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第34話 王国奪還編⑤

 サキュバスの幹部サキュリー。彼女が召喚した触手は、シルクの服の中で行き場所を探して彷徨っていた。


「あああああ……や、やめて……そ、それ以上は………!!」


「ここまでね。シルク。私は淫乱な女の子が好きなんだけど、でも、穢れのない清楚なシルクが二度と見られなくなるのも残念だわ」


「……でもね、取り返しのつかない行為ほど、興奮する物なのよッ!!」


 サキュリーは欲望をさらけ出したような恐ろしい表情で、シルクに取り返しのつかない行為をしようとしていた……!


(こ、このままじゃ、私……! 大変なことに……!!)


 身動きの取れないシルクは万事休すだった。そこで仕方なく、奥の手を使うことにした。


「な、なにッ……!?」


 シルクに巻き付いていた触手が、バラバラになり吹き飛んでいた。シルクがウスメから預かっていた煙玉が暴発し、辺り一面に煙幕が充満していた。


 シルクの姿が見えず、焦り始めるサキュリー。ゆっくりと煙が晴れ、辺りの視界は良好になる。


 シルクは、今まで極限まで小さく折りたたまれていたサキュバスの羽を大きく広げ、羽で触手を僧侶の服ごと切り裂いていた。僧侶の服の下は、サキュバス喫茶『ベノム』の、いやらしい小さな黒ビキニの制服に包まれている。


「シ、シルク……そ、その姿は……!?」


 シルクはなんとか危機から逃れ、サキュバスの姿でサキュリーを睨んでいる。サキュリーはそんなシルクの姿に狼狽えている。


「あ、あなた、と、とっても……」


「とってもいやらしいわぁ〜!!」


 サキュリーは、シルクのサキュバスのコスチューム姿に大喜びしていた……。その反応に、シルクは涙を浮かべながら震えている。


「だ、だからこの姿になるの嫌だったのに……!!」


「シルクっ!! も、もう我慢の限界だわっ!! あなたは今日!! ここで堕としてお持ち帰りする!!」


 興奮の頂点に達した様子のサキュリーは、翼を広げ、猛スピードでシルクの元へ飛行しながら突っ込んできた!


「わ、私もサキュバスなら……!! お、同じことが出来るはず……!!」


 シルクは慣れない手付きで、サキュリーの真似をして指パッチンを必死に鳴らした。


 すると地面から、バオバブの木のような極太の触手が一本現れた……! その触手がサキュリー目掛けて全身をフルスイングしている……!


「がはっ……!?」


 突如現れた巨大な触手に激突され、サキュリーは大きく吹き飛び、壁に叩き付けられた……!


「よ、よし! で、出来た……!!」


 凶悪な力を持つ淫紋から、サキュリーの力を吸収しているシルク。その力は、幹部のサキュリーに匹敵していた。


「良いわぁ!! シルクぅ!! もっとよ!! もっと来なさぁい!!」


 再びサキュリーが指パッチンを鳴らす。無数の触手が地面から現れ、一斉にシルクに襲い掛かる。それを迎え撃とうと、シルクも指パッチンを鳴らし、同じ数の触手を召喚する。


 シルクの触手とサキュリーの触手がぶつかり合い、戦場は凄まじい光景になっていた……。


「“投げキッス”♡」


 触手の隙間を縫い、サキュリーが“投げキッス”を放つ。シルクは咄嗟に反応し、迎え撃つ。


「ウ、“ウィンク”!!」


 “投げキッス”のハートを“ウィンク”のハートで破壊する。貫通したハートがサキュリーに直撃した……!


「あああああッ!! 良いわぁッ!! でもね、シルク!! 私はこの程度じゃ堕とせないわよぉッ!!」


「“ヒップアタック”♡」


「ぐぅっ……!!」


 サキュリーのいやらしい“ヒップアタック”が炸裂する。それをシルクはなんとか両腕でガードしている。激しい激突で、シルクの足元は土煙を撒き散らしながら後ろに後退させられている。


「お、“お仕置き”!!」


 シルクはサキュリーの尻を思いっきり引っ叩いた。いやらしい弾力のある炸裂音が辺りに響き渡る……!


「うあああああんっ!! す、凄いっ!! シルク!! もっと!! もっと来てぇ!!」


 欲望が暴走している様子のサキュリーの勢いは収まらない。一度上空へ飛び立つと、勢いをつけ、尻を向けたまま再びシルク目掛けて飛び掛かる。


「“ヒップアタック”♡」


「ぐううううっ!!」


 先程よりも威力の増している“ヒップアタック”を喰らい、ガードしているシルクはふらついている。その隙をサキュリーは狙っていた……!


「“淫紋”♡」


「あっ……!!」


 すでにシルクに刻まれている“淫紋”の上から、さらに“淫紋”が重ね掛けされてしまった……! シルクの目が見開かれ、体が熱くなる。今まで抑え込んでいた物がどんどん溢れてきてしまう……!


「あああああ!! あひぃっ!! おぉんっ!! ああああああんッ!!」


 下腹部を押さえながらヨダレを垂らし悶えるシルク。サキュリーはついにシルクを陥落させたと確信しているようだった。


「もう我慢しなくて良いのよシルク? 出したい物、全部出しちゃいなさい♡」


(あ、頭が、お腹の中が熱い……。もう、我慢したくない……)


(気持ち良くなりたい……。気持ち良いことしたい……!!)



(見ての通り暗い顔の練習ですっ!)



(プ……プリズムさん……!?)


 シルクの脳裏に突然蘇ったプリズムの言葉。助けたいのに助けられなかったプリズムのことを思い出す。今ここでサキュリーに負けてしまったら、また同じことを繰り返してしまう。


「ま、負けない……!! 負けられない……!! いやらしい気持ちなんかに、私は負けないんだ……!!」


 手を“淫紋”にかざす。サキュバスの力と僧侶の力を総動員して、“淫紋”をコントロールする……!


「し、しぶとい子ね……ッ!!」


 シルクの右掌に下腹部の“淫紋”が移された。シルクの下腹部は、元の綺麗なまっさらな肌に戻っていた。


「だったらもう一発喰らいなさいよっ!!」


 シルクに再び“淫紋”を打ち込もうと突進するサキュリー。シルクも移植した右手の“淫紋”をサキュリーの下腹部目掛けて打ち込む……!


「うわあああんッ!!」


「はっああああんッ♡」


 お互いの下腹部に“淫紋”を打ち込み合った……! 両者が淫らで激しい喘ぎ声を上げている。一見相打ちに見えたが、サキュリーは“重なった淫紋”を喰らい、激しい性欲の波に襲われ、とんでもないことになっていた……。


「ひっぎいいいいいいいッ!?」


 そのままサキュリーは地面に倒れ、涙とヨダレまみれの凄まじいアヘ顔で体をよじらせながら悶えている。再起不能になっているのは明らかだった……。


「はあッ……はあッ……!!」


 ようやく取り除けた“淫紋”だったが、シルクは再び喰らってしまった。もう一度移植を試みるが上手くいかない……。


「な、なんで取り除けないの……!? さっきは上手く行ったのに……!! 」


「あんっ! 駄目! せっかく勝てたのに、い、意識が……!! あぁんっ!!」


 シルクが“淫紋”に負けそうになっていた時だった。


「痛ぁあああああっ!?」


 突然、足の裏に激痛を感じた。痛みの正体はまきびしだった。サキュバスの羽で服を引き裂いた時に、ウスメから貰ったまきびしが辺りに散乱していたのだ。


 激しい痛みで目が覚め、“淫紋”の効力は落ち着いていた。なんとか再び無効化することに成功したようだった。


「はぁ……はぁ……。よ、良かった……。な、なんとか落ち着いた……」


「お、恐ろしい相手だった……」


 身も心もグチャグチャにされたシルクは、その場にへたり込み、しばらく動けなかった。

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