索と言い出してびっくりする。
「だって、何日も誰もシモンを見てないなんて変だし、エキナセアにぞっこんだったのに、何も言わないで消えるだなんて絶対に何かあったに決まっている」
「……そうね」
ギースさんの言っていることはもっともだ。
あたしもシモンの家にあれからずっと泊まり込んでいるけど、その間シモンが帰って来た形跡はない。
何かあったんだとは思うのだけれど、その何かはあたしには分からない。
ギースさんの意見に同意してあたしも捜索隊に加わる。
熊とか狼が出た時とは違って人を探すだけだからか、思ったよりすんなりと参加させてもらえた。
あたしはシモンを見つけて早く安心したい。いつものようにシモンに抱きしめてもらって何も怖いものはないと思わせて欲しい。
あたしにはシモンだけいてくれたら他には何もいらないのに、どうしてあたしの側にシモンはいてくれないの?
空を見上げれば、鳥が二羽仲睦まじげに飛んでいるのが見えた。
いつもだったら、あたしたちみたいねとシモンと寄り添いながら眺めていたのに、どうしてあたしの側に大事な人はいてくれないのかと泣きたくなってくる。
◇◇◇◇◇◇
「あれ?」
最近自分の手足というか、体に違和感を感じることが増えた。
小さいことだけど、あたしの手足の肌の色とか、顔もこんな風だったかしら? と思うことが増えた。
シモンを探すために、いつもより動いたせいで疲れているのかと思っていたが、その違和感は増すばかり、この違和感を放っておけばその内倒れるかもしれないと思って医者に行くが、医者は何ともないと言う。
「シモンがいなくなって不安になってるんだよ。少し休んではどうだい?」
「そうしてみます」
医者もこの村の人間だ。
あたしたちの関係も分かっているし、当然シモンがいなくなったことも知っている。
シモンがいなくなって、あたしも捜索に加わっているのも医者は分かっているから、こう言ってくれているのだろう。
反論する気にもなれなかったあたしは曖昧に笑って頷いてみたが、気は晴れなかった。
シモンがいなくなって一月が経った。
他の人はシモンの捜索は諦めた方がいいとあたしに言って、彼らは段々と捜索を打ち切り、日常に戻って行ってしまった。
最初は数十人いた捜索隊は今はあたし一人。
いつかはあたしも諦めなきゃとは思っているけど、あと少し、あそこまで行ったら、明日になったらとずるずると期間を伸ばし続けていた。
「元気になったらまたシモンを探さないと」
久しぶりに自分の家に帰って来た。
シモンがいなくなって来てからずっとシモンの家に帰っていたから、ちょっと埃っぽい。
休む前に軽く掃除をしていると、あの日編みかけだったショールを見つけてしまった。
「……」
これを編んでいた時はシモンと何を話そうかって思っていたのに、どうしてこんなことになってしまったのかと泣きたくなる。
これ以上見ていたら本当に泣いてしまいそうだったから、あたしは作りかけのショールをゴミ袋に詰め込んで捨てることにした。
もしかしたらシモンが戻って来た時に惜しくなる可能性も考えなくもなかったけれど、そうなったらまた作ればいいだけだわ。
今の気持ちでは持っているだけでも辛いもの。
シモンとの幸せな記憶がたくさんあるこの家にいるのも辛い。だけど、シモンの家に行ってもいつ戻ってくるかと気にしてロクに寝られないのも嫌。
もう関係ない土地に引っ越して何もかも忘れて生きた方がいいのかもしれない。
でも、そんなこと出来ないのはあたしが一番分かっているじゃないの。
浮かんだ答えに自嘲して、あたしはまたシモンを探すために家を出る。
頭では休んだ方がいいのは分かっている。だけど、それ以上にシモンとの思い出がたくさんある家にいるのは嫌。
誰かの家に泊めてもらえればよかったんだろうけど、あたしとシモンが付き合い出してからあたしは村の女性から距離を置かれるようになってしまった。
あの時はシモンみたいな美男子と付き合ってるやっかみだと思っていたけど、こうなってから頼れる女友達がいないのは、ちょっと困る。
小さな村だから、この村には宿なんてない。
こうなったら野宿でも何でもしてシモンのことを見つけてやらなくちゃ。
シモンを見つけてこんなに大変だったんだからと会ったら言ってやろう。
「……だから、それまで無事でいてね」
空を見上げれば、いつぞやは鳥が二羽仲睦まじげに飛んでいたのに、今日の空は曇っていて、まるであたしの心を写しとったかのようで、それが何だかとっても不快に感じて、あたしはソッと目を反らす。
違和感は日に日に増えて行く。
ここのところ自分の腕に別の誰かのほっそりとした白い腕が重なって見えたりするようになり、その度に腕が増えたとぎょっとしてしまう。
そうなれば休憩するようにしているんだけど、その違和感が随分増えてしまった。
こうなったのはシモンがいなくなったからだ。
シモンが戻ればきっとよくなると信じているけど、シモンの姿は見えない。
それに、最近変な夢まで見るようになった。
あたしは蝶々みたいに小さくなって花の間を飛び回り、あたたかなお日さまの下でくるくると舞い踊っているのだ。
そこでは苦しみも悲しみもなくて、ただみんなと一緒に踊っていた。
たまに喧嘩になることもなかったけど、みんなで踊ればあっという間に仲直り。
夢なのに妙にリアルなそれにあっちが現実だったらよかったのにと考えそうになる。
だけど、夢の中にはシモンはいない。
だったら夢は夢でしかない。あたしにはシモンのいない世界なんて信じられない。
そうよ。きっと何かあって連絡がつかないだけよ。シモンはすぐに帰って来るわ。
そしたらあたしを待たせたことを謝ってくれて、抱きしめてくれる。
「……だから早く帰って来てよね」
シモンが帰って来たら、これからもっと楽しくなるはずなのに、今シモンがいないせいでいつまでも一向に気分が晴れない。
どうしたらこの気持ちが晴れるのか、最近は体の違和感が激しくて歩き回れなくなってきた。
一回家に戻って休んだ方がいいかも。
本当はシモンとの思い出がしみついた家になんて戻りたくはないんだけど、こうなってしまっては本格的に休んだ方がいいのはあたしでも分かっている。
よろよろとした足取りで何とか自分の家にたどり着いた。
後はベッドにたどり着ければ、いいやと思いながら歩いていると、ふとここは本当に自分の家だったっけ? とまた違和感を感じた。
今までは自分の体だけに違和感を感じていただけだったのに、今日は自分の家にまで違和感を感じるようだ。
この違和感はいつから? シモンがいなくなってからだと思うけど、違うのかしら? 本当にあたしがおかしくなったのはシモンがいなくなってからだったの?
家の外から子どもたちがはしゃいでいる声がする。いつもなら気にも止めないそれに、今日はやけに気になってしまう。
いつか子どもたちのはしゃぎ声を聞いた時はシモンとあたしの間に子どもが出来たらどんな子になるんだろうかと想像したこともあったけれど、今は外の声を全て遮断してしまいたい。
さっきまではふらふらとだけど歩けていたのに、もうそれも出来ない。
這いずるようにベッドまで行き、何とか寝転がる。
今、暗い気持ちなのは具合が悪かったからだ。よくなったらまた元気になる。
そうなったらこの違和感も消えるはず。
「そうよ。それに元気になったらシモンを探しに行かなくちゃいけないから早く治さなきゃ……」
もう目を開けているのすら辛くて、あたしは意識を手放した。
夢を見た。
いつぞや見たようなふわふわとした夢だった。
あたしは夢の中で妖精になっていて、みんなと楽しく過ごしていた。毎日が楽しくて、自分の存在に何一つ疑問を持ってなかった。赤い髪はそのままに金色に輝く半透明の翅。
あたしとは似ても似つかないぐらいの整った顔は、まるで神様が作った最高傑作のお人形みたいでちょっとゾッとする程だったけれど、その顔はいつも笑みを浮かべていたから怖くはなかった。
その美しい妖精になってるあたしは最近感じる違和感なんて、存在しないかのようで楽しかった。
ずっとこの環境にいたいと思うのに、時間が進んで行く内に状況が変わって行った。その日もいつもみたいに花の蜜を夢中で集めていた。
だけど、途中で森の様子がいつもと違うことに気付く。いつもなら、小鳥とか何かしらの声が聞こえてくるはずなのに、今日は一切そういった声が聞こえて来なかった。
他の妖精に聞こうと顔を上げた時だった、仲間たちの姿も見えないことに気が付いたのは。
花の蜜に夢中になりすぎていてみんながいなくなっていることにも気付かないなんて。みんなどこへ行ってしまったんだろ。
「!」
いきなり強い風が吹いて倒れ込みそうになる。その時に空を見上げれば、真っ黒な雲が空一面覆われていた。
真っ黒な空なんて今まで見たことない!
これって昔長老が言っていた悪魔が現れる前兆だ。どうしてこんな大事なことを誰も教えてくれなかったのよ! 花の蜜に夢中になっていた自分が悪いのだろうけど、どうしても文句を言わずにいられない。
だけど、それよりも先にここから逃げなくちゃいけない。悪魔に捕まってしまったら、あたしたちは死より恐ろしい目に合わされるか、死ぬまで悪魔たちのおもちゃにされて悲惨な目に合わされるらしい。
そんな未来はまっぴらだ。
「!」
だけど、あたしの行動は遅すぎた。
悪魔から逃げようとした時にはすでに悪魔があたしの目の前に立っていた。声にならない声があたしの口から洩れ、気付いたときにはあたしは今のエキナセアになっていた。
どうして悪魔が妖精を人間の体に入れたのか分からない。ただの悪魔の遊びの一環だったのかもしれない。長老の話しとはだいぶ違ったけど、無事だったのだからそのことを喜んでおけばいいよね。
あたしの扱いは悪魔の遊びとしてはかなり良心的だったのだろう。自分が妖精であることを忘れて人間として生きていただけだったのだから。
でも、妖精であることを思い出したのなら、人間である必要なんてない。妖精に戻らなくちゃ。
ふわりと腕を動かせば、ほっそりとした白い腕。背中には金色に輝く半透明の翅。いつか夢で見た姿の姿になっていた。
家の外に出てふわりと翅を動かせば、ふわりと体が浮き、そのまま空に羽ばたく。
下を見おろせば、村の人たちの生活が見えた。あの人たちはあたしとは違って人間だったらしい。
もう人間として暮らさなくていいんだ。悪魔もいないみたいだし、あたしは自由だ。
ふわふわと飛びながら久しぶりの空は気持ちいいがいいなとか、戻ったらみんなにどうしてあの時悪魔のことを教えてくれなかったのと文句を言わなくちゃいけないわ。
何か忘れているような気がしなくもないけど、今は妖精に戻れたことを喜びたい。
◇◇◇◇◇◇
妖精の里に戻ったあたしは、人間の時と比べものにならないぐらい妖精の仲間たちと楽しく過ごしていた。仲間たちはあたしが無事に戻ってきたことを喜び、祝ってくれた。
時々人間だった時のことが一瞬浮かび上がって来ては、消えて行くけれど、それはあたしの中に留まることもなく日々を過ごしていたが、何か物足りない気もする。
それは何か分かれば、この気持ちは消えてくれるのかしら? 分からないけど、人間だった時のことを思い出せば何か分かるかな?
その日からあたしは人間だった時のことを思い出そうとした。人間だった時に住んでいた村にも行ってみた。
人間だった時に、妖精を見つけたら捕まえて貴族とかいう人たちに献上されて、見せ物になってしまうと聞いていたからひっそりと。
人間だった時に住んでいた家にも入ってみた。だけど、そこは埃まみれで床や柱はボロボロで、とてもこの間まであたしが住んでいたとは思えないほどのあばら家だった。
これも悪魔の影響? でも、あたしがいた時は掃除だってしていた。掃除出来なかったのはいつから?
「あ……シモン」
あたしが人間だった時の恋人。そうだ。人間だった時にずっと探していたのに、すっかり忘れていた。
どうして彼のことを忘れていたのか。
彼と会ったのは人間になってわりとすぐの頃だったと思う。妖精としての記憶は忘れ去られていたはずなのに、人間として生きるのに不慣れなあたしに優しく声を掛けてくれた美しい人。
彼のためなら全てを捨ててもいいとすら思ったのに、どうして大切な人を忘れてられていたのだろうか。
シモンを探さなくちゃ。妖精に戻ったあたしはシモンの隣にはいられないけど、こっそりとシモンの姿を見ることは出来る。
人間の村を出て、妖精の里に戻ることもせずにあたしはシモンを探し回った。
シモンみたいなイケメンは人間では殆ど見かけない。だから、顔がいい男がいると耳にすればシモンじゃないのかってすぐに飛んで行った。人間と違って移動するのが速くなったのはいいけど、見つけるイケメンはどれもこれもシモンほどのイケメンではない人ばかりで、肝心のシモンが見つからない。
どこに行けば会えるんだろう。その日もどこかの街でシモンがいないかと探している時だった。
「なあ、聞いたか?」
「ん? 何をだ?」
人間だ。慌てて草むらにかくれてやり過ごそうとしていたら、その人間たちの会話が聞こえてきた。早く去りなさいよと思ったけど、耳だけは彼らの話がよく聞こえるようにそばだてる。
「何か王女様がとんでもない美男子を捕まえたんだとか」
「何だそれ。俺たちが美男子なら王女様に養ってもらえるのに残念だったな」
「だなー。その美男子も今頃王女様とイチャイチャしてたりすんのかねぇ。羨ましいな」
「いや、俺が聞いた話だとその男は何度も逃走しようとするもんだから西の塔に幽閉されたんだってよ」
「何で逃げるんだ? 王女に飼われていた方が楽して暮らせるのに」
「楽な暮らしより恋人の方が大事なんだってさ」
「恋人ってよっぽどの美人かなんかか?」
「さあ? でも、俺だったら恋人より王女様の方取るがな」
「はは 違いねえ」
笑いながら立ち去った人たちの話を聞いて、それがシモンなんじゃないかって考える。
シモンは誰が見ても素晴らしい見た目だ。西の塔ってところにシモンがいるのなら探しに行かなくちゃ。
◇◇◇◇◇◇
「ここが西の塔……」
人間の時の知識はあるけど、そもそも王女がどこにいるとか知らなかったから、王女を探すところから始めたけど、人間に声を掛けることが出来ないせいで、王女って言葉を頼りにあっちに行ったり、こっちに行ったりと時間が掛かってしまった。
何とかシモンがいるらしい西の塔を見つけた時には、思った以上に時間が掛かってしまったけれど、そんなことはどうでもいい。
ここにシモンがいるのなら、すぐにでも助けてあげなければ。
「どこだろう」
塔の窓から覗き込む。塔の中は薄暗くてよく見えない。明かりさえあればどこにシモンがいるかとかすぐに分かるのに。
塔の中に入るのを一瞬躊躇したけど、中が見えないのだから仕方ないと自分に言い訳してシモンの姿を探す。
中は人気がなく、本当にここにシモンがいるのかと疑わしく感じるけど、どこかにシモンがいるはずだ。
シモンを見つけたらシモンを解放してあげなくちゃ。こんな場所シモンにふさわしくない。シモンはお日様の下が一番似合うのだから。
人気のない塔をうろうろと飛び回っていると、塔の一番上の階で鉄錆び臭い匂いが酷くする。
こんな陰気臭い場所だから何かが錆びてしまったのかもしれないけど、あと見てないのはここだけだ。
ソッと中を覗くと他の場所と同じように薄暗い。明かり取りの窓があり、そこから月明かりが差し込んでいるが、それでも室内全体の様子は見えない。
「!」
この部屋の中が一番錆び臭い。
ここが匂いの発生源なのだろう。人気もないので、あたしはこっそりと中に入った。
だって、ちょっと気になるじゃないの。
シモンがいると思ったのにいないし。それなのに、ここまで来て手ぶらでなんて戻るのもちょっとねぇ。
またシモンを探さないといけないけれど、何の手がかりもなくなっちゃったのだから、部屋の中をちょっとだけ見て回るぐらい許されるでしょうと中の様子を見て回ろうとした時だった。
「?」
鉄錆び臭い匂いの中に懐かしい匂いがした気がした。
この香りはシモンの匂い……? ここにシモンがいた? あの話は嘘じゃなかったんだ。でも、シモンはどこに行ってしまったんだろう?
王女のところ? それとも村に戻れたんだろうか? それは分からないけど、ようやくこの薄暗い室内に目が慣れてくる。室内の様子を見ようとした時、何か大きな物の上に黒っぽい布が掛かっていることに気付く。
これが鉄錆び臭い匂いの原因かな?
「!!!!!」
ぺらりと布をめくってそれが何か気付いた時、口からは声にならない悲鳴が喉に張り付いたようにひきつった声しか出なかった。
シモンは血まみれで体は傷だらけ、目は見開き、何も言わず横たわっていた。ソッとシモンの体に触れれば、冷たくてとても生きているようには見えなかった。
「どうして……」
あの人たちは幽閉されているって言っていた。
まさか殺されているだなんて思ってもみなかった。どうしてこんなことになったの?
「あり得ない……あり得ないわ」
愛してるって囁いてくれた唇は血の気を失い、白くかさついている。あたしのことを優しく見つめていた瞳はどこを見ているかも分からない。
あたしはシモンがこんな風になっているだなんて知らなくて、妖精に戻れたことを喜んでいたなんて……。
「うっ……」
ぽろりとあたしの瞳涙が一つ出れば、あっという間にたくさんの涙が溢れ出して止まらなくなってしまった。
どうしてあたしはシモンがどこかで暮らしていると思っていたんだろ。
人間だった時もシモンがどう過ごしていたのかと気になっていたけど、こんな風になっているだなんて思ってもみなかった。ただ、無事に過ごしてくれていたらとしか考えてなかったのに。
泣いて泣いてどれぐらい泣いたか分からない。ただ、シモンをこんな目に合わせた奴らに復讐してやりたい気持ちはある。でも、その前にシモンをこんな寂しい場所で朽ちさせる訳にはいかないわ。
妖精は人間とは違って魔法が使える。そのことに今深く感謝したことはないわ。
シモンの体を魔法を使って移動させる。シモンの体は人間が入って来られない森の奥に埋葬した。
これ以上シモンを誰かに見られたくない。シモンのお墓に手を合わせてからあたしはシモンをさらった王女を探しに行くことにした。
◇◇◇◇◇◇
「っ……」
あり得ないことが起きてしまった。夜、寝台の中で眠っていたはずなのに、今はどこかの森の中。
賊にさらわれたのは寝起きの頭でも分かる。だけど、ここまで起きなかったことと護衛は何をしていたのかと問いただしたい。
だが、それは今どうでもいい。ここから逃げなくては。
幸い賊も危険な獣も近くにはいないのか、葉擦れの音が聞こえてくる程度。近くに人が住んでいる気配もない。空を見上げても木が生い茂っていて見えないせいで、今が何時かも分からないわ。
どうして見張りの賊がいないのか分からないけど、いないのであればいつまでもここにいる必要なんてないわ。寝間着しか着てなくて心もとないが、賊が戻ってくる前に出来るだけ遠くに逃げなくては。
「っ! 誰!?」
走り出した途端、近くで物音が聞こえた瞬間驚いて誰何してしまった。盗賊が戻って来たのかしら?
でも、明かりも見えなかったわ。ということは、どこかに見張りがいたの?
分からない。でも、見張りがいるのなら逃げたところで無駄になってしまうかもしれないし、最悪殺されてしまうかもしれない。
段々と想像が悪い方へと膨らんでいく。その想像が現実になるのが恐ろしくてもう一度誰何してみたが返事はなかった。
「……何だったのかしら?」
しばらく待ってみたけれど、返事がない。
気のせい? それとも、枝か何かが落ちた音だったのかしら?
でも、見張りがいないのならこのまま逃げ出した方がいいわと思い直したところで、ぼんやりとした明かりが見えてぎくりと固まってしまったけれど、それが妖精の灯火だと気付いて安心する。
妖精の灯火は夜になると妖精の姿が光ることからそう言われるようになった。そして、妖精の近くには邪な心を持った人間は近づくことが出来ないといわれている。
そんな妖精が近くにいるのならば、賊は近くにはいないはずだ。
「そこの妖精。あたくしはユデイル王国の一の王女エスカリーナ。ここの森の妖精とお見受けいたしますが、あたくし気付いたらこの森にいて、供の者もおらず困っていたところにあなたが現れてくれて助かりましたわ。もし、よろしければ森の出口まで案内してくださいまし」
妖精は手のひらサイズで燃えるような赤い髪に人形のように整った愛らしい顔をしている。昔、どうしても妖精を見てみたくてねだってみたことがあったのだけれど、妖精から来てくれない限りは無理だと断られてしまったことを思い出す。
あの時のことを思い出せば、苦い思いが浮かんでくる。ユデイル王国の王女として生まれ、蝶よ花よとこの年まで生きてきた。
あたくしは女だからと弟のように帝王学を学びこそしなかったけれど、立派な王族となるために生きてきた。
息抜きに時々城下に降りて、顔のよい男たちを見つけては侍らせたりしてみたりしているけれど、それは皆あたくしの息抜きだと理解しているから今までは何も言われたこともなかった。
こんなに可愛らしい妖精がいるんだもの。あたくしの新しいコレクションの一つにしたいですわね。
コレクションで思い出した。そういえばいつぞや見つけたとびっきりの美男子。
あたくしがせっかくのお気に入りしてあげようとしたのに、ずっと断り続けるもんだから、むしゃくしゃして反省の意味を込めて捕まえて塔に入れて、何度もあたくしのところで生活すれば、あんな村なんかでは体験したことのないいい暮らしを体験させてあげると言ってあげていたのに、何が嫌だったのかずっと断り続けるせいで、あまりの失礼な物言いにあたくしの他のコレクションの男たちが怒って殺してしまった。
あの美男子が生きていれば、この妖精と一緒に置けばまるで絵画の世界のように素晴らしい光景が見られたでしょうに、残念な気持ちだわ。
「あの、あなた聞いていらっしゃる?」
あたくしが声を掛けたというのに、妖精は黙ってあたくしを見つめたまま動こうとしない。
こんな風に無視されるのは初めてで、どうしていいのか分からなくて困惑する。もしかして、妖精って人の言葉が分からないのかしら?
迷子だということをアピールしてどうにかこの森を抜けたいということを伝えようとしていたら、何かがあたくしの横を通り過ぎ髪を揺らしていきましたわ。
「ヒッ……」
何が通り過ぎたのかと確認しようとして、顔を動かせば顔の横の髪がハラリと落ち髪と共にぼとりと何かが落ちたので、それを確認しようと下を向けぱ耳が落ちていた。
この耳は誰の耳と思う間もなく、あたくしの右耳の辺りに生暖かさと痛みが襲ってきて、右耳を押さえようとしたのに、あるべきはずの耳があった場所の痛みと嗅ぎなれない鉄の匂いのせいで、まともに立っていられない。
「……っどうして」
どうしてあたくしがこんな目に合わなくてはいけませんの。
痛みのせいで涙が自然に溢れてくる。
耳を押さえながらうずくまると目の前に妖精が顔を覗き込んできた。
そうよ。妖精。妖精がいるのに、どうしてあたくしがこのような目に?! 妖精がいたら邪な心の人間は近寄れないはずなのに──
もしかしてこの妖精が何かした?
「……お前」
「シモン」
痛みをこらえながら口を開けば、妖精が喋った。鈴の鳴るような愛らしい声だが、何を言っているのか分からない。
「あたしの恋人のシモンを殺したのはあなた?」
「知らないわ」
シモンなんて名前聞いたことない。ましてやあたくしが妖精を見るのは初めてだ。
そう伝えるのに、妖精はあたくしの体を見えない何かで切り刻み続ける。このままでは死んでしまう。
まだやりたいことだって沢山ある。こんなところで死にたくなんてないわ。
「西の塔にシモンを閉じ込めたくせに」
出来るだけ身を縮めて妖精の攻撃を受けないようにしていると妖精がポツリと呟いた。
「え」
西の塔? 西の塔といえば、先ほど思い出したあの美男子のこと? この妖精があの男の恋人だったと?
「あ、あの男はあたくしが殺したんじゃないわ! 本当よ! あたくしが集めた男たちがあの男を殺したの! あたくしが知った時にはもうあの男は死んでたの! もちろん犯人は処刑したわよ!」
だから許してという言葉は口に出来なかった。妖精の魔法があたくしの胸を貫いたから。
「……でも、あなたがシモンを連れて行かなければ、シモンはあんなところで死ななかったじゃない」
妖精が何か言っていたけれど、もうあたくしの耳には妖精の声は耳に入らなかった。
◇◇◇◇◇◇
目の前で事切れた王女の亡骸にシモンのお墓に供えようかとも考えだけど、やめた。
そんなことしてもシモンは喜ばないだろうし、死んだとはいえ、王女にシモンのお墓を見せたくない。
王女を殺せば気が晴れるかもと思ったのに、あたしの気は全然晴れることはなかったし、シモンが生き返る訳でもない。
こんなことしても無駄だったのに、あたしは何をしていたのか。
王女を殺せばすっきり出来るかと思ったのに、あたしのしたことって一体何だったの?
シモンに会いたい。
会って抱きしめてもらいたい。
シモンともっとずっと一緒にいたかった。
でも、こんなことしたあたしなんてシモンは嫌いになるかもしれない。シモンに幻滅されるのは辛い。
シモンが眠っている森に行って報告しようとしていたけど、人を殺してしまったあたしなんてきっとシモンは受け入れてくれる訳がない。
仲間のところに戻る気にもなれない。
このままフラフラとさ迷っていても仕方ない。シモンと同じところに行けないだろうけど、どうせ生きていてもシモンのいない生活になんて堪えられる訳がないのだから、死んだっていいよね。
だとしたらどこで死のうかな。シモンとの思い出の場所がいいな。
ふわりと空に浮かぶ。シモンとの思い出の場所はたくさんある。どこにしよう。
しばらく悩んでからシモンと付き合うことになった場所にたどり着いた。
ここは、人間になって慣れないあたしのことをあれこれと世話してくれたシモンにダメ元で自分の気持ちを伝えて、シモンにも好きだと言ってもらえた場所。
ちょっと小高い丘になっていて、そこから眺める夕陽は息を飲む程美しかった。そんな場所で付き合うことになって、あたしにとって忘れられない一日だった。
だけど、そんな思い出も今は辛いだけ。
この場所で死ねたら思い残すことなんてないわ。死のう。
まだ朝日も出てないから夕陽は期待出来ないけれど、シモンに会えないんだもん。思い出の夕陽で充分よ。
「エキナセア!」
懐から短剣を取り出して胸に突き立てようとした時、懐かしい声と共に体に強い衝撃があり、短剣を落としてしまった。
「シ……モン?」
どういうこと? シモンは死んだ。それは確認したし、あたしがシモンの体を埋葬したのだから間違いようがない。
だけど、この匂いは懐かしいシモンの匂いだ。そのままぎゅっと抱きしめられて涙がこぼれそうになる。
もう嗅げないと思っていたのに、どういうこと? それにシモンは人間なのにどうしてあたしのことを抱きしめているの?
「エキナセア間に合ってよかった」
「シモン? 本当にシモンなの? お願いだから顔を見せて」
シモンはあたしからソッと離れるとあたしが顔を見やすいように顔を見せてくれた。
シモンは生きていた時と同じように金色に輝く髪に宝石のような若葉の瞳。
その上彫像のように整った顔。これが悪魔の誘惑だったとしても、あたしはもう一度シモンに会えたことを喜ぶわ。
「シモン……あなたがいなくなってから、あたしずっとあなたのこと探していたの。でも、あたし妖精だったことを思い出したせいで、あなたのことをしばらく忘れていたのごめんなさい」
「謝らないで。エキナセアが僕のことを忘れたとしても、どんな姿だろうが、どんなことをしようが、エキナセアが僕に何度でも恋してくれるように頑張ればいいだけなんだから」
「シモン……」
「だからそんなことで気にする必要はないよ。それに、この世界の神様は思ったよりも親切みたいでエキナセアと同じ妖精にしてくれたんだ」
「そうよ、それ! あなたどうして妖精になっているの!?」
シモンは人間だった。
あたしみたいに悪魔に人間にされた妖精って訳じゃなかったはず。あの冷たい体は今も覚えているのだから。だけど、どうしてあたしと同じ妖精になっているのか理解出来なくてシモンの体をペタペタと触る。
この感触は夢じゃないとあたしに教えてくれるけど、シモンにあたしと同じ翅があることが理解出来なくてじっとシモンを見つめる。
「実は死んだ後空の上から君のことを見ていた。その時に君が妖精だってことも知った」
「あ……ごめんなさいシモン。騙すつもりじゃなかったの。ただ……」
あたしは元々妖精だったこと、悪魔に捕まって人間にされていたこと、それからシモンを探している時に聞いた王女を捕まえて殺してしまったことなんかもまとめて説明した。
あたしが話している間、シモンは黙ってあたしの話に耳を傾けてくれた。
シモンを騙すつもりじゃなかったのは本当だ。
人間になっている間あの違和感さえなければ、多分あたしは自分のことを今でも人間だと思っていただろう。
「……大丈夫。怒ってなんかないよ。エキナセアが妖精でも人でもどっちでもいい。僕にとってエキナセアが存在していることだけが重要なんだ」
「でも、あたし人だった頃とは全く違うし、人まで殺めてしまったわ」
こんな自分シモンの隣にはふさわしくないわ。
シモンが生きて、あたしと同じ妖精になっていてくれて嬉しいけれど、でも、それでもあたしは人を殺してしまった。
妖精のままだったらそんなこと気にしなかったでしょうけど、人だった時の記憶がそれを悪いことだと告げてくる。
そんな悪いことをしたあたしなんてシモンは嫌いになるんじゃないかって思っておずおずとシモンの顔を見上げて、今までしたことを白状する。
「僕が死んだせいでエキナセアが辛い思いをしたのは知っている。僕の死体を見つけた君が深い絶望を味わっているのも見た。あの時君のことを一人にさせてしまったことを後悔していたら、そんな僕を神様が憐れんでくれてね。君の僕への深い愛と合わせて生き返らせてくれたんだ。元の体には戻れなかったけれど、これからはずっと君のそばにいる。もし、君が人を殺したことを気にしているんだったら、これからは僕がその責任を負うよ。僕が君を守るためにやったことだと思えばいいよ」
「そんなこと……」
ずっと一緒にいてくれるのは嬉しい。だけど、シモンにそんな辛いことさせたくない。
あたしがしたことでシモンに苦しんで欲しくない。
「シモン……」
「大丈夫。何があってもエキナセアを嫌いになることなんてないから」
シモンがあたしを見る視線はどこまでも優しい。その優しさに持っていた短剣は力なく落としてしまったけど、今のあたしにはどうでもいい。
シモンがずっと一緒にいてくれるし、あたしのことを嫌いにならないって言ってくれた。こんなに嬉しいことなんてない。
「シモンあたし寂しかった」
「ごめんね。もう二度と君に寂しい思いはさせないから」
「嬉しい」
これからもずっとシモンと一緒にいられる。
言いたいことも聞きたいことも二人で話し合っている内に朝日が昇ってきた。
今日の朝日はいつか見た夕陽よりも綺麗で、今日のことも忘れられない一日になりそう。
ふといつか見た仲睦まじく飛んでいる鳥を思い出す。あたしたち二人も今はあの鳥みたく仲睦まじく見えるのかもしれない。
二人して空に飛び上がる。これから先大変なこともあるかもしれないけど、そんなことシモンがいてくれるのなら関係ないわ。




