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第33話 王国奪還編④

「みなさんは大丈夫でしょうか……!?」


 シルクとウスメの分身は、サキュバスの幹部サキュリーを探している最中だった。シルクは、別行動しているナイナとカルマのことが心配でしょうがなかった。


「拙者の分身の情報は共有されています……! 戦いは始まっているようですが、大丈夫。おふたりを信じましょう!」


「そ、そうですね……!」


「ふふふ……元気そうじゃないシルク」


「……ッ!?」


 どこからか妖艶な声が聞こえてきた。シルクとウスメの分身は、必死に声の場所を探っている。建物の影に誰かの姿が見えたのをウスメは見逃さなかった……!


「そこかっ!!」


 ウスメは小刀を構えながら影の元へ飛び込んだ!


「“淫紋”♡」


「はっ……!?」


 人影がウスメの攻撃をかわしつつ、下腹部に掌底を打ち込んだ。ウスメの分身は、下腹部を両手で押さえながら、足をガクガクと震わせている。


「んんんんんんっ!! あああああああんっ♡」


 次の瞬間。ウスメの分身は凄まじい喘ぎ声を上げながら、分身の形を保つ限界に達し、煙になって姿を消してしまった……。


「あぁ……いやらしい……♡」


「本当に、卑猥な魔族ですね……」


「今はあなたも同じでしょう……?」


 シルクは、自身の下腹部の怪しげな紋章がある位置を手で押さえながら、人影を睨み付けている。


「あ、あなたのせいで……私は、こ、こんな姿に……!!」


「“淫紋”を下腹部に刻まれているのに、正気を保っているなんて……ほんと凄いわよね……あなた……」


 人影の正体はサキュバスの幹部サキュリーであった。僧侶シルクをサキュバス化させた犯人、それがこのサキュリーだったのだ。


「あなたに“淫紋”を打ち込んだ時、あなたもさっきの忍者さんのように激しく乱れていたわよね……。普段のあなたとのギャップが凄くて、今、思い出しても興奮しちゃうわ……♡」


「あのまま堕ちると思っていたのに、あなたは“淫紋”から私のサキュバスの力を吸収して、そのまま自身をサキュバス化させて、“淫紋”の効果を相殺させてしまったのよね……」


「い、言わないでくださいぃ〜!!」


 シルクは“淫紋”を打ち込まれた時の、いやらしくのたうち回っていた自分の姿を思い出しながら震えている。


「あんなこと初めてだったから驚いたわ……。きっと僧侶の力と神への信仰心からの抵抗が、未知の現象を引き起こしたのね」


「本来“淫紋”は、まともに日常生活が送れなくなるほど年中発情と絶頂を繰り返す、いやらしいドスケベ淫乱になる恐ろしい紋章だというのに」


「何故、私にこんな紋章を打ち込んだのですか……!? いきなり暗闇から襲われて、まるで通り魔でした……!!」


 サキュリーは突然シルクに“淫紋”を打ち込み、シルクをドスケベ淫乱化させようとしていた。だが、サキュバス化によりそれに失敗すると、そのまま姿を消していたのだ。


「あなたが好きだからよ」


「…………は、はい?」


 シルクはサキュリーの言葉がよく理解出来ず、思わず聞き返してしまった。


「私、女の子が好きなのよ。気に入った女の子を淫乱にさせて、その子と遊ぶのが私の趣味なの」


「オ、オオ……」


「オンナノコガスキナオンナノコ!?」


 正真正銘の、女の子が好きな女の子が目の前に現れ、シルクは気圧されていた……。


「ここであったのも何かの縁ね……。今度こそ、あなたのことをドスケベ淫乱にしてあげるわ……♡」


 サキュリーは口に手を当て何か攻撃を仕掛けようとしている。シルクは警戒を高める。


「“投げキッス”♡」


 ハートが弾丸のようにシルクに向かって放たれた。警戒していたシルクだが、速度が速く、避けることが出来なかった……!


「うぅ……っ!!」


 ハートを喰らってしまったシルクがもがき苦しんでいる。瞳の中にハートが浮かんできてしまった。


「私の“投げキッス”は魅了効果があるの。そのまま私の虜になりなさい♡」


「はぁ……はぁ……サ、サキュリー様……」


 シルクは意識が朦朧として、サキュリーの元へ歩みを進めてしまう。サキュリーは、シルクが堕ちるのを怪しげな笑みを浮かべながら待っているようだ。


「ぐっ……!!」


 その時、シルクが残っていた理性を振り絞り、手に持っていた杖を自分の足に突き刺した……! 痛みで一時的に目が覚める……!


「ウ、“ウェイク”!!」


「……ッ!!」


 そして、魅了解除の魔法を唱えると、シルクの意識は正常に戻った。


「はぁ……はぁ……あ、危なかった……!!」


「……やっぱりあなた只者じゃないわね。そういうところも好きよ……?」


「それじゃ、次はこれはどう?」


 サキュリーが指パッチンを鳴らす。シルクの足元の地面から、怪しげな色をした太い触手が数本現れた……!


「うぐっ……!?」


 触手は絡みつくように、シルクの女性らしいシルエットの体にいやらしく巻き付くと、そのまま動きを封じた。


「う、動けない……っ!! はぁ……はぁ……!!」


 ゆっくりねっとりとシルクの全身を締め上げる触手。シルクは呼吸をなんとか確保しようと必死にもがいている……!


「い、いやらしい……! シ、シルク、あなたやっぱり

 最高だわ……! ふふふ……」


「でも、これで終わりよ♡」


 サキュリーが再び指パッチンを鳴らす。さらに新しく触手が増えた。その触手は今度は身体に巻き付かず、くねくねと何やら怪しい動きを見せている……。


「ま、まさか……!?」


 シルクの脳裏に嫌な想像が過ぎる。女性としての本能が、自身の身に危険が迫っていることを必死に伝えている。


「さようなら。“清楚な”シルクさん♡」


 触手が次々とシルクの服の中に潜り込む……! 身動きが取れないシルクは絶体絶命だった……!


「い、いやああああああっ!!」


 抵抗虚しく、触手に襲われたシルクの絶叫が木霊していた……。

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