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第9話 事故物件編①

 スミヤス荘の103号室。怪しい薬を作る日々を送る見習い魔女っ子アイリス。今日もアイリスは、いろんな意味で危ない薬の開発に勤しんでいた。


「今日こそは超凄い薬を作ってやるんだから……っ!」


 鍋の中は相変わらず、いろんな材料がぶち込まれて、とんでもない色の液体が煮えたぎっている。


「やっぱり物足りないわね……。こんなんじゃいつもみたいにまた失敗しちゃうわ……」


 アイリスはいつも新薬の開発を失敗していて、そろそろ成功させなければマズいと焦っていた。


「もっと弾けるこの粉とか、この魔力を増幅させる液体とか、今日は思い切って刺激的な物を勇気出して入れてみよう……!」


「おぉ……す、すんごい……。何かとんでもないことが起こりそうな予感がするわ!」


 今までにない激しい反応を見せる鍋の中。彼女の勇気が投入された鍋は、それに応えるかのようだった。


「で、出来る……! ついに新薬が……!」


   ◇


 その頃。スミヤス荘の外。


「ようやくナイナさんに今月の家賃払ってもらったのは良いけど……。もう来月の分の家賃を回収しないといけないんですよねぇ……」


 大家のオーヤが、家賃の回収にスミヤス荘を訪れていたのだった。


「あんな死にそうな顔して家賃払ってた人に、来月の分のお金なんてある訳ないですよねぇ……」


 オーヤが家賃を催促するための気持ちを整え、ナイナの部屋の呼び鈴を鳴らそうと、指を伸ばした時であった。


『ドゴォォォォッ!!』


「な、なにっ!?」


 突然、爆発音が辺りに響いた。アパートが大きく振動し、築30年のあちこちがギシギシと不安になる音を立てている。


「うわっ! ビックリした……!! あ、あれ……大家さん……? こ、こんにちは……」


 勇者ナイナが今の音と振動に驚いて、部屋の中から飛び出してきた。


「す、すみません……。私、今お金無くて家賃はまだ……」


「いやナイナさん……。それどころじゃないですよ。今の音なんなんですか……?」


「さ、さぁ……。私ずっと部屋に籠もっていただけなので何も……」


 オーヤとナイナが辺りを見回すと、103号室から黒い煙がもくもくと出ていたのが見えた。


「あ、あそこってアイリスさんの部屋でしたよね……?」


「な、何があったんでしょうか……!?」


 オーヤとナイナは急いでアイリスの部屋へ駆け付けた。オーヤが呼び鈴を何度か鳴らす。


「で、出て来ませんね……。こ、これはマズいかもしれません……!」


「ね、念の為、合鍵を一通り持ってきていたのでこれで……!」


 オーヤは合鍵でアイリスの部屋の鍵を開ける。そして、ドアを開けた……!


「こ、これは……!?」


 部屋の中は台所が黒焦げになり、部屋の中の物が散乱していた。……そして何故か、アイリスの姿はそこにはなかった。


   ◇


「…………」


「……うぅん……?」


「ま、まさかこんなことになるなんて……うぅ……っ!」


「お、オーヤさん……! き、気をしっかり持ってください……!」


「……ナイナさんと大家さん?」


 アイリスが気が付くと、ナイナとオーヤが自分の部屋の玄関で何やら騒いでいた。玄関の外には他の住人の姿もあるようだった。


「な、何かあったのかしら……?」


 オーヤは崩れ落ち、何やらショックを受けているようであった。それをナイナが必死に慰めているように見えた。


「あ、あの……一体な、何が……」


「とにかく、一旦落ち着きましょう……。ほら、オーヤさん……。立てますか?」


「は、はい……。ありがとうございます……」


 そんなやり取りをしながら、2人はアイリスが事情を聞く前に、部屋から出て行ってしまった。


「な、なんだったのかしら……? 人の部屋の前であんなに騒いで……」


「うわっ……!?」


 アイリスはようやく、自分の部屋の中がめちゃくちゃになっていることに気が付いた。


「なるほどね……。あたしが薬を作るのに失敗して、爆発で部屋がめちゃくちゃになって、それで大家さんがあんなにショックを受けていたのね……」


 アイリスはようやく納得すると、部屋の中を片付け始めたのだった。

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