表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/40

第30話 王国奪還編①

 魔王から休息を与えられたカルマ。彼女はしばらくの間、一人部屋の中でゆっくり過ごし、だいぶ心身ともに回復していた。


「ナイナさんは大丈夫かな……」


 ナイナを自分たちのせいであんな目に遭わせてしまい、カルマは、彼女と顔を合わせるのが気まずかった。しばらく顔を合わせていなかったが、ずっと気になってしょうがなかったのだ。


 カルマは、そろそろスライム狩りから帰ってくる頃だと思い、アパートの外でナイナの帰りを待っていた。


「あ、ナイナさん、帰ってき……」


 カルマの目に映ったナイナは、虚ろな目で、足を鉛のように引きずりながら歩いている姿だった。ナイナは普段から落ち込んでいるが、あそこまで沈んだ姿を見るのは初めてだった。


 とても話し掛けられる雰囲気ではない。カルマはナイナの姿を見ながら立ち尽くしていた。


「…………カルマさん」


 カルマが悩んでいるうちに、ナイナの方から話し掛けてきた。


「どうしよう……プリズムさんがさらわれちゃった……」


「えっ……」


「魔族の幹部に……私はどうすることも出来なかった……」


「ワ、ワタシの部屋でよければ……詳しい話を聞きます……」


「ありがとうございます……」


 カルマは、魂が抜けたようなナイナを部屋に招き入れた。


「…………なるほど。そ、そんなことが……」


 ナイナは簡単に要点を抑えて、機械のように淡々とカルマに説明した。


 ナイナはずっと俯いている。カルマには、この状況をどうするべきか分からなかった。だから、あえて“ナイナに聞いた”。


「ナイナさんはどうしたいですか……?」


「……え?」


「出来るか出来ないかは良いです……。どうしたいか。それを正直に教えてください……」


「わ、私は……」


 どうしたいかはハッキリ分かっている。だが、どうすれば良いのか分からない。ナイナは、カルマに促されるまま、ゆっくりと口を開いた。


「プリズムさんを助けたい……」


 それを聞いたカルマは、ナイナに提案した。


「じゃあ、助けましょう……!」


「え……?」


「む、無理だよ……!? プリズムさんは魔族の集団って言ってたし! 幹部はいたし! ぜ、絶対に無理だよ……!!」


「どう無理なんですか?」


「ど、どうって……!?」


「以前のナイナさんなら、助けようって言ったと思います」


「…………っ!」


「アイリスさんの幽霊が現れた。私は、それだってどうすることも出来ないと思っていました……」


「でも、ナイナさんは、みんなのためにいろいろ考えて、なんとかしてくれました……」


「ナイナさん……前みたいに、一回みんなで考えてみましょう……! みんなでたくさん考えて悩んで、それでも無理だったら、それはもうしょうがないです……!」


「カ、カルマさん……」



『バァンッ!!』



「な、なにっ!?」


 突然。部屋の中で何かの破裂音がした。


 ナイナもカルマも、何が起きたのかと部屋を見回している。


「ナイナ殿! カルマ殿! 拙者はここにいます~!!」


「えっ!? 誰っ!?」


 いつの間にか、カルマの部屋の中に忍者がいた。今まで気が付かなかったが、部屋の中には大量の割れた風船が散らばっていた。


「おおおおおおっ!? つ、ついに、お二人とも拙者の存在に気付いてくださったんですね!?」


 初めて見た忍者が、訳の分からないことを叫びながら興奮している。カルマとナイナは恐怖におののいていた……。


「あ、初めまして! いや、本当は初めましてではないのですが……!!」


「拙者、203号室にずっと住んでおりました! 忍者のウスメと申しますっ!!」


「に、忍者……!? 203号室……!? えっ!? どういうこと……!?」


 ナイナはパニックを起こしているようだ。ウスメは、自分の話をするのはややこしいと感じたのか、一旦それは保留にした。


「拙者のことは良いのです!! それよりも、話は聞いてました!! プリズム殿を助けるんですよね!?」


「な、なんでプリズムさんのことを!?」


「拙者は忍者です!! 事情は全て把握しています!!」


「何故なら!! 忍者だから!!」


「そ、そうか。忍者か……」


「忍者だったらしょうがないですね……」


 カルマとナイナは忍者だからという理由で納得した。ウスメは話を続ける。


「拙者に考えがあります……!! まずは、シルク殿もこの部屋に呼びましょう!!」


 カルマとナイナに作戦などなかった。とりあえずカルマとナイナは、謎の忍者の言う通りにしてみようと決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ